いろはさんと悟くんの特別なわんだふる
3週にも渡って描かれたド直球の恋愛エピソードだった。正直、犬であるこむぎさんがピンクプリキュアやってるシリーズでこんなお話が描かれるなんてとても意外だった。
でも、動物がテーマであるなら人間同士の親愛を掘り下げていって、それが家族、友情ときて恋愛になるのは当然だったのかもしれない。
悟くんがいろはさんのことが好きっていうのは始まった時から明らかだったし、その好意は本人以外にはダダ漏れだったわけだけど、肝心のいろはさんはあくまでも大切なお友達という位置づけだった。それはいろはさんの愛情の持ち方が種別や性別を問わない広く純粋なものだったということでもあっただろうけど、単純に彼女自身の幼さにも要因があったことが今回のことで分かった。
恋愛というものがあることは知っていても、自分にはあまり関係ないから考えてこなかった彼女にとって、悟くんからの告白はまさに青天の霹靂だったのだろう。
しかし彼女は、持ち前の純粋さや素直さで、自分の中に生じた嵐に真摯に向き合った。その結果が《特別なわんだふる》だ。
ちょっと煮え切らない感じはしなくもないし、悟くんは水族館デートで告白以外での「好き」を伝えているわけで、その気持ちにきちんと言葉で答えてほしいとも思う。
緊張している、名前でよんでほしい、手をつなぐ、などと、これでもかと行動でその想いを示してはいるわけだが、そのうち悟くんが「あれ、まだ好きって言われたことないな」って気づいて悩む日が来そうな気がする。
これもまた頑なに続けられていた「犬飼さん」呼びと同じような、その瞬間のカタルシスを爆増させるような伏線であるかもしれない。わんぷりはまったく油断がならないことを学んだ。
このまま二人は末永く幸せに暮らしましたとさ、とは現実の中学生カップルでは、なかなかうまくいかないところではあるだろうけど、あの世界ではきっと大丈夫なはず。
幸せであれと心から願う。
それにしても、開始以来ずっと動物好きの元気な女の子だったいろはさんが、告白をきっかけに一気に女子になったのはかわいかったなあ。
告白シーンの赤面はもちろん、混乱して走っちゃうところとか、まゆさんに相談したりデートの服装やリップに悩んだり。それまで当たり前に楽しく話していた悟くんと、どんな風に話していいか迷ってしまうところとか。
友情から恋愛にシフトした親愛がもたらす変化に振り回されているところが実に初々しくて瑞々しくてかわいらしい。あそこを丁寧に描いてくれたのはよかった。個人的には焦って喋りすぎてしまう様子が、ラジオでテンパる種﨑敦美みたいで面白かった。
男子が告白するまでの葛藤を前半で描いて、その告白をきっかけにして視点が反転、後半では女子の困惑を描く、という構成で『たまこラブストーリー』を思い出したんだけど、あの作品でのたまこも同じような女の子だった。共通の話題のある気安い幼馴染が自分に恋愛感情を持っていることを知って、自身も恋愛の当事者であることを意識する、という。
親愛と恋愛の境界とか区別とかが曖昧な感じになってしまいそうで心配になる部分もなくはないけど、やっぱり彼女たちの純真さはまっすぐに胸を打つ。
相手の気持ちを大切にするために、自分の中に芽生えた、もしくは以前からあった感情ときちんと向き合う。その姿勢がとても素晴らしい。得られた結果、結論を変に疑わずごまかさず、きちんと伝える。ただ困惑するだけでは終わらないのが彼女たちの素直さで純真さで強さだ。
プリキュアでこれが観れるとは思わなかったから、単純にもう「いいもの観た」という気持ちでいっぱいです。
ありがとう、わんだふるぷりきゅあ。