
つぶやき 〜「建てる」ための建築と「使う」ための建築〜
ふと見かけた文章をつらつら反芻する、そんなシリーズ。
「建てる」建築と「使う」建築って?
建築デザインには主に「建てる」建築と「使う」建築の二種類に分かれている。
全部うろ覚えでしかないのだが、確か国語の評論で見かけた文章だった気がする。
簡単に要約すると、
「建てる」建築はおしゃれさ特化型。芸術性重視で作者の個性を爆発させて一つの芸術作品として建築することを指す。
「使う」建築は利便さ特化型。使いやすさ重視で個性よりも動線や人に寄り添ったバリアフリーなど、とにかく使う目的のためだけに建築することを指す。
「建てる」建築の例え話
たまに見かけたり聞いたりしませんかね。
例えば「おしゃれな図書館」問題。
超おしゃれな図書館にするために、壁に本をずらーっと並べてみたり屋根を芸術的な形にしてみたり。
これによって何が問題になったのか。
そう、「本が焼けてしまう」のだ。壁に家具として本を置いているかつ屋根が複雑な形をしているので、場所によって日当たりに大きな差ができてしまう。
こうなることによって、本が焼けてしまい色落ちしてしまう。壁においてあるダミーの本はもちろん、借用の本まで影響を受けてしまった。
こうなってしまっては図書館の目的の一つ、「本を保管する」ことを果たせなくなってしまうのだ。
「使う」建築の例え話
図書館の例で引き続き行こう。
ではおしゃれな図書館はだめだ、本を保管する目的を厳守しよう…
そういってデザインを排除し、建築したとしよう。
これだと、どんな問題が浮かぶだろうか。
そうです。
人が来ないんです。
簡素なデザインになってしまい、街に埋もれてしまう。
人の目に映るが、すぐに日常と化してしまう。
そこらへんにあるビルと存在感がなんら変わらなくなってしまうのだ。
人が来なかったら何が困るか。先ほど本を保管することが目的の「一つ」と書いた。こちらは国立政策研究所が出している『図書館の役割と機能』の一説である。
図書館は、通時的に見るならば、記録資料の保存、累積によって世代間を通しての文化の継承、発展に寄与する社会的記憶装置であり、共時的には、社会における知識や情報の伝播を円滑にするコミュニケーションの媒介機関としての役割を果たす。
簡単に言うならば主に三つである。
①保存
②継承
③知識や情報のコミュニケーションの場
人が来なかったら、保存はできるがその歴史の継承やコミュニケーションは生まれにくくなってしまう。本は保存できても人が来なければ元も子もないのだ。
「建てる」と「使う」の調和
私はこの評論を読んだ時からずっと、この解決策は「目的」を頭に留め続けることだと考えている。何のためにその建築をするのか、誰のためにその建築をするのか。ものづくりは常に「目的」を考えなければならないと私は考える。
「目的」が明確ならば、調和に近づける。
常にhalf and halfでなく、その「目的」に応じて比は変幻自在に変えていくべきだと思っている。それこそが調和である。
全体がほどよくつりあって、矛盾や衝突などがなく、まとまっていること。
これが調和の辞書的な意味である。調和は妥協であってはならない。
その建築をするにいたった「目的」を元に、目的が求める色をうまく人間は作らなくてはいけないのである。
「目的」の大切さ
ものづくりや建築をするにあたって、忘れてはならないのは
「建築をする人が一番ではなく、目的が一番だ」ということ。
目的は依頼者や使用者、閲覧者など様々である。
誰に何を伝えたいのかではなく、誰が何を見にきているのか。
誰に何を作りたいのかではなく、誰が何を必要としているのか。
これは私の自助具開発やプレゼンを何回もする中で、ずっと根底にある考え方である。
あれ?
あ、だからこの文章を読んだ時に夜道を歩いている気分になったのか。
あの電柱とひび割れた鉄筋コンクリートの壁に囲まれる中、星だけが動いている。星を見ながら歩いたら、ずっと吸い込まれていくような、そんな感じ。
ずっと反芻していた。今の今まで。
これだけは確実に言える。
「建てる」建築も「使う」建築も、人の客観的な意見がない限り、自分の状態を把握することは不可能だということ。
そしてなにより、人が過ごす限り、デザインを追求するには人の意見は必要不可欠であるということ。
私にはまだ、人の意見や困りごとについての生の声を十分に聞けていない。
ひとりよがりのデザインになっていないだろうか。
自分ばっかりになっていないだろうか。
この「建てる建築と使う建築」についての文章を読んでから、
私はバックの中の単語帳が一つ増えた感覚になっている。
はらに質問してみよう
悩み事や話題、議論するとおもしろい課題やニュースがあれば、こちらからどうぞ。
いいなと思ったら応援しよう!
