ビジネスと小説

 ビジネスの第一線で活躍されている方とお話していると、ビジネスや自己啓発に関する本を多く読むけれども、小説は読まないという方に出会うことがある。読書の内容は人それぞれなので、小説を読まない人に小説を読むことをお勧めするのは単なるお節介だと思う。それでも私は敢えてビジネスの第一線で活躍しているのであれば積極的に小説を読むべきだと思っている。
 ビジネス書の良いところは、自分以外の人のビジネスの考え方や経験を知ることができることであり、共感できるビジネス書からは学ぶことが多くある。しかし多くのマーケティングやマネージメントの本あるいは生き方や働き方に関する本で多くの著者が共通して言っていることは、顧客や部下や家族など自分と関わる人の気持ちを理解することの大切さである。
 人の気持ちを理解するためには、その人の置かれている状況や環境を想像し、自分がその立場になった場合のことを想定してみることが必要である。その時に役立つのは自分が生きている中で実際に発生する経験である。残念ながら一人の人間が実際に経験できることには限界がある。では、自分が経験をしたことのない状況に置かれた人の気持ちを想像するには、一体どうしたら良いのだろう。その時に役立つのが疑似体験ではないだろうか。疑似体験を通して自分が体験することや経験することの幅を拡げることができ、自分の経験のしていないことでも、その経験をした人の気持ちが少しでも想像できるようになる。その疑似体験をするために、とても簡単に手に入れることのできるもののひとつが小説ではないだろうか。
 という訳で、ビジネスの第一線で活躍する方、多くの方と会う機会のある方、そういう人であれば、多くの小説に触れてほしいと思っている。もちろん、小説以外にも疑似体験をするための方法はたくさんあるので、自分に合った方法で疑似体験をして、是非感受性を高めて欲しい。

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