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【つくること】 第3回超映画総合研究所”志田ゼミ” DAY2(2024.2.2)レポート

超映研第三期DAY2  2024.2.2(FRI)
お馴染み前回プレゼンされた映画の感想交換会。これまでの一期、二期のプレゼンター諸氏や、ギャラリーとして繰り返し参加してくださっている方々、そして今回からの新規参加の方々と、回を重ねる毎にコミュニティが広がっており、会場もオープンから賑やかな雰囲気で嬉しい限り。

今回のプレゼンは5作品。実に多岐に渡るジャンルで、それぞれの感想で最初から最後まで、熱いトークが繰り広げられました。


『パラサイト 半地下の家族』(監督 ポン・ジュノ)
ほぼ9.5割の方々が鑑賞。かつて観たけれど改めて観て発見することも多々あったという方、プレゼンターが託した2つのポイントを探るべく注視してみたという方、さらにはカット割りの構成と巧妙さがこの作品をエンターテイメントとして昇華させているといった、技術的な面への評価や、物語の行方が一体どうなっていくのかまったく予測できないまま進んでいくサスペンス感が凄かった、など、さすがアカデミー賞受賞作、次々と絶賛されつつ深堀りされつつの連続で、場内は早くもヒートアップ。
ラストはプレゼンターから2つのポイント解説(ネタ明かし)もあり、納得と充実で拍手喝采となりました。志田からはポン・ジュノ監督の政治的アプローチと思想的スタンスの話や、要チェックの過去作紹介などが付け加えられました。


『ノスタルジア』(監督 アンドレイ・タルコフスキー)
ギャラリー参加の方々、特に女性陣が鑑賞していて興味深い感想が続出。「回廊を歩きながら絵画を観ている美術館のよう」「物語はよくわからないが、ずっと観ていると自分も何かクリエイティヴなことをやりたくなってくるという不思議な感覚に(それがたとえ料理でもなんでも)」「鑑賞後、眠くなるどころかデトックスされた気分に」。
また、先月末から4Kリマスターによるリバイバル公開があったので、タイミングがあったので初日初回の劇場へ足を運ばれたという熱心なギャラリー男性も。
そして、難解な作品だけにどう読み解くかに注目した方は、亡命することに対して悩んでいた監督自身の物語であり、特に火の用い方、詩集の存在意義などを細かく指摘。プレゼンターからも、これだけ自分を貫いた作品は逆に気持ちがいい、と改めて〆ていただきました。
志田さんからは、タルコフスキーのソ連からイタリアへの亡命、そのビフォーアフターによる作品内容の違いについて解説がありました。


『直撃地獄拳 大逆転』(監督 石井輝夫 主演 千葉真一)
今回、一番物議と衝撃と笑いを独占した作品。
そんなにおかしい作品なら観てみたいと、鑑賞率も予想を反して多数という快挙。感想を発表する方々もいやに楽しそうで、「とにかく意味がわからないシーンの連続」「雰囲気やノリ、風景に至るまで昭和を感じる作品」「作戦シミュレーションのために千葉ちゃんたちが作った街の模型が凝りすぎ」「CGがない時代に、あるもので作りこんで意気込みすぎ」「志穂美のえっちゃん出なさすぎ」「とにかく汗臭すぎ、男臭すぎ」と、感心しながらも実は文句タラタラな感想が次々と噴出。
挙句は「勢いでDVDまで買ってしまった。なぜこれをプレゼンしようと思ったのか改めてお聞かせ願いたい」とやり場の無い苦情まで飛び出し場内大爆笑。ちなみに打ち上げ時になってプレゼンターから「皆さんがどういう反応をされるのか、ただそれを見てみたかった…」と、まるで怪しげな性癖を告白するかのような返答。
このプレゼンター、前回もジョン・カサヴェテスの問題作をプレゼンしてきたピエール氏(仮名)。運営側としては、とは言え一石を投じる役割ではないかと、今後の超映研プレゼンコーナーに“ピエール枠”設置の検討に入ったとのこと。いやはや、冗談はさておき大変盛り上げていただき最高でした(笑)


『LIFE!/ライフ』(主演 ベン・スティラー)
今回の唯一ハリウッド・エンターテイメント作品。世界中を旅する物語であり、ベン・スティラー主演ということもあって間口も広く、鑑賞率はほぼほぼ100%でありました。
写真を趣味としている者にとってこの映画はとても面白く、さまざまな国を巡って撮りたいと思うような風景の連続だしとても面白かった、といった絶賛の感想や、その風景の美しさ、妄想シーンの迫力の映像、メッセージ性を感じ取れるさまざまなシーンなど、それぞれが感じ取った“ライフ”感がそのままダイレクトに感想となって、さらに会場はその感動の共有の場にもなっていきました。
また、本作は1947年の『虹を掴む男』のリメイクであるという貴重な情報が、超映研初参加の方からご報告。その作品も『LIFE!/ライフ』同様とても好きな作品ということで、それも観てみたいと思われた方も多かったはず。
志田さんからは、観終わったあと妙に人生考え始めちゃう作品たちとして、古くは『素晴らしき哉、人生!』から、近作は『枯れ葉』までをレコメンドされていました。


『TOKYO!』(監督 ミシェル・ゴンドリー、ポン・ジュノ、レオス・カラックス)
個性派の海外監督による東京を舞台とした異色オムニバス映画。プレゼンによって興味を持ち、観てみたいと思った作品No.1的な雰囲気でしたが、フタをあければ、なんだこれ…と言った感想炸裂でした(笑)。
「海外の監督たちは東京をこんなダークな感じで見ているのかとちょっとガッカリ…」とか、「地下に住む怪物が人に迷惑ばかりかけていてイヤ」とか、「なんだかわからなくて途中まで観てストップ」などと、押しなべて不評…。
しかし反面、「とにかく好き勝手に撮りまくった監督たちが素晴らしい」や、「地下の怪物こそ実態というよりは概念としての象徴(ゴジラの音楽を使っていることもそんなイメージ)」と、評価も分かれれば分析も哲学的と、実は一番の問題作はこの映画だったのでは?とレギュラー・プレゼンターの志田さんも再確認。
志田さんが混乱気味の会場を軌道修正すべく、ところで都市を舞台にしたオムニバス映画って、他にもあるんですよ?と話題すり替え。ニューヨーク、パリ、そして香港をテーマにしたオムニバスもご紹介しつつ、なんだかんだ言って映画好きなら東京映画の原点である小津の『東京物語』も是非観てくださいねと念押しされていました。


というわけで約1時間半に渡る興奮の感想共有も過ぎてみれば一瞬でした。今回の探求ポイントは以下の通り。


★個性派監督作品を網羅する楽しさ!
★昭和の底抜け映画も、今やカルト映画として楽しめる!
★映画で人生考えるのも悪くない。
★映画で競演するのは役者だけではない⇒オムニバスは監督同士の白熱バトル!

ジャンルもバラバラ、アプローチもまったく違う映画たちをテーブルの上に一緒に並べたとき、いかに映画という存在そのものが多種多様であるかを実感いたします。
今回はこれまで以上にそれが顕著に現れたラインアップでしたし、もちろんそこに作意はなく、偶発的に出揃った5作品であって、だからこそ比較も含めて興味深く選抜できたのではないかとも思っています。

この志田ゼミの狙いはまさにそういうことで、志田さんはそうした映画の捉え方、つまり、どんな映画も基本的に“映画”という一つの存在として観れば、どれも共通した面白いという感情を受けるはずだと。だとしたら、カテゴリーの細分化と、ジャンル過多のこの時代に、一方向にだけ偏った映画の観方をしているともったいないですよと、もっといろいろな映画を観ることを実践していけば、考え方も豊かになるのではと。それはつまり「外からの意見に耳を傾けてみる」という姿勢、すなわちコミュニケーション論にも繋がることだと思うのです。
そんな思いからこの内容を発案したわけで、そういう意味で今回は最もそのセッション反応が如実に現れた良き機会であったと捉えています。

このシリーズはvol.0のテスト開催含めて計4回執り行ってきましたが、その間も多くの模索を繰り返してきて、ようやくここでスタンダード・スタイルと言える形に着地したと自負しています。
これを1stシーズンとするならば、2ndシーズンはさらにその輪を広げていくべく、イベント・アピールにより力を入れて、この楽しさ、面白さをできるだけ共有していけるような、新たな目標を掲げさらにトライしていきたいと思っている次第です。
次の開催時期は未定ですが、早ければ次の季節、春には再スタートできるのではないかと。その際はまた是非ご参加いただきたいですし、これまでの動きを観察し興味を持たれている方は、是非次回は思い切ってこの超映画総合研究所のドアを自ら開け、インしてきていただきたいと思っています。