見出し画像

【きくこと】 第13回 面白法人カヤック  丹治拓未


丹治拓未
面白法人カヤック所属。企画部/グループ戦略室/リーダー/M&A責任者/ぜんいん人事部

廣木:図書館について語るときに我々の語ること第13回。本日は面白法人カヤックの丹治拓未さんにいらっしゃっていただいています。

丹治:面白法人カヤックの丹治拓未と申します。よろしくお願いいたします。

廣木:私は図書館総合の廣木と申します。

染谷:株式会社ひらくの染谷です。よろしくお願いします。

廣木:今、実は3つの会社であるまちの図書館の整備計画に携わっていて、毎日泣いたり笑ったりしながらやり合っているところです。

丹治:僕らが元々、官民いろんな形で連携させてもらっている福岡県八女市っていう地域がありまして、そこで図書館の整備に係る計画を進めるっていう段になった時に、お声をかけさせていただいたっていうのがチーム編成したきっかけですよね。先ほどおっしゃっていた通り、毎日血と汗の連続でプロジェクトを進めているという感じです。

染谷:これを今収録している2日前にちょうど現地に行って。

廣木:昨日も会ってますからね。丹治さんとは昨日も会って、一昨日も会って、今日も会ってるので、そういう密度でやってるんですけれども。でもちょっとその話は一旦置いといて、今日は丹治拓未とは何者なのかを掘り下げていきましょうという会です。

丹治:カヤックは面白法人カヤックと名乗っていますが、正式名称は株式会社カヤックです。「会社の憲法」とも言われる定款も2年前に変更して、「通称面白法人カヤック」という言葉を第1条に入れたんです。(※注:定款 第1章 第1条 当会社は、株式会社カヤックと称し、英文では KAYAC  Inc.と表示し、面白法人カヤックを通称とする。)それも僕が進めたプロジェクトです。そんな面白法人と名乗っている会社になります。

世の中の話題になるような企画を取り組んでいることもあり、「面白法人なんだから、何か面白いことやってください」って結構言われることもあるのですが、僕らが面白法人として一番大事にしているのは「面白がる」という方向で、まずは自分たちがいろんなモノゴトを「面白がって」いこうという姿勢を重視しています。

世の中には本当つまんないこととか、しょうもないこともいっぱいあるけど、どんなことも面白がって、楽しく関与していく、そうやって関わって面白がることでジブンゴト化しながら、いろいろなアプローチを試していくことが一番大事で、一番難しいことだと思っています。そんな、まず自分たちが面白がって楽しんで主体的になっていくことを大事にしている会社です。

どんなことをやっている会社なのかというと、事業内容はすごく多岐にわたっています。
もともと広告、それからゲームが事業領域として大きいんですけど、現状はいろんなライフスタイル領域も広がっていて、葬儀会社だったり結婚式関連の事業があったり、ワーケーション的なことを進めたりとか、、あとは先ほど話した福岡県八女市では林業関連の会社をやっていたりとか、そういう多種多様な事業をやっているような会社なんです。僕らクリエイターが90%っていう形をKPIにしている会社なんですけど、クリエイターが取り留めもなく、いろんなことを面白がりながら事業を編成している関係もあって。
その事業編成の中に、地方創生領域があり、今回八女市と関わっている中でも図書館というところにアプローチをして進めているというような感じです。

廣木:面白法人って定款にも定めていて、ハードル上がらないですか?

丹治:先ほどお話した通り、まずは「面白がる」って言うことが大事なので。そこは結構自分たちの心の持ちようで。ただ、とてもむずかしいことではあるので、面白がって自分ごと化するために、結構いろんな仕組みとかツールを使っています。

その中の1つが、お2人にも体験してもらった福岡県八女市でやったワークショップで、ブレストっていうのをやったんですけど。たくさんアイデアを出す方法で、正式名称はブレインストーミング。あれも僕らの中の色々な試行錯誤の中でメソッド化していて。ブレストは質ではなく、とにかく数を出すことにこだわることで、全員でアイデアを出すようになり、どんどんどんどんそのお題に対して自分ごと化していく。だから、面白がって、いろんなことにチャレンジするっていうことの姿勢を作る手っ取り早くていい方法がブレストだと思ってます。面白がる人を増やすための重要なアプローチなんですよね。面白法人の根幹につながるものです。

もしお時間ある方だったらIR資料っていう、投資家向けに発信する資料も僕の方で作らせてもらっているんですけど、、この資料なんかでも面白法人は僕らの企業理念として説明しています。それは主体的に面白がる人を増やしていこうと。いろんなことを面白がっていくあり方そのものも社会提案していくっていう、僕らの企業としてパーパスや目的のようなものです。で、IR資料上でもそれを実現するアプローチとしてブレストがありますという説明をしています。

先ほどお話しした通り、色んな人と話してると「じゃあこれ面白くしてくれるんですか?」とか「面白いこと言ってくれませんか」とか言われるんですけど、「いや、ちょっと違うんですよ、僕らが重視するのは面白がる」ってことなんですよねと話させてもらっています。

廣木:でも最初にオンラインで会った時、面白法人カヤックってどう面白いんだろうなと思ったら、やっぱり面白かったです。「ど~も~面白法人カヤックの丹治です!」って始まって。「坊主ですいません!」って。面白いなと。それでぐっと信頼度が。(笑)

丹治:そんなこと言いましたっけ?(笑)ちなみに、僕は最初廣木さんが怖かったですね。(笑)朝9時からのミーティングでしたが、朝だからちょっと元気が出ないとは言ってましたけど。

廣木:でも常に元気ないっていうのは途中でバレましたよね。(笑)

染谷:面白がるとか面白いっていうのが、経営の方から始まって、みんなの合意になっていったっていうのが、設立される何年ぐらいとか、丹治さんがジョインされてからどういう感じなんですか?

丹治:歴史的な話をすると、もともと大学の友達三人で起業した会社なんですよね。すごく珍しいんですけど、創業者の三人がそのまま上場とか、色々経てる中でも残っているっていうのって。。
その時に最初に経営の本を読んだらしいんですよ。その中で法人格という言葉を見つけたらしくて。会社にも人格があるって捉え方ができるんだったら、自分は面白い奴って言われたいな、と代表の3人が思ったらしいんです。

世の中には監査法人とか○○法人っていうのはいくつかあるし、だったら面白法人っていうものがあってもいいんじゃないっていうところから小さくはじまったものです。本当に小さく町のホームページ制作屋さんみたいなところからはじめて、数年で鎌倉にオフィスをかまえて、「なんでそんなところにいるの?」という疑問も面白法人のあり方として答えたり、いろいろ試行錯誤しながらやってたことが、だんだんまとまってきて、2005年に合資会社から変更して株式会社になって、そこから会社としての成長とともに色々なことを「あり方」として固めてったんです。

理念などの言葉をいっぱい作ったりとか。例えば、先ほど企業理念は「面白法人」だと言ったのですが、経営理念は「つくる人を増やす」という言葉です。そういう言葉を企業としてのスタンスというか、考え方の整理とともに組み立てていく中で、面白法人の3段階というものが出てきたのだと思います。
それは、1段目は先ほど話した、まず面白がる、これが一番大事。次に、2段目として、せっかくならまわりから面白い人って言われる。その上で最後に、社会とか誰かの人生を面白くする存在であろうという面白法人の解釈を3段階的に整備したものです。
「面白がる」がちゃんと前面に出て来たのは、おそらくここ十数年ぐらいですかね。僕も詳しく完璧に把握しているわけではないんですけど。結構、言葉とかコンセプトとかキーフレーズが多い会社でなんです。「仲間を助ける力をもて、仲間に助けてもらう勇気をもて」とか大事にしている言葉は社員も覚えています。そういうのを作るのが好きな会社でもあります。言葉を大事にしている会社です。

染谷:そんな中で丹治さんがカヤックに入社されたのは何年?

丹治:僕は2019年ですね。

染谷:じゃあ割と最近といえば最近。

丹治:そうですね。4年目、5年目とかですね。

廣木:それまでは?

丹治:それまでは某国内大手アパレル企業、グローバルのアパレル企業で、マーケティングとマネジメントをしてました。

廣木:なんでカヤックに?

丹治: 3つのアングルで話すと、まず1つ目は単純に会社が近かったんですよ。僕は転職前から逗子に住んでたんです。2017年に都内から引っ越しました。鎌倉のとなりまちです。ある時、前職の会社が六本木から有明に移転することがあり、逗子から通うと、1時間半から2時間ぐらいかかるようになりました。、そこから2年ぐらい通ってたと思います。後半はちょっと車通勤して。車だと1時間弱ぐらいで行けたんですけど、それでも遠いなあと思って近くの場所を探してたというのが1つ。

2つ目はカヤックが保育園を経営していることです。企業支援型保育事業と言って、鎌倉にある鳩サブレーという有名なお菓子を販売している豊島屋さんと共同で、保育園の事業を開園しておりまして。保育園があるということ自体が子どもがいる自分としてはすごく魅力的でした。あと、都内に住んでいたときから保育園には本当に苦労してたんで、保育園をやるというメンタリティというか、その姿勢にもすごく共感するところもあって、いいなと思ったっていうのがもうひとつです。

最後3つ目はちょっといい話風なんですけど、経済的なもの以外に社会に何を還元できるかという観点です。もちろん前職でも、社会にどういうものを自分が仕事として還元できるかみたいなことを考えると、グローバルな会社だったので、例えば、ある南アジアのすごい山奥に工場を作ったことによって、そこに村ができて、その村に人が集まって来て、そこで働くことを学んだことによって、お金が回るようになって経済ができて、経済がちゃんと回って、村としてのかたちを成したから、ついにお祭りをやるようになったと。そのお祭りでは生まれてから1度も化粧をしたりとか、着飾ったことがない女性たちが着飾ってすごく、楽しい時間を過ごすことできてきてるという話がありました。それはすごいことだなと思います。そんなスケールで仕事を、ビジネスを通じて社会貢献ができる。

これは今の経済の仕組みの中で成立させる1つの大きな方法だなとは思ったのです。ただしかし、この話を聞いて本当に感動した一方で正直に言って、「これは、なんか自分じゃない人がやった方が楽しいじゃないかな」というか、そういう気持ちが芽生えました。自分よりももっとこれをやりたい人がたくさんいそうだなと思って。スケール感のあることがやりたい人ってたくさんいると思うんです。

例えば、当時は僕はマーケティングの仕事をしてたんで、1つのあるプロダクトをプロモーションすると、うん百万本とか、うん百万着とか売れるんですよ。その自分の関わった影響でモノゴトが動く「スケール感自体」が面白い人は絶対いると思うんですよね。自分がやったことが世の中に与える影響のサイズ自体にワクワクするっていう人、いると思うんですけど、自分はあんま大きさのスケールそのものには興味ないかもとある時気がついたのです。

大きさよりは、たとえば手触り感とか、質とか。ちょっといきなりすごい抽象度が高い話になっちゃいますけど。北海道の人口数千人の田舎出身だというのもあるかも知れません。こういうことを言うと怒られるかも知れないですが、まず身近な人や個別の幸せというか。そういうところで何かないかなと思ったときに、さっきの保育園の話なんかにも通じる話だと思うのですが、いろんなローカルな地域に関与しながらプロアクティブに、主体的にいろんなことを取り組んでいるのを知っていたので、そこの観点でもすごく共感というか、魅力があるし、もしかしたら、これなら、自分の代わりにもっとやりたい人がいるだろうし、その人がいたら代わってもいいかな、というスタンスじゃなくて、自分がここでやりたいと思えるかも知れない、そう感じたところがあって門をたたいたというのが2019年でした。

染谷:なんか自分じゃなくてもいいやって言うか、大きい会社であればあるほどとか、効率化とかを求めると、どうしても仕事の方にフォーカスがあって。それをやる人は代替可能になる場面があるじゃないですか。
でも自分じゃなきゃできないとか、自分だからこういう仕事になるっていう、その属人でいいじゃんっていう感じが、今、ひらくで仕事をやっていて、僕じゃない誰かがやれるのかとか、僕だからいいのかとか、結構狭間で今悩んでいたりしてて。今お話を聞くと、でも属人でいることをむしろ許されているっていうか、そういうチームであるっていう感じがしますよね、きっと。

丹治:これは良し悪しもありますし、一概には言えないことでもあるんですけど。先ほどの「自分じゃなくてもいいや」の話は、「これ好きなやついっぱいいるな」と思ったんですよ。自分以外に。「でかいことやること自体がすごい嬉しい、楽しい」みたいな人たち。自分より好きな人めっちゃいるのに、自分がそれにあんまりバリューを感じないとしたら、他の人に譲った方が社会のためになるじゃないかとすら思ったというのはあるんですけど。

一方でカヤック、今の僕の会社の属人性という観点で話すると、おっしゃる通りなところはあってですね、ジョブディスクリプションってあるじゃないですか。この仕事はどういうことをします、というのが書かれている文章。僕はジョブディスクリプションで仕事をしているというよりは、固有の個人が仕事をしているという感覚が強いんです。少なくとも今の自分は。
だからジョブというか仕事に人が合わせるんじゃなくて、仕事のほうを人に合わせにいくっていう感覚は、僕は結構あるんですよね。それは当然メリットデメリットがありますし、合う、合わないもすごくある話なんですけど。

僕は最初入ったときは、ある事業で事業責任者だったところからやることがかなり点々と変わってきているのですが、自分の中ではやり方というか、仕事の方法論的なものはずっと全部ほとんど同じでやっている感覚があるんですよね。仕事の内容によってやり方を変えるというよりは、自分の得意なやり方を色々な仕事に試していくという感じです。だから自分の個性を使って仕事をするっていう意識です。

なんなら、僕は会社に自分の個性を使われているっていう感覚すらありますね(笑)先ほど言葉を大切にする会社っていう話をしましたけれど、僕らに「何をするかより誰とするか」という大事にしている言葉があります。どういうことをやるかは分からないけど、この人とやりたいって言う仕事への向き合い方です。

それは最初に3人で創業した時から一貫しているものです。最初3人で創業した時に、何やるかは決まっていなかったけれど、ただ、この3人で起業しようというのは決まっていたところがはじまりなんですよね。そういうカタチで仕事ができるということ自体が仕事をする楽しさにもなっているとも思っています。

染谷:何をするか、例えば、水を作るために最適なメンバーを集めましょうってなっちゃうと、集まった人のAさんがあんまり良くないと、AさんじゃなくてBさんに変えようみたいになっちゃうけど、AさんとBさんとCさんで、この3人で何ができるかになると、多分その3人でできることとか、3人が面白いともうこととなるから、最終的にできるのは水じゃなくて違うものみたいな。

なんかその感じがすごいいいなという風に聞きつつも、それでやってて、そのプロジェクトがどういう風に進んでいくかとか、そのクライアントがどんな風に意識を感じているかとか、その辺のもっていき方が何かきっと。でもだからこそできるものとかがあるのかな。あんまり「これを作ってください」って言われないってことですか?

丹治:色々なものをつくる機会をご相談いただくことは多くて、その中には色々なレベル感の課題があるので、当然プロセスも様々ではあるのですが、僕らとして大事なのは自分たちが何を強みにしてクライアントと向き合うかということだと思っています。

僕らがやってるいくつかの事業の中で、さっき広告っていう大きなくくり方をしちゃったのですが、面白プロデュース事業と言って、広告に限らず、いろんなものを一品一様のコンテンツとして企画開発を受託している事業があります。僕らの使っている言葉なんでわかりにくいかもしれないですが「コンテンツ的にバリューアップしてく」っていう考え方でやってる事業です。

当然エンジニアがいっぱいいる会社なので、例えばウェブサイトのスピードを速くするとか、機能的で便利にするというような開発ももちろんできるし、そういうお手伝いもあるのですが、モノゴトを一品一様に個性的なコンテンツとして作っていくことがとても得意な会社なんです。広告的なものもそういう観点でやることが元々すごく多かったんです。

僕らが最も自分たちのバリューを発揮できるところだと思っているのは、そういうコンテンツ的にバリューをあげていくっていう、個性化していくっていう方向感です。これを自分たちの強みだと思ってますし、もっと強みにしていきたいなと思っているところですね。

先ほど、地方創生領域の事業があるというお話もしましたが、そのコンテンツ的な観点っていうのが実は強くてですね。コンテンツ的なバリューが低い、つまりすごく画一的になっていて、それを個性化していったら、経済的にもバリューが上がるものっていうのに対して、アプローチをして事業化していくのが、コンテンツ的なバリューアップが得意な会社のやるべき事業領域になると思うんです。そう考えたときに、地方も例えば街路沿いがどこも似たりよったりで画一化していることが多くなってしまっていて。でも、そこには本当は個性を見出すことができて、それをコンテンツ的にバリューアップしたら、そこには経済的なリターンとか、いろんな資本的なリターンというのが考えられるんじゃないか。その見立てがあることが地方創生領域の事業としては大事だったりもします。

僕らが元々鎌倉の地域企業としてやってきていて、鎌倉市の中でやってたいろんな取り組みが、外に展開できる可能性を見出しているっていうのは当然あるんですけど、じゃあそれがどういうアプローチで、どういう事業性なのかというと、先ほど話してきたような形でバリューアップしたものを最終的にゲインとして刈り取るっていう構造が、僕らが持っている、得意としている、コンテンツ的にバリューアップするケイパビリティでできるんじゃないかと思っているっていうところが、実は地方創生領域の事業の見立て、大きな見立てですね。まだまだ道半ばなんですけれども。考えてるところだったりもします。

話を戻すと、その強みが発揮できるカタチでクライアントと一品一様で向き合っていくということで、単に形式化したものじゃないかたちで、仕事になっているんだと思います。

染谷:その面白がるという言葉の裏にある。そこに努力を惜しまない感じというか、そこに力を入れている感じがすごくしました。

丹治:「なんでも面白がってやれんじゃない」っていうこと自体もなんかちょっとパワハラっぽく聞こえたりするかも知れないのですが。「面白がれよお前!」みたいな(笑)でも、そういうことじゃなくて、仕掛けとしてちゃんと面白がれるようにしてくっていうか、そういうのはちょっとゲームっぽい話だと思うんですよね。

僕らはゲーム事業もやってますけど、ゲームってのめり込ませていく仕組みそのものだったりするじゃないですか。それ自体も良し悪しありますけど、そういうゲームフィケーションとかゲームフルにしてくっていう方向感っていうのも社内の仕組みや制度設計とかでもやってたりするのもあります。

そういうゲームの開発しているようなクリエイターが、地方創生領域で、例えば僕らがやってるまちのコインっていう福岡県八女市でも導入しているプラットフォームサービスですが、そういうのもゲームデザインをゲームクリエイターが内側で作っています。そういったかたちで企業内の人財循環っていうか、会社の中でもいろんなクリエイターのいろんなケイパビリティがうまく使えるようにしていくっていう。人財をそれぞれの事業に投資していくっていう形でしてたりもします。

ちょっと話がずれちゃいましたけど、そういう形で面白がるために、いろんな叡智を揃えてます。言ってみればブレストもその1つの仕掛けですよね。事業にもよるんですけど、事業運営の仕組み自体を面白くしていこうみたいな動きも多いです。カードゲーム形式で、チーム編成するためにわざわざ事業部のメンバー1人1人のトレーディングカードみたいなカード作ってみたりとか。360度フィードバックの仕組みとか、評価制度も月給ランキングといって、誰により給料あげたいかっていうのを並び変えて考える仕組みを入れてるんですよ。

それも自前でシステム開発してるんですけど、言ってみれば社長の目線に立って考えることを促していくような仕組みです。社長目線とか言いがちですけれど、そんな簡単じゃない、じゃあ主観でいいので誰に一番給料をあげたいんだっていうのを並べ替えるってことをやると一度目線を変えるような機会にはなる。それを実際の給料の査定にも参考にして行くっていう仕組みを入れてるんですけど、そういう仕組みをデザインして、それがうまく回るようにしていくってということを実践しています。

廣木:それは社員の人がその人に入れたいっていう、なんか投票するみたいな?

丹治:投票というか、当然、関わってない人は評価できないので、いくつかのグループに分けてそのメンバーの中で並べ替えるような仕組みです。例えば自分を含んだ同じ事業部のメンバー20人を社長になったつもりであなたが報酬を高くあげたいと思う順番に並べて書いてください、という問いがでてくるんです。それは個々人の主観なんですが、主観の集まりが、その組織がいちばん大切にしている価値観であり、いちばん納得感・公平感が出るという考え方です。

廣木:サイコロもあるんですよね?

丹治:サイコロ給といって、毎月サイコロを転がすんですよ。たぶん世界でやってる会社はうちだけだと思うんですけど、サイコロの出た目で給料の一部が決まる会社です。これは遊びもあるのですが、思想面でも文化として残していきたいものでもあります。

結局会社の給料を決めてるのって上司の評価じゃないですか。でも、評価なんて完璧にできるわけではないから、どこまでいってもそこにはブレとか矛盾とか納得できない難しさが付きまとう。

その自分の給料を上げるために上司の評価を高めるように行動を最適化する構造自体は、意味がないとは言わないけれど、そればかり最適化していくと、働くことを面白がれない可能性もあると思うんです。なので、どこまでいっても評価なんかわかんないよねって、給料につながる評価を気にしても仕方ない部分があるよっていう文化をちゃんと残すっていう意味でサイコロを転がし続けるっていうのがあるんですよね。実はいろいろ進化を遂げたりもしている制度です。

うろ覚えなんですが、昔は、6が出たら給料倍。1が出たら半分にするみたいなことをやっていたそうです。破産しそうになる人が続出したから中止にしたとかっていう、嘘みたいな本当の話があったりとか(笑)こういう制度って、上場するときに結構工夫がいる話でもあるんですよね。色々検討したと聞いています。それでも保ち続けています。

それは僕らは企業カルチャーをとても大事にしている会社だからです。先ほどの属人性という話もしましたけど、個人で仕事をしてくと、個別判断でやってる部分が当然出てきます。その個別判断の精度を会社として高めるために必要なことは文化だと思うんですよね。文化をどういう形で会社にインストールし続けるか、アップデートし続けるかということが大事で。

丹治:文化をつくるのは、僕らは「制度」「評価」「エピソード」の3つだと言っていて、それをちゃんと文化につながるように管理設計していくっていうのは大事なことですね。今日はその評価とか制度の話していましたけど、エピソードの観点でも、例えば社内で起きたすごくいいエピソードは漫画化して、サイト上で外部にも公開しています。エピソード漫画というコーナーです。

その裏側には実はエピソードブログっていう大量のエピソードの集積があります。年に1回か2回、社内から今年あったいいエピソードみたいな集めて、それをブログ化して出していくっていう場所です。新卒とかはそれをちょっと一旦読んでおくとなんとなく自分の中に文化の感覚が少しインストールできたりするっていう。こういう感じの会社なんだなとか、こういうエピソードが大事にされているだなって事が分かってくる。

廣木:仕組みって、無数にあるでしょうから、カヤックさんの中に。それは誰が考えているんですか?

丹治:言ってみれば、誰でも会社の組織に対して考えることはできます。やっぱみんな組織制度を考えるのは、組織系の社員とかって分かれちゃったりするかもしれないですが、会社をジブンゴト化していくって、そういうのも面白がっていろいろ考えていくってことなんですよね。だから色々こんな制度はどうなんでしょうということも考えることは出来る。

だって僕も全然法務担当でも、内部監査的なところに関わってるわけでもないのに、定款が面白いんじゃないかって思って、定款変えようってプロジェクトを勝手に立ちあげて、定款変えちゃっていますからね。ぜんいん社長合宿というブレストだけする社員全員参加の文化形成のための合宿があるのですが、そういう場で、会社制度がブレストのお題になることも多いです。

もう一つは、例えばサイコロ給は代表が考えたって明確に言える制度なんですけど、ブレストとかで作っていくと、誰が考えたかわかんなくなるんですよ。一番うまくいったブレストって、アイディアにポン、ポン、ポン、ポン乗っかりながら作っていくから、「あれ、俺のアイディア」って言えなくなっていくっていうのがあります。当然、その過程の中でいろいろ関与している人、主体的に進めている人はいるんですけど、誰考えたかっていうと、まぁこの辺の人?ってなっちゃうっていうのもありますよね。それもなんか結構アイディエーションっていうか、ブレスト文化でやって行く上のあるべき姿1つかなと。

染谷:1人で抱えて最後まで進めていくみたいなプロジェクトの進め方を完全に壊すっていうか、みんなである程度チーム制というか、ぐちゃぐちゃになって進めていくみたいなカルチャーがあるんですか?

丹治:ケースバイケースですけどね。1人でゴリゴリ進めることもあります。でもアイディアだすっていう過程はやっぱりぐちゃぐちゃになっている時の方が面白いやつ出てくることもありますよね。ちゃんとアイディアとして成立するようにするまでは、1人で考える時間は絶対に必要なんですけど、なんか本当にベースになるのは誰が考えたんだっけ?みたいな。

廣木:ブレストカード、買いましょうかね。

染谷:あれ、すごい面白かったです。

丹治:あれやると本当に場をフラットにするっていうことがすごくしやすいんで。主体的にその場に関与するとかっていうことを引き出しやすくするツールなので、本当によくできてるんですよね。

染谷:丹治さんがお仕事を進めていく中で、その今はその福岡県八女市のお仕事もしてますけど、担当領域はもう結構幅広くって感じなんですか?

丹治:僕の所属するチームはグループ戦略室という名前なのですが、大きく2つのことをやっているチームです、1つはグループ戦略室って名前の通り、グループ経営の仕組み作り。僕らは今、グループで約20社ぐらいの会社の組織体でグループ編成強めているんですけど、グループ体としてこれから進めていく中で、会社の経営のあり方とか、グループで経営していくというあり方、仲間とどう経営していくかのあり方を進化させていかなきゃいけないなと思ってるんで、そこの部分に対していろんな制度設計や仕組みや仕掛けを導入していく。

一方、もう1つは「新たな成長機会を獲得」と言ってるのですが、その会社の中の既存の延長線上にないような、新しい取り組みを推進して進めていくという方向です。

これ、勘の良い人はわかるかも知れないですが、ある程度何でも入れようと思えば入れられるようなハコですよね。今回の図書館の基本計画の策定も、後者の観点でやってると思ってます。

これから僕らは、公共空間に対してハードも含めて関わっていくことがすごく大事なケイパビリティになると思ってるんで、地域事業というより、今回は僕の方でリードしてやってくみたいなことになっています。そもそも僕が図書館が大好きだという、僕の個性の問題もあるんですが。

あとは、経営の仕組みづくりという観点で言うと、予算編成や予実の確認などの経営のサイクルをつくったり、推進したりしています。例えば、こういう形で経営の数字を見ていって、こういうふうに回していきましょうとか、グループをこういう形で統治して、分割して行きましょうとか、執行役員の管掌範囲としてこういうのを設定してみましょうとか、そういうバリバリ経営寄りの整理もやってたりもしています。

あとはIRですね。当社の決算説明会資料等は今は僕の方で全部作ってるのですが、それを発表して、IRミーティングという形で投資家と対話することを進めています。

一般の会社でいうと経営企画的なところとか、あと社長室的なところとか、そういうような形で動いているっていう感じですね。

染谷:グループ20社ぐらいあって、最終的にやっていることは全然違うわけじゃないですか。経営戦略としてどうまとめていくか。全然キャラが違うっていうか、振る舞いが違う感じなのか、それともベースには面白がるみたいなところでマインド的にはやっぱり共通してるものなんですか?

最近、僕は町まちづくりの仕事するときに、市民の方々の意見とか、スタンスとかが全く違うというか、どこまで許容すればいいのか、どのぐらい寄せればいいのか結構難しいなと思っていて、バラバラをバラバラのままにするとまとまんないなとか、結構難しなと思ってて。グループなんである程度の共通認識はあるんでしょうけど。

丹治:それは3つぐらいのアングルで答えられます。1つは「何をするかより誰とするか」を大事にしている会社なので、だから事業も取り留めなくなるんだろうって言われたらその通りなんですけど、やっぱり経営者とかいろんな人を見て、この人はやれるかなっていうところは見ています。例えば、M&Aしたりとか、あと自分たちで子会社設立するとかも、その観点をまず気にして進めてるところがあります。

2つ目は、今まさにそのコーポレートっていうか、グループでどういうスタンスを持つかと考えているところです。
僕らは今、カヤックグループではなくて、面白法人グループと名乗ることをすごく大事にしています。「カヤック」というのは創業者で代表の貝畑、柳澤、久場の3人の頭文字をとって名付けられたのですが、一方で、面白法人は先ほど話した色々な思いや考え方が込められている言葉で、特に1段目の「面白がる」という基本的な姿勢のところはベースになる部分ですし、ある程度、多様な事業に対しても、社会の中でもいろんなことに共通化しやすい部分だと思っているので、そこの部分を最低ラインの一つにしていくというのがベースになるかと思ってます。

で、3つ目の話だけ忘れちゃったので後で思い出したら話します(笑)

染谷:面白法人っていうグループであるっていうふうに自分たちで言えれば、例えば全然資本が入ってなくても、あなたがやっていることってすごく面白いですよねって、勝手にバッジをつけていくというよりは、そういう仲間の増やし方みたいのができるっていうか。別に資本関係としてのコーポレートっていうものと、共感し合える仲間たちみたいな、面白法人ってワードで全国に仲間を増やしていけるみたいな、すごい面白い。

丹治:先ほど話したグループ経営的な仕組みづくりは、まさにそういう仲間づくりの仕組みっていうこともすごく大事にしている話ですね。

あ、そうだ。思い出しました。さっき話そうとした3つ目の話は、僕らの事業体の束ね方をどうしているかっていうことを考えたときに、ストーリー的に束ねていくのはもしかしたら難しいと思ってるんですよ。事業がとりとめない分、こうなってこうなってこうなっていくというのを具体的に説明するのが難しい。オポチュニティベースで色々なことが起きてきた会社ですので。

なので、どちらかというと、ストーリーよりはシステムとしてこういう仕組みでグルグル回っていって、こういうようなモデルだから、僕らは束ねられてるんですって形での方向感っていうのが何かないかなというのを今探ってたりします。

抽象度が高くてわかりにくいかもしれないですけど、特にIRでコミュニケーションするときって、この市場に張っていて、この市場は年率何パーセントで伸びて、社会環境として今後こうなるっていうところがあるから、こう伸びるんですという結構ストーリー仕立てで理解したいというのがすごくあるんですけど、それで説明すると、僕ら結構いろんな事業をやっているのでわかりにくくなりがちです。

だったら、こういう形のシステムがぐるぐる回ってったらちゃんと成長している感じがするでしょっていう仕組みのお話をちゃんと作っていくっていう。束ね方の方向感として何かないかなっていうのを今探していることですね。

廣木:誰とやるかみたいな観点でM&Aもしていってるから、全然異業種っていうか、多岐にわたっている中で、全部のストーリーはが繋がらないけど、仕組みづくりに中でっていう。

丹治:そういうイメージですね。今大きく4つぐらいの事業領域に整理をして、その事業領域ごとに、サービス領域を束ねていくっていうことを重視していこうかなと思っています。それぞれが主体的にM&Aをするとか、いろんな事業機会を探っていって、そこの事業機会に対して投資する方向感も全然あるし、それはそれとして、コーポレート、グループ全体として新しい成長機会を作っていくってのもあると思っています。それらをうまく構造的に形にしていこうとまとめているのが、今の僕らのグループ編成のフェーズですね。

染谷:それぞれの4つの領域が広がった先には一種の価値観というか、文化圏のようなものが形成されていくと思いますが、そういう時に株主目線だと、この市場で事業をやってて伸びるんですか?もう頭打ちじゃないですか?とかそういう目線の質問をしたがるでしょうけど。それだけじゃなくて、こういう価値観を提供するからみたいな。上場企業がそういうアプローチをしているは、例えば「ほぼ日」とか、「暮らしの道具店…クラシコム」さんとか、なんかそういう風にしっかり説明する企業が多いんだって増えているなという印象。

丹治:クラシコムさん、すごく上手ですよね。その文化圏としてのアプローチとか、自分たちの事業体、IRとしての説明もすごくシャープだなと思います。先ほど僕が話した仕組みとしての経営のモデルみたいなものも、例えば株主還元みたいなものの仕組みを、こういう構造でやりますってことをIR上で提示してたりとか、結構仲が良いし、お互いに会合する機会もすごく多いんですけど、横で見ながらなるほどなと思ってるところもあります。

IR担当としては成長仮説を説明可能にしていくのがとても大事なことなので、それもちゃんと成立するようにできると思っています。同時に、文化圏を作っていくと、先ほどおっしゃってましたけど、そういうのを成立させる方法もあるんじゃないかなと思ってます。

廣木:丹治さんはMC丹治と呼ばれていて、ブロンクス出身の(笑)。ずーっと語り続けるという得意技がありますけど…

染谷:そろそろまとめますか。これ、まとめなくてもいいんですけど、でも今日お話しいただいた在り方とかって多分、普通のアプローチ、いろんな現場だったり、企業のアプローチだったりとは違う考え方があって、その辺はすごいヒントになったというか。

廣木:僕もやっぱりその会社の在り方ってなんどろうなと考えながら、深く突き刺さりました。

染谷:僕も今ひらくの進め方すごく悩んでいるので。

廣木:悩んでる二人(笑)

丹治:なんか本当にここから10年とか20年、30年のスパンで見たら「会社ってなんであるの?」って話にもっとなっていくとも思うんですよね。プロジェクトベースで人が集まって、ファイナンスもプロジェクトベースでできて、プロジェクトファイナンス、プロジェクトメンバーで全部いけるんじゃんって話になったときに、それでも会社を残す理由って何?会社で働く意味って何?ってことに対してちゃんと提案性が持てる存在に面白法人カヤックをしていきたいなと思ってます。

廣木:今やってるプロジェクトの図書館っていうわけじゃないんですけど、なんとなく今日の話っていうか、組織作りっていうか運営の体制という意味では、やっぱり図書館とか、そういうものの中にもこういう考え方ってもっとあってもいいかなっていう気がしていて。

直近では八女市っていうのがあって。これから本当にどういうものにしていこうってずっと考えていますけど。どうしても図書館作るときって目の前のサービスとか建物とかっていう話にどうしてもなっちゃうんですけど。在り方、人の動き方の在り方っていうか、そういうのとかってなんかもうちょっと有機的な深い考えができそうなヒントがいっぱいあったかなと思います。

丹治:図書館のことは僕はむしろ勉強してるので、色々教えてもらって、いい形で考えられればなと思ってます。

染谷:さっきそのゲームフルみたいな、ゲームでのめり込むみたいな、その依存させるって言ったらあれですけど、そのめり込ませ方みたいなのはどんどん転用して別の事業に変えているわけですから、こっちの事業で面白かったことをそっちのプロジェクトで転用するみたいな転用力みたいなものは、たぶん色々今回のプロジェクトも含めて生きていくんだろうなと思いますね。

廣木:勉強になりました。丹治先生。

丹治:MC丹治って言ってるの廣木さんだけですよ。(笑)

廣木:そうなんですか?世間で言われてないですか?

丹治:言われてないですよ(笑)

廣木:すごいですよね。よくまとめるなと毎回思いますけど(笑)

丹治:ありがとうございます。

染谷:ありがとうございました。

2023年10月4日(水)収録