ONE PIECE ホールケーキアイランド編を語りたい(前編)
⚠️盛大にネタバレがあります⚠️
私が最も好きな漫画はONE PIECEである。人生で初めて買った漫画はONE PIECE(15巻発売の頃からずっと買い続けてる)だし、おそらく死ぬまでにONE PIECE以上に好きになる漫画と出会うことはないだろう。
その中でも私が最も好きな章が、ホールケーキアイランド(以下、WCI)編(82〜90巻)である。
私は「WCI編が一番好き」と言っている人とリアルで出会ったことがない。この記事も「きっと大したことは書いてない」と思われるだろう。そう感じた人にこそ読んでほしい。きっと新しい発見が少しくらいはあるはず。多分。
今回は大きく3つのポイントに分けて語りたい。
何かあった未来のルフィとの戦い
ペドロの死はサンジが選ばなかった未来
WCI編のONE PIECEらしくなさ
想定以上に長くなってしまったため、前後編に分け、前編では「何かあった未来のルフィとの戦い」を語ります。
何かあった未来のルフィとの戦い
WCI編の章ボスはカタクリである。念の為説明すると、カタクリはビッグマムの次男で海賊団の中ではビッグマムに次ぐ実力者。当時のルフィの懸賞金が5億ベリーに対し、カタクリは10億5,700万ベリーだった。
カタクリの能力はモチモチの実。身体を餅状に自在に伸ばしたり千切ったりできる能力である。公言はされていなかったと思うが、モチモチの実はゴムゴムの実の上位互換と考えられる。
ゴムゴムの実は体の一部を自在に伸ばす能力だが、モチモチの実は伸ばすことに加え、空間に餅を生み出す、身体を餅で纏う、硬めて武器にすることなども可能(硬めるは覇気によるものかもしれないが)。作中でも「特殊な超人系」と説明されていたが、ゴムゴムの実に自然系の要素が足されたイメージといえる。
ゴムゴムの実の弱点である切断による攻撃も、モチモチの能力なら餅から作った武器で対応できる。しかも当時ルフィがまだ到達していなかった覚醒済み。
さらにルフィの強みである覇王色の覇気はカタクリも使用できるうえ、カタクリは当時でいうと見聞色の覇気も作中トップクラスだった。初出だった「見聞色の覇気を鍛えることで少し先の未来が見える」というチート能力まで備えていたのだ。
こうなると能力だけでなく、ルフィという戦士の上位互換である。ONE PIECEの世界において、悪魔の実の能力と覇気、どちらも負けていた場合は余程のことないと勝ち目がない。
しかも、ルフィは基本的に強敵相手には2回負けて3回目で勝つ法則があるが(クロコダイル戦やカイドウ戦など)、今回はそれも許されない。少しでも隙を見せるとナミ達が殺されてしまうからだ。つまり、圧倒的下位互換のルフィが戦闘の中でカタクリを上回らないと勝てないのだ。
少年バトル漫画では主人公が自分の上位互換と戦うことがたまにある。例えば『金色のガッシュ』のゼオン、『黒子のバスケ』の黛など。読者も主人公もめちゃくちゃ絶望させられるけど、勝たないといけないから本気で立ち向かって、単純じゃない成長を遂げて打ち勝つ。
仮にルフィが単純に能力を覚醒させて勝つのなら、ここまで熱くならなかったかもしれない。純粋に覇気も能力も高め、成長してお互いに認め合っての勝利だったからこその熱量がカタクリ戦にはあった。
カタクリの魅力は精神性にもある。明らかにこれまでの敵役とは異なるのだ。家族を守ることを第一主義とし、敵役というよりも主人公サイドに近い気高さも兼ね備えている。
カタクリとの決闘は鏡の世界で行われることになるが、ルフィの鏡写しの存在、もしくはルフィの「何かあった未来」の1人のようにも思えるのは考えすぎだろうか。現に、嬉しそうにおやつを食べるカタクリや幼少期の彼の姿は、まさにルフィのようでもある。
「誰かに頼らないと生きていけない自信がある」とルフィはアーロン編で断言したが、誰にも頼らず全てを自分で抱え、弱さを見せることを辞め、強さをひたすらに磨いたルフィの未来がカタクリなのかもしれない。ルフィがカタクリにあだ名をつけていないのも、そういった理由があるのではと思っている。
メタ的な余談だが、まだまだ物語は続きそうなのにこんなわかりやすい上位互換と戦って、大丈夫なのかと当時考えた。しかしそれは杞憂だった、なぜなら次のワノ国編ではルフィの悪魔の実が覚醒し、それ以降は戦い方が完全に変わるから。つまり、カタクリは「覚醒前ルフィに相応しいラスボスだった」ということが読み進めるとわかるわけだ。
最後まで書き終えているものの長くなってしまったため、ここまでを前編とします。後編では「ペドロの死はサンジが選ばなかった未来」「WCI編のONE PIECEらしくなさ」について語ります。
後編はこちら