表現者である私がユースセンターで実現したいこと
学校でも家庭でもない、中高生(ユース)のための第3の居場所である “ユースセンター” 。カタリバでは文京区の中高生が放課後や休日を自由に過ごすことができる「秘密基地」として、ユースセンターb-lab(文京区青少年プラザ)を運営しています。
そんなユースセンターで働くスタッフ(ユースワーカー)へ、カタリバ広報・新メンバーのもりはるがインタビュー!第2弾のゲストは、劇団「アマヤドリ」で俳優として活動しつつ、b-labのユースワーカーとしても働いている大塚 由祈子(ゆっこ)さんです。
表現を軸に活動の幅を広げているゆっこさんがユースセンターで働くことになった経緯や、中高生と接するときに意識していること、また、今後の展望など気になるポイントを聞きました!
「語り」の魅力に惹かれてユースセンターへ
ーまずは簡単に自己紹介をお願いします。
高校では国際基督教大学高等学校のダンス部、大学ではお茶の水女子大学舞踊教育学コースと、ダンス漬けの学生生活を送った後に演劇の道へ進み、現在はアマヤドリという劇団に所属して俳優として活動しています。
その他、子どもにインプロ(台本のない芝居)を教えたり、小・中・高校にて演劇の手法を用いた授業の実施に携わったり、障がいのある方々とインクルーシブ・ダンス(※1)の探究をしたりなど、表現にまつわる色々な活動をしています!
ー「表現」に重きを置いている理由はありますか?
私自身子どもミュージカルをやっていたときに、演劇を通して周りの子が変わっていく姿を見たのがきっかけです。新しく入ってきて、最初は一言も話せなかった子が、1年間舞台を経験すると見違えるように話せるようになる姿を見て、表現がもつ可能性を子どもの頃から感じていました。
ー「表現」を軸に様々な活動をしているゆっこさんが、ユースセンターで働くことになった経緯を聞かせてください。
以前からダンスなどの表現を通して子どもたちに単発で関わることは多かったのですが、長期的にみっちり関わる機会は少なくて……。そんなときに、ユースセンターb-labで新しい職員を募集している広告をたまたま見かけて、「b-labだったら長期的に子どもたちと関われそう」と思い応募しました。
あと、b-labを運営しているカタリバが、「語り」を大事にしているのに惹かれたのもあります。私が今まで携わってきたダンスや演劇で自分を表現するということが、ハードルが高い子どもたちもいる。表現が苦手な子は別に「語り」からスタートしても良いんじゃないかとハッとしたんです。もっと語りの可能性を知りたいと思い、入職を決めました。
ダンスを通じて子どもたち同士のつながりを生み出す
ーユースセンターb-labではどんな仕事をしていますか?
ダンスや演劇を使ったイベントを企画しています。b-labにはダンスホールがあるので、いろんな学校からダンスをしに来る子がいるのですが、学校を横断してつながることはあまりありませんでした。そこで、ダンスを通して学校を超えた交流が生まれるように工夫しています。
ー具体的にどんな工夫をしているのでしょうか。
ダンス練習の成果を見せてもらうときに、「一緒に見よう!」と他の学校の子も巻き込んで、見終わってから「どうだった?」と感想を求めることで交流が生まれるよう意識しています。ただ、一度つなげても元のコミュニティへ戻ってしまうことが多いので、今後は定期的にイベントを開催して継続的な関係性を生み出していきたいです。
また、ダンス練習後に談話スペースへ移動して他の中高生やスタッフと話すことで、中高生にとっての居場所が増えると良いなと思っているので、帰り際に「もし時間があるならお話ししていこうよ!」と声掛けをしています。
その際、いきなり他の中高生と話すのはハードルが高いと思うので、まずはスタッフとつなげるのがポイントです。スタッフと話していると他の中高生もやってきて、交流が生まれるという流れを作るのを意識しています。閉じた空間であるダンスホールを、開けた空間にすることが私の使命です。
「表現」には距離の壁を乗り越える力がある
ーゆっこさんの今後の展望について聞かせてください!
ダンスや演劇など、ユースセンターb-labで生まれたものを、アダチベースや双葉みらいラボなど、他のユースセンターにいる中高生にもシェアして、中高生同士がつながると良いなと思っています。作品を見せるだけでなく、「見てどう感じた?」と感想を聞き合うことで相互交流が生まれるとより良いですよね。
まずはカタリバが運営するユースセンター同士をつなげて、ゆくゆくはカタリバを飛び越えて、日本全国を表現や語りでつなげたいと思っています!
また、今までは中高生など子どもを対象とした活動がメインではありましたが、最近は家と職場を往復する社会人にもサードプレイス(第3の居場所)が必要なんじゃないかと感じていて。子どもか大人かに限らず、自分の抱えているものを発散する場所がないというのは誰でもつらいですよね。なので、今後は活動の幅を子ども以外にも広げていきたいです!
編集後記
ご自身にタグ付けをするとしたら、「#表現教育」だというゆっこさん。子どもたちと表現を通してコミュニケーションをとっているお話をするときは、顔がほころんでいました。また、インタビュー中に「〜できたら楽しいですよね」と何度も口にしていたゆっこさんからはポジティブなオーラが溢れていました。「全国各地が表現によってつながるように」というゆっこさんの夢が現実になる日を、私も待ち望んでいます。
文:森田 晴香