北陸新幹線新駅と空港リムジンバスで「陸の孤島」返上 JR片町線沿線

転記

京都府京田辺市の松井山手駅を中心とするJR片町線沿線が活気づいている。人口が増え続けており、今月からは沿線のJR津田駅(大阪府枚方市)と大阪(伊丹)空港を結ぶリムジンバスが、運行を開始。第二京阪道路の全線開通で利便性が増し、北陸新幹線敦賀-新大阪間の新駅設置計画も浮上するなど、にぎわいが広がりつつある。(小泉一敏)

沿線は人口増加

 「これまでより、かなり便利になります」。空港リムジンバスの運行が開始された1日、津田駅から乗車した大阪府枚方市の奥西さと子さん(30)は笑顔で話した。伊丹空港までの所要時間は約1時間。以前は大阪モノレール門真市駅までタクシーを使い、そこからモノレールに乗ることが多く、2時間以上かかっていたという。

 かつて片町線沿線は同じ枚方市内を走る京阪沿線よりも利便性が悪く、道路事情も良くなかったことから「陸の孤島」と称されることが多かった。それが、今回のリムジンバスも通る第二京阪道路(京都市伏見区~大阪府門真市)が平成22年に全線開通すると、枚方市の法人税収と市民税収は年間で計約13億円伸びた。

 分譲住宅やマンションの開発も続いており、枚方市によると、市全体の人口は21年の約41万人をピークに減少傾向にある一方、片町線沿線では4年の約1万4千人から昨年は約3万人まで増加した。

 にぎわいの中心になっているのが、松井山手駅周辺だ。京阪電鉄不動産(当初は京阪電鉄)が4年から同駅周辺で開発してきた住宅地「京阪東ローズタウン」の京田辺市域では当初、わずか1世帯6人にすぎなかったが、商業施設が相次ぎ整備され利便性が向上。大阪市内と京都市内の両方に約30分圏内で行ける立地や、緑の多い環境などから幅広い世代の人気を集め、今年4月現在で2754世帯、7685人となっている。相続税や贈与税の算定基準となる路線価はここ10年間、上昇傾向にあるという。

11年ぶり「勝算」

 今月から運行が始まった津田-伊丹空港間のリムジンバスは1日8往復。津田駅を出発した後、松井山手駅近くの「高速京田辺」を経由する。一見すると遠回りになるが、京阪バスの担当者は「乗客の需要を見込んだことも一因」という。

 伊丹までのアクセスが向上すれば、片町線沿線の利便性はさらに高まり、バス利用客の掘り起こしも進む-。こうした思惑はあるが、課題もある。初日は乗客が数人にとどまる便が出るなど、周知が進んでいるとはいえず、担当者は「まずは1便平均十数人とすることを目指す」と語った。

 また過去には、京阪枚方市駅発着のリムジンバスが10年に関西国際空港、13年に伊丹空港との間で運行が始まったものの、伊丹線は利用客が伸び悩み、20年に廃止されている。

 枚方市内と伊丹空港を結ぶリムジンバスとしては11年ぶりの再起を図る形だが、明るい見通しもある。大阪や京都を訪れる外国人観光客は増加傾向で、2025年大阪・関西万博も控える。松井山手駅近くには宿泊施設もあり、大阪市内や京都、奈良の観光地へもアクセスしやすい。伊丹空港に降り立った観光客の関西観光の拠点となれば、リムジンバスが主要な交通手段として活用されそうだ。

担当記者はこう思う

 大阪府枚方市を中心とした北河内の取材を担当している関係で、移動の際は京阪本線だけでなく、JR片町線もしばしば利用している。車窓からは、豊かな自然とのどかな風景が見て取れるぶん、開発に余地があることも感じている。

 実際、枚方市や京都府京田辺市以外の自治体も、新たな開発地域として片町線沿線に注目している。大阪府寝屋川市は、東寝屋川駅から名称の変更をおこなった寝屋川公園駅周辺の整備を計画。マンションや商業施設に加えて、小中一貫校の設置を進めるという。

 さらに大阪府交野市では、星田駅北側の開発が進められる計画だ。第二京阪道路に近いこともあって、物流関連の企業の立地が予定されている。企業が進出すれば、雇用が創出され、住宅の整備がさらに進むという好循環を生む。2025年大阪・関西万博のころには、沿線の風景は様変わりしていることだろう。

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 JR津田駅と伊丹空港を結ぶリムジンバスは1日8往復運行。津田駅の始発は午前5時35分、最終は午後5時。高速京田辺(京都府京田辺市)、名神高槻(大阪府高槻市)を経由する。所要時間約60分。料金は大人1200円(名神高槻からは700円)、小学生以下はそれぞれ半額。問い合わせは京阪バス枚方営業所(072・890・2121)。



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