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平成八年生肉之年

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第2回逆噴射小説大賞に出したお話の続きを書いています
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2023年10月の記事一覧

平成八年生肉之年--01

平成八年生肉之年--01

初川千歳

「三角生研、あなたの健康と未来を支える、バイオテクノロジーのリーディングカンパニーです」
 明るい曲とともにラジオからCMが流れた。千歳はいつもこのCMが流れると声の大きさで驚いてしまう。編集長によれば、朗々と喋っているのは社長である三角妙子なのだという。妙子は今年で70を超えるというが、溌剌とした声には老いの影は見当たらない。千歳はボリュームを絞った。
 乳白色の霧が遮るように道に立

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平成八年生肉之年--02

平成八年生肉之年--02

承前

平岡辰雄

 錆びた鉄の階段が霧で濡れている。平岡辰雄刑事が一段ずつ上がる。60を超え、段差がこれほど怖いものになるとは思わなかった。年齢に勝てない自分を忌まわしく思う。革靴の踵でカンカンと階段が鳴った。二階ではアパートの扉が開かれ、捜査員たちがひっきりなしに出入りしている。ちょうど出てきた若い捜査員に声をかけた。
「鉢村」
「平さん」
 鉢村と呼ばれた捜査員が平岡に駆け寄る。鉢村要巡査は

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平成八年生肉之年--03

平成八年生肉之年--03

承前

神立悟

 赤い血潮が流れ出るたびに思う。おれの身体には血の代わりにガソリンがぶち込まれている。
 神立悟が最初にそう思ったのは、小学四年生の給食の時間だった。担任の教師が悟の飯を大盛りにした。
 ふかふかの白飯よりも先に、担任の視線に目が行った。耐えられない感情が身を灼く。 
 悟は言葉より先に、教師の鼻に掌底を打ち込んでいた。
 悟の家は父と暮らしていた。周りの態度から滲み出る憐みには

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