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電楽の短編

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2023年11月の記事一覧

エンの眠るまえに

エンの眠るまえに

 涙が出ない乾季は遠くを見がちになる。青々とした山のふもとでエンが歩いていた。大きな体を揺らす姿がもの珍しいのは3日だけだった。
 ピロティに風が吹く。砂利のすきまで雑草がそよいでいる。午前中よりも涼しくなり、嫌でも文化祭の終わりを感じさせた。
 私たちダンス部のショーケースは無事に終わった。これで三年生は引退する。
 来週から有紗さんは部活に来なくなる。当たり前の事実に、胸の奥が重くなった。有紗

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