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日本刀の解説を一緒に読んで理解していく回②

前回に引き続き、重要刀剣図譜の解説について何か一つ適当に抽出してどんな意味で書かれているのか、訳しながら書いてみようと思います。
以下は第4回重要刀剣図譜から引用した文章になりますが、今回は以下の「④刃文」からになります。
まだ前半を読まれていない方はコチラをご覧ください。

①法量
刃長七寸二分 内反 元幅七分二厘 元重ね二分弱 茎長三寸四分半 
茎反なし

②形状
平造、三つ棟、内反尋常の姿である。

③鍛

小板目僅かに流れごころがあり、総体に肌よく約み地沸細かにつく。

④刃文

鎺元表裏に互の目ごころを見せ、細直刃小沸よくつき、処々に金筋かかり頻りに足入る。

⑤帽子

小丸、先僅かに掃きかける。

⑥彫物

表裏に刀樋を刻し、先と鎺下に僅かに連樋の跡がある。

⑦茎

僅かに磨上げ、先栗尻、刃方を磨っている。鈩目浅い勝手下り、目釘孔一、目釘孔の下中央に細鏨に暢達な二字銘がある。

(引用元:第4回重要刀剣図譜より)

④刃文

刀の刃文について詳細が書かれています。

鎺元表裏に互の目ごころを見せ、細直刃小沸よくつき、処々に金筋かかり頻りに足入る。

鎺(はばき)とは以下の金色のものの事です。

互の目とは以下のように頭の丸い刃文の事です。
一説には碁石を並べて横から見た形に似ている事から碁の目と書くなど呼び名は諸説あるらしいですね。

今回は鎺元とあるので、鎺をはずした所あたりの表裏に上記の互の目のような刃文が見えるという事になります。
細直刃というのは細い真っすぐな刃文の事、「小沸つき」とは、匂いまではいかないものの、とても小さな沸の粒が付いているという意味です。
新刀以降になると沸の粒が大きくなる傾向があります。

以下の写真は小沸になります。沸は点の集合ですが、小沸はとても沸粒が小さいのでふわっとしたような、新雪が積もったような見え方をする気が。
また矢印の先にある線のようなものが「金筋」です。

「足」は以下のように刃先に向かって入る刃文の線です。
短いと「小足」と言われます。今回は頻りに入ると書かれているので、これが沢山入っていると思って頂ければ。


ここで改めて冒頭の説明を見てみます。

鎺元表裏に互の目ごころを見せ、細直刃小沸よくつき、処々に金筋かかり頻りに足入る。

いかがでしょうか?
刃文が少しイメージ出来るのでは無いでしょうか。

⑤帽子

帽子は切っ先の刃文の事です。

小丸、先僅かに掃きかける。

つまり、以下の小丸帽子のような刃文で、切っ先が僅かに掃きかけている、という意味です。以下から小丸帽子と掃きかけ帽子を探してみて下さい。
MIXしたようなものを想像すると分かり易いかもしれません。

(画像出典:刀剣ワールド 帽子の違い


⑥彫物

彫り物は刀身に彫られた彫刻の事です。
真っすぐな樋以外にも龍や植物、文字、梵字など様々な物が彫られていますが、当然ない物もあります。

表裏に刀樋を刻し、先と鎺下に僅かに連樋の跡がある。

上記をイラストに当てはめると以下のような感じでしょうか?
僅かに連樋の跡がある、と書かれているので研ぎ減りなどで消えかかっている連樋があるようです。
(消えかかった連樋は細い青線で表現してみました)


⑦茎

最後が茎です。
ここでは茎の形状や鑢目、開けられた目釘孔の数などが書かれています。

僅かに磨上げ、先栗尻、刃方を磨っている。鑢目浅い勝手下り、目釘孔一、目釘孔の下中央に細鏨に暢達な二字銘がある。

まず、これをイラストに表すと以下のような感じでしょうか。

「僅かに磨上げ」というのは茎の底部をわずかに削って短くしているという事です。
更に、「先栗尻、刃方を磨っている」と書かれていますが、栗尻は丸みを帯びた茎尻の形状の事で、その刃側を削っているという意味なので上記のようになります。
鑢目の「勝手下がり」とは鑢目の角度の事を指しています。
角度がきつくなるにつれ、「筋違鑢」「大筋違鑢」など様々ありますが、これは覚えましょう。
目釘孔一とは、目釘孔が1個だけ空いているという意味です。
刀には3~4個空いている物もザラにあります。
最後、目釘孔の下中央に細鏨に暢達な二字銘がある、という事で、目釘孔の下に細い鏨でのびのびと切られた銘がある事が分かります。

⑧終わりに

という事でこの短刀は粟田口吉光の作でした。
重要刀剣図譜には押形も載っているので、そちらでも形状を確認出来るのですが、文章だけ読んでもかなり頭の中でイメージ出来るもの、というのが何となく伝わると嬉しいです。
それにしてもこれだけ短い文章で刀の様態を伝えられるというのには驚くばかりです。

刀の単語は一見多く難しそうに感じるかもしれませんが、覚えると刀剣本から想像を膨らませる事が出来るので面白いですよ^^

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それでは皆様良き御刀ライフを~!

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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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