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五疋龍図目貫

後藤祐乗の作に三十疋這龍図三所物がある。
これは目貫に各5体づつ、小柄に10体、笄に10体、合計して30体の龍がいるから三十疋龍図と言われているのだと思う。
寛政17年に代1300貫の破格の代付がされている。江戸時代は貨幣価値が変動するのでなかなか現在の価値に変換するのが難しいが、1貫=1000文(1文32.5円)とすると約4200万円である。
個人的には祐乗の傑作ではないかと感じているが、今まで目貫で見てきた物でどんなに龍が多くても5匹が最高数であるように感じる。
因みに後藤家の獅子図目貫は1匹、2匹、3匹、5匹、7匹、といるが、龍図目貫になると、1匹、3匹、5匹であり、2匹のものを見ない。
これは何か理由があるのだろうか。
日本には古墳時代から飛鳥時代にかけて「陰陽五行」の思想が伝来したとされ、古代の政治や行事、風習に強い影響を与えてきたようだが、その陰陽五行の思想では奇数は縁起の良い「陽」、偶数は縁起の悪い「陰」と考えられている。
しかしその中においてなぜ2匹獅子だけ沢山あり(兎や牛などもありますね)、2匹龍が無いのか、というのは素朴な疑問であるところ。

画像出典:文化遺産オンライン
画像出典:文化遺産オンライン
画像出典:文化遺産オンライン
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いずれにしてもほとんどの龍目貫は1体であり、こうした他頭の龍目貫が売り物に出てくるのは非常に稀な気がします。
以前ヤフオクに赤銅の十疋龍目貫が出おり、加賀後藤の極めになっていたがとても良さそうな物であったのは記憶に新しい。(最高傑作です!と書かれているとつい身構えてしまうのは蒐集家の性かもしれませんが)
画像だとあまり細部まで分からず最後は半ギャンブルになってしまう所がヤフオクの難しい所ですね。

画像出典:aucfun
画像出典:aucfun


そして6代栄乗極めの金五疋龍目貫がこの前出ていました。
先の祐乗作と同じく非常に凝った出来栄えで覇気があります。
栄乗作の龍目貫はそこまで見た事が無いのでこれが傑作かは分かりませんが少なくとも今まで見て栄乗の作では一番感心した作でもあります。

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