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トーハクの美しい展示から「展示の美しさを決める要素」について考える

先日トーハクを訪れた際にこれは美しい!と感じた展示方法があった。
それが以下の国宝「檜図屏風(狩野永徳筆)」の展示である。

東京国立博物館


これを見て展示の美しさを決める要素は主に3つありそうに感じている。
以下3つである。



(以下2枚の写真は今回の話に関係が無いが、檜図屏風そのものとキャプションを気になる人の為に貼っておく)

檜図屏風(狩野永徳筆) 国宝


①部屋の空間作り

まずは部屋の空間そのものが実は1番大事な要素を占めているように感じる。
薄暗い空間で物が少なくシンプル、こうした空間は雑多な情報が目に入りづらく(薄暗いと視界の両端が黒くなり見えづらくなる)、展示品に集中出来る環境が整う事に加え、作品の世界観を阻害しない事に繋がるので望ましいと考える。
これは家に美術品を展示する際も同様で、視界に展示品以外の物が映れば映るほど展示品の存在が消えていき雑多な空間になる。
ただ例えば茶室と書と花器など全てが視界に入る事で展示品の良さを高める場合もあるので、取り合わせが良い物であればそれは例外となる。

今回の檜図屏風は本来の襖絵が合うような空間が用意できない代わりに、「大きな空間にただ1点の展示」という方法が取られている。
薄暗いので周囲が見え難く、トーハクという建造物の床や壁、天井などそうした色味も相まり作品の魅力を引き出しているように見える点が素晴らしい。

②展示ケース内の空間作り

折角展示部屋を薄暗くシンプルにして作品に集中出来る空間を整えたとしても、展示ケースの中に展示品がいくつも並べられると結局視界に入る情報量が増えてしまい雑多感が生まれてしまう。
檜図屏風の展示が素晴らしい点は大きなケースの真ん中に堂々と屏風を配し、左右上下の余白を充分に取っている事に加え、背景を黒にして背景の存在感を消す(雑多感を減らす)事で展示品の壮大さと、展示品が持つ色を存分に引き出している点に思う。

「下の余白」というのは展示品から地面までの余白を指すが、照明の当て方により、展示品の下部が黒くなることで、背景と同色に近づき屏風が浮いているように見せているのが上手い。


③照明

照明は光の広がりをどこまで抑え込みながら、展示品が1番魅力的に見える色味を楽しめるようにするか、という点が展示の美しさを左右するように感じる。
自分でもケースを作る中で感じるが、光の広がりが大きくなればなるほど、空間が明るくなるので、例えば壁紙の汚れであったり、展示品に関係のない周囲の情報が目に入りやすくなってしまう。
これは先ほどから書いている雑多感に結局繋がってしまう。
その為、光の広がりは展示品だけ見える範囲で広がらせるのが望ましく、展示品の両端は目立たなくするのが良いと考える。
その辺りスポットライトは調整がしやすく私も愛用している。

・終わりに

トーハクの檜図屏風の展示が何故これほど美しく感じたのか、3点(①部屋の空間作り、②展示ケース内の空間作り、③照明)挙げてみたが、これに限らず作品の前に立って作品に集中出来る環境が整っているとすればそれは素晴らしい展示と言えるのではないだろうか。

尚、今回の檜図屏風の展示でさらに素晴らしいと個人的に感じたのはキャプションが展示から離れて配置されていた点。

赤丸部にキャプション

美術館で直ぐにキャプションを見てしまう人は多いと思うが、まず作品から自分なりに何かを感じとる事が大事なのではないだろうか。
「まず作品から何か感じ取ってほしい」そうした美術館側のメッセージが聞こえてくるようであった。



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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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