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愛刀家の共通軸「レア度」

この刀剣趣味という数奇な世界で愛刀家の共通軸になり続けているのは「レア度」である気がしてきたので今日はそんな話です。

刀を初めて見たり持った時はは大体刀の姿をしていれば何でも感動する。
愛刀家になり立ての頃は目の前の刀鑑賞に没頭して毎日目にその刀の情報を入れ込む。
次の段階になると徐々に出来の良い物を求める。
その過程で段々と大銘ものに手を出して行く。
年紀入りや裁断銘、所持銘があれば少し魅力的に感じたりもする。

出来の違いが何となく分かるようになると銘だけで集めるのを辞めて、大摺上など無銘の刀で出来の良い物が多い事に気が付く。
そして値段が安い事に気が付く。
出来も状態も良いのだから満足する。無銘の特重も沢山ある。
しかしなぜか愛刀家はそこで止まらない。

次に行くのが「生ぶ」という概念。
大和物や山城物などでは生ぶで無銘という太刀も存在しておりそうした物も対象になる。無銘なのだから安いだろうと期待して撃沈する人も多数。生ぶの無銘は扱いがちょっと違う様子。
相州の無銘は…基本大摺上げなので生ぶには該当せず&色々怖い。
まだまだ先はあり、その次が在銘品。
備前などは古いものでも無銘などはほぼ無い。(国宝の山鳥毛や重文に確か福岡一文字の生ぶ無銘があったか)

もう流石に終着点だろう、と思いきや更にその上があり、次が状態の良さ。
帽子がしっかり残っているだとか、重ねがあるか(ペラペラに研ぎ減ってないか)とか、地の状態が良いだとか。(帽子が残っていれば大体他の刃も健全)
そしてそしてまだ終わらず最後の究極形が「目釘孔1つ」という条件。
つまり条件がどんどん打ち卸しの状態に近づいている事が分かる。
これにプラスαされるのが「伝来」。
そして無銘でも名物などは例外なく極レア。

さて平安時代、鎌倉時代のもので、目釘孔1つの生ぶ在銘品で帽子がたっぷり残り、地の綺麗な物は果たしてどの位あるのか?
南北朝時代はまだ少なからずありますが、鎌倉以前になるともうほぼゼロです。
正確に書くなら「市場に出回っているもの」でそのような物がほぼゼロです。なぜならそのようなものは美術館や神社などに既に納まっているからです。当然国宝、重文、重美など国指定を受けているものも多い。
しかしほぼゼロであって、ゼロではないのです。
僅かながらあります。
なのでそういう刀を、突き詰めた数奇な愛刀家は皆探し求めているわけです。

今回大雑把にステップを書きましたが、このどの段階にいても「レア度」というのは少なからず軸にしているのではないでしょうか。
例えばこの銘は同工の作でも希少とか、この造り込みは稀とか、脇物でも現存が他になく希少とか、マイナー刀工ながら完品状態とか、光山押形に載っているとか、鉄鎺が付いてるとか、そんな感じです。
刀屋さんのHPなどでもよく希少性という売り文句が並びますから、あながち愛刀家に刺さるワードとして間違いないのでしょう。
私の周りの人と話をしていても希少性という話はよく出て来る気もします。

ともすればレア物を追求する旅なのかもしれません。
レア度が高くなるほど物が無いので値段が下がりません。むしろ値段は上がっていきます。絵にしろ、骨董にしろ、ポケモンカードにしろどんな物も同じですね。
よく刀の資産性という話が出ますが、実際に資産性がある(売る時に買った時より値段が高くなる可能性のあるもの)のはこうした突き詰めた愛刀家が欲しくなるような平安鎌倉期の生ぶ在銘の肉起きたっぷりした刀であり、その他で言えばあまりにも著名な村正や正宗、清麿、虎徹といった刀工くらい。
こうした刀工は刀は初心者だけど超お金持ちの人も欲しがる傾向にあるので値段が凄く高いです。
しかし突き詰めた愛刀家は平安や鎌倉期の生ぶに行くので意外にそれほど興味を持たない傾向も。(清麿あたりは別か)
そして旅も終盤に差し掛かると重い物が持てなくなったり目が悪くなったりで遠くが見え難くなるので短刀だけ残していく人が多い。
故に短刀の名品は回転率が特に悪い。(ただ生ぶ在銘品で残っているものも多い。これは長い時代懐刀として大切にされた時代があるからかもしれません)
因みに注文打ちが好きな方であったり、1振だけ買ってもう買わない、という方はこれに当てはまらないかと思います。
最後に値段感。

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