見出し画像

虚無僧と文学☆山東京伝作『昔話稲妻表紙』歌川豊国画

古本屋で「江戸」というワードのついたタイトルがつく本を、適当にとってはパラパラと頁をくって見ていたら、またもや虚無僧を発見。

偶然に虚無僧を見つけたのはこれで3回目。


前回、前々回はこちら↓



今回の本はこちら↓

『大江戸異人往来』
タイモン・スクリーチ著 高山宏訳


この本の内容は…、

「異人」の身体は、江戸時代の日本人にとって「思想の黒船」だった。人々は旺盛な好奇心をフル回転させて「異人」を見、イメージを膨らませ、描き残した。長崎出島のオランダ商館長がみな異様に太って描かれているのはなぜか。シーボルトの肖像画の余白からこちらを見つめる大きな目は何を表していたのか。「心臓」を見せる解剖術が大流行した世相の背景に何があったのか。鎖国といわれた時代を舞台に、「異人」=「他者」の身体との出会いと、彼らが携えてきた科学・技術の衝撃が、日本人に何をもたらしたのかを、江戸学の鬼才が抱腹絶倒のエピソードを重ねて語る、異色の美術史。



著者のタイモン・スクリーチ氏は、

ヴィジュアル・カルチャー研究の方法を導入し江戸学に新局面を開いた。

という人とのこと。



この本に載っていたのがこの絵。

江戸時代の外科医院の前で、虚無僧が門付けしている。


早稲田大学図書館古典籍総合データベース


この絵が描かれている本、『昔話稲妻表紙 むかしがたりいなずまびょうし』は1806年に刊行された。1806年刊行ということは、三代目歌川豊国、国貞の絵ですね。



昔話稲妻表紙 むかしがたりいなずまびょうし』とは、

読本。
山東京伝作。
歌川豊国画。
1806年(文化3)刊。
歌舞伎狂言や浮世草子《契情阿国歌舞伎(けいせいおくにかぶき)》(1730)で著名な不破伴左衛門と名古屋山三郎の抗争を,大和国守佐々木家のお家騒動のなかに持ち込んだ伝奇小説。山三郎と遊女葛城(実は不破の妹)の恋愛や,白拍子藤波を殺した忠臣佐々良三八一家が長く怨霊に苦しめられる因果譚などが,蟹満寺(かにまんじ)縁起その他本邦の昔話,民話を豊富に織りこんだ趣向によって語られ,複雑な筋立ての,京伝独自の幻怪華麗な物語的迷宮世界を形成している。何度も演劇化され,のちの歌舞伎狂言《鞘当(さやあて)》の原作となった作品で,曲亭馬琴の硬質な作風と対蹠的な,京伝読本の典型的な作風を見ることができる。
執筆者:高田 衛

改訂新版 世界大百科事典


山東京伝作です。


『京伝傑作集 』国立国会図書館所蔵


この絵の場面のお話の虚無僧部分抜粋↓

十三 霊場の熱闘
一人の虚無僧尺八の笛をとり。瀧おとしを吹きすまし此処にあゆみ来る。その後につきて腹巻に擘手こて臑楯すねあてつけたる捕手の人数。ぬき足しつゝ忍より時分よしとや思ひけん。前後左右をとりかこみ。一言の詞もなく、手々に十手を打ちふりて。からめとらんとかゝりけるが。虚無僧尺八を以てあしらひ。しばし打合ける所に。


佐々木桂之助扮する虚無僧が、「瀧おとし」を吹いている!


追われる佐々木桂之助が、この外科医に逃げ込み、捕り手たちが乗り込んでヒッチャカメッチャカになる場面がこの後に描かれています。



「五臓六腑をいろどりたる、神農の胴人形」



リアルすぎる模型…。
江戸時代の外科が怖すぎる。
看板も怖すぎ…。


障子に貼ってある「赤かうやく」は、赤色の膏薬のこと。

あか‐こうやく‥カウヤク【赤膏薬】
〘 名詞 〙 ( 「あかごうやく」とも ) 龍血樹(りゅうけつじゅ)の果実から採れる脂(やに)を加えて作った赤色の膏薬。傷口の血止めに用いた。

精選版 日本国語大辞典



こちらは、

本の冒頭にある登場人物紹介部分の佐々木桂之助(右側)

早稲田大学図書館古典籍総合データベース

佐々木桂之助国知 
       其角
七月や
 暮露ぼろ
  よび入りて
   ふえきく 
     又平妹阿龍

其角とは、
宝井其角たからい きかくのことで、江戸時代前期の俳諧師。


この頃は、虚無僧のことを「暮露」または「ぼろんじ」とも呼んでいた。職業的には全く別のものであります。


暮露についてはこちら↓


それにしても、タイモン・スクリーチ氏はよくぞこんなマニアックな方向から虚無僧の絵を見つけましたなぁ。


以上、
虚無僧と文学☆山東京伝作『昔話稲妻表紙』歌川豊国画

でした♪


いいなと思ったら応援しよう!

kataha
古典本曲普及の為に、日々尺八史探究と地道な虚無僧活動をしております。辻立ちコム活に投げ銭チップしていただけたら嬉しいです🙇