お腹の減らない方法☆コム活日記☔ある地下道にて。
生きているとお腹が減る。
尺八なんか吹いてたらさらにお腹が減る。
時々、コム活中に、お腹が減ったという感覚を強烈に自覚するということがある。
シャリバテというやつだ。
ちょうど劇団Pカンパニーによって公演された作・別役実の『招かれなかった客』『消えなさいローラ』2本立てを観た日のこと。
演出は冨士川正美氏。音楽は日高哲英氏のゴールデンコンビで、共にフリーの大道具の頃にとてもお世話になった人だ。
『招かれなかった客』
除名され仕事を失ったある神父は、無賃乗車で電車に乗り、適当に駅を降りて食事を恵んでくれる人が居ないか彷徨い歩く。彼は神父であるということが重要なのだった。ある招待状を持っていた神父は、魔女の住んでいる部屋を訪れる。そこでビスケットにありつくのだが…。
そしてもう一本は『消えなさいローラ』。
ただひたすら「待つ」ということをだけをしているローラ。もう何年も掃除をしていない部屋の中に落ちている食べ物のカスを探し出し、客人にあげようとする…。
2本ともお腹を減らしている人が登場する作品だ。
観ている時は身につまされる話だ…なんて思っていたが、まさにその登場人物と変わらず空腹であることを自覚する。
電車を乗り継いで何処かに恵んでくれる人はいないか彷徨い歩いている神父ならぬ虚無僧…。しかも雨の日だったので屋根のある場所を探す。
何か食べ物がカバンに入っているわけでもなく、空腹を紛らわす飲み物もちょうど無くなり、強烈に空腹を自覚しながら、でもせっかく来たんだから頑張ってみる。
力が入らないので、力がなるべくいらない曲をチョイスする。
紫鈴法あたりがいい。
筑紫鈴慕も力まず吹ける。
手向けもいい。
(最近、神田可遊氏から習うことが叶った)
逆に錦風流はコミ吹きでお腹が減る。
こんな事にも詳しくなれるコム活。
そんな時、誰かが立ち止まって聞いてくれたり、「頑張ってください」なんて一言声をかけてくれたりなんかしたら、急に忘れて元気になったりする。
人間のスイッチなんていい加減なものだ。
しかしながら、そんなに都合よく人は話しかけてこない。
いつか路上死だろうな…、
などと妄想も悪化する。
太平洋戦争に徴集兵として戦地に行っていた祖父は、究極に腹が減ると胃の中に髪の毛が入っているような感覚になると、母に話したそうだ。それ以外の事は一切話したことが無いらしい。
そんなことを思いだす。
髪の毛が入っているような感じではないから、まだ究極じゃないのか。
いつものように人々の薄い反応が、さらに空腹に拍車をかける。
もう疲れて目も開けられないくらいになっている時に、ふと目を開けると目の前に黄色い長靴を履いたこどもが立っていた。
お、チビちゃん聞いてくれるなら頑張るかと思ったら、急に元気になってきた。
…と、目を開けたらこどもはすぐに消えていた。
また幽霊か。
もしくは、腹が減り過ぎて幻覚か。
でも元気でてきたので、奥州三谷なんか吹いちゃえるぞ。
などと盛り返した。
吹き終わった時に、若い男性が声をかけてくれた。
おお、幽霊じゃない。
少し離れた場所で聞いていてくれたのね。
今のは一二三調・鉢返しですか?
おお、本曲ご存知で?
僕も尺八吹いてるんです。綺麗な音だったんで…。
嬉しいねぇ〜。
尺八吹きさんに声をかけられるのは、とても嬉しい。しかも若者。
いやはや、空腹はすっかり何処かにいってしまった。
嬉しさも空腹を満たす。
不思議なもので。
なにやら満足して帰路につく。
そして、Suicaを取り出そうと鞄の中に手を突っ込んだら、小さな丸い柔らかいものがあった。
そうだ!
三日前、尺八仲間の奥さんが亡くなったということで弔問に行って、お饅頭を一つ貰ったんだ。
忘れてた。
今日は最初にご冥福を祈って手向けを吹いたのだ。奥さんはクリスチャンだけどいいよね。
きっと、
まんじゅう忘れてるよ!
と教えてくれたのかな。
一先ず助かった。
要は、
備えあれば憂いなし
というやつでしょうか。
ん、
棚からぼた餅?
いや、なんかもっと気の利いたことわざ無いかな…。
地下道と小さなお饅頭の話でした。
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