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『良い』フィクションは良い影響を与えるのか?

 結論から言うと、残念ながらそうとは限らない、だと思う。
 少なくとも、再現性があるとまでは言えないだろう。

 再現性が無いということは、科学的な根拠はないということである。

 なぜなら、フィクションから何を読み取り、その中で表現されているものの中で何を重視するかは、人それぞれだからだ。

 ある人にとっては『良い』フィクションが、別な人にはそうでもない。そんな事はありふれていると思う。

 だいたいフィクションから悪影響を受けると言われる時、極めて感受性が鈍いか、読解力が著しく不足しているか、現実とは切り分けた上で何かを受け取るといった事ができずに、ダイレクトに本当の事だと受け取るなどのケースを想定しているように思う。

 そのような人々が、神・手塚治虫のたとえば『ブラックジャック』を読めば、あるいは古典的な名作とされる純文学を読めば、急に蒙が啓かれて良き影響『だけ』を受けるだろうというのは。

 少々甘いと言うか、権威のあるフィクションを高く評価し過ぎていると思う。

 フィクションの影響力を語る時、フィクションの側の良し悪しだけが問題にされる事が多い。しかし実際には、読む側見る側の受けとめ方の問題も大きい。

 フィクションをコントロールしても、それがイコール与える影響をコントロールすることにはならないのではないか。

 とは言え、一方では良し悪しというよりは、あまり偏り過ぎずいろいろ見たり読んだりしておくのは良い事だと思う。

 リアル店舗の書店や図書館で、少しだけ見てみるだけでも、何も知らずにいるよりははるかにマシだ。

 あるいは、AmazonKindleで古典的な名作とされるフィクションを少しだけでも読んでみるのもいいだろう。

 無料で読める青空文庫にも、古典的な名作はたくさんある。

 要するに栄養バランスと同じで「この食品だけ取れば良い」ではないと思うのだ。

 まあ私も、読んでいない、触れていない分野のフィクションはあるから、あまり偉そうには言えないが。

 個人的には、ジャンルとか権威とか一見きれいな感じの物語であるか、などよりもその作品の持つパワーが大事だと思う。

 どのくらいそのフィクションにパワーがあるのか、それは簡単に分かるはずである。

 それもまた個人差があり、その人にとっては他の人が読んだり見たりするよりも、大きなパワーを持つ事もあり得る。逆に小さなパワーしか感じられない事もあるだろう。

 もし仮に、フィクションから明らかに悪影響を受けたと思しきケースがあったとしても、それは必ずしもフィクションのせいだけとは限らない。

 他にも要因は考えられる。家庭環境、ストレス、教育歴、何らかの認知の歪み、など。

 であれば、こうした要因を直さずに、フィクションだけをいわゆる名作とされるものにしても、あまり意味があるとは思えない。

 と、これはあくまでも個人的な考えに過ぎない。もし、フィクションの影響力について、科学的な根拠のある話があるのなら、それについてはぜひ知りたいと思う。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。また次回の記事もよろしくお願いします。

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片桐 秋
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