『ブルーロック』23巻の感想
『ブルーロック』の感想に関しては、TwitterXに垂れ流したままのものが多く、前に16巻の感想をいきなり書いて、その後、巻ごとには書いてこなかった。
かなり飛んで23巻の感想となる。この巻にも、いろいろなエピソードが目白押しだが、ここでは『主人公』について語りたいと思う。
この『ブルーロック』の主人公は当然、潔(いさぎ)でしょう? と、みんなそう思って読んでいるはずだ。
これだけキャラが多いと、必ずしも一番応援しているのが主人公とは限らない読者もいるものだが、そんな場合でも、主人公はあくまでも潔であって、他は主人公ではないと思っているはずである。
今回の話は、そのあたりを割とメタ視点的に扱う。潔自身が、『主人公である視点』について語るのである。
端的に言えば、『誰もがその人の人生において、主人公である』という話なのだ。
たとえば潔から見て、相手チームの千切は「共にブルーロックでの戦いをくぐり抜けた仲間であり、かつてはチームメイトでもあり、世界一のストライカーを目指すライバルでもあり、今は敵チームのメンバー」である。
そうやって、自分を中心に相手を見ているわけですな。千切に限らず、誰に対しても。
で、今回のエピソード『主人公の視点』とは、『相手も自分自身を主人公と思って行動している』と認識し直すことなのだ。
そうすると自分中心の視点から解放されて、本当の相手の考えが分かるようになる。たぶん、ここで初めて、潔は相手を真に理解したのだと思う。
で、理解できたから相手の考えや行動が読めるようになる。
ゴール前まで敵チームの選手をかわして進み続けることができたのだ。
結果どうなったか、詳細には書かない。結論から言うと、潔のおかげでチームは勝利する。
誰が相手であれ『自分にとっての◯◯』といった捉え方をしているうちは、本当に相手を理解したことにはならない。
そこにはバイアス、あるいはフィルターが掛かってしまうからである。
『相手の人生では、その相手が主人公。自分が主人公なのではない』と分かった時に、本当に相手を理解できるのだろう。
その人が、「自分ではなく、自分の尊敬する人が主人公であるべきだ」と考えるようなタイプでも同じだ。
おそらく、『魔術師』の異名を取るMFであるネスは、そんなタイプであろう。
彼もまた、『自分の尊敬する人が主人公であるべきだ』と考えている、彼自身の人生の中での主人公なのである。
誰かを主人公にすることは、できても、彼の人生は彼自身にしか生きられないからである。
ネスが主人公にしたいのは潔ではなく、潔が自分の上位互換だと見なすカイザーのほうである。
潔のおかげでチームは勝ったが、カイザーにパスを回すのを拒み続けた潔をネスは認めることができない。
シュートを外しちゃった元チームメイトと違って、ネスはかなりの実力者である。
だから、潔のすごさが分からないから、非難するのではない。
まあ、そんなこともある。
カイザー自身は、ようやく上から目線な態度を止めて、対等なライバルとして認めてくれたようであるが。
正直なところ、最初読んた時には「コーチのノエル・ノアもカイザーではなく潔を認めたのに、まだそんな事言ってる!」と思ってしまったが、「ネスの立場からすれば、こうなのでは」と、他の人たちから聞いた意見もある。
それについては省略する。
まあ、「潔だけでなくそれぞれが主人公なんだよ」とする23巻のラストにふさわしいとは言えるかな。
次の24巻ではどうなるのか、また読むのが楽しみである。
ここまで読んでくださってありがとうございました。また次回の記事もよろしくお願いします。