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復讐の女神ネフィアル 第5作目『愚かな商人』 第5話

「出してあげてもいいわ。飛び切りよく効くのをね」
 キバリノ神官は艶やかに笑う。余裕を見せようと考えてもいるのだろう、とアルトゥールは思う。
「いいや、けっこうだ。それより聞きたいことがある。答えてくれるなら、だが」
 羽ばたきは聞こえなくなった。どこに消えたか、潜(ひそ)んでいるかは分からない。

 この時アルトゥールは、昔に友人から言われた言葉と、自分が返した言葉を思い出していた。

──君は僕に世界を改革しろと言ったな。

 信念を持って前に進むには、何かや誰かへの信頼が必要だ。確固として信じられるものがあるか? 
 肝心なのは、それが自分にとってだけでなく、他の人たちにも有益であると心から信じられることだ。
 信じなければ迷いに、信じれば独善となる。
 我々は、どうすればいい?

──僕は過去の英雄のように、誰かや何かを道連れにして、破滅への道を歩むなんて御免だね。

──だが君は世界を見捨てて隠遁(いんとん)した生活を送る気もないようだな。

──僕の力の及ぶ限りは何かしらをやっていくさ。残念なことに、僕の力の及ぶ範囲は、君が思うよりずっと小さい。

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