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復讐の女神ネフィアル 第4作目 『孤島の怨霊』 第2話
アルトゥールが壁の中に入っていくと、そこには赤い空の上だった。雲もまた茜色(あかねいろ)に染まっている。その茜色の雲の上に出た。今、その上に乗っていた。
「どうなっているんだ。そこは本当に、あの雲の上なのか?」
背後からリーシアンの声が聞こえる。
「さすがに雲の上に乗るのは無理みたいだな」
「おいおい、じゃあどうやって先に進むんだよ? 《法の国》にはお前の方が詳(くわ)しいはずだ。何とかしろよ」
「そうだな、一つ考えられるのは幻術を使っているのではないか、だな。茜の空も雲も幻」
アルトゥールはひざまずく。メイスを使って、雲を上から叩(たた)いた。硬い金属的な音がする。念のためさらに強く三回。やはり、硬い金属と金属のぶつかる音が響く。
「やはりな」
アルトゥールはそうつぶやくと、振り返って、壁の向こうに残る二人に声を掛ける。
「大丈夫だ。雲の上にも乗れそうだよ」
もちろん冗談だが、雲も茜の空も幻影であり、その下には鉄板の床がある。それは確かであろう。
「私から行きます。私はお二人より軽いから、私が下に落ちそうになったらすくい上げてください」
クレアはそう言って、自分も壁をくぐろうとした。アルトゥールは彼女に手を貸し、自分が立つところまで招(まね)く。
クレアは茜の空の上に立つ──ように見えた。
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