フィクションにおける緊張感
TwitterXに流したポストの転載と、一部加筆修正である。
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フィクションの中のキャラクターが、適度に矛盾を抱えているのを示すのは、作品内に適度な緊張感をもたらす。
これまでも述べてきた通り、適度な緊張感は、それを好む読者のためには欠かせない。緊張感を出すやり方はいろいろあるが、矛盾や謎を仕込むのはその一つである。
たとえば普段は確固たる信念の持ち主として振る舞うが、時には悩んだり葛藤したりする姿も見せる、などだ。
よく、男性をメインターゲットにしたフィクションでは、主人公を悩ませるなと言われるのだが。
たぶんそれは、緊張感がなくなるような悩ませ方をしているからだと思う。
なんか、課題に積極的に立ち向かう気がなさそうだったり、他の人の助けを持っている風だったり。
そんなふうに、リラックスというよりは、だらけた感じに物語の雰囲気がなってしまうから、良くないってことなのだろう。
逆に言えば、緊張感を高い水準で維持できれば、悩ませていてもいいのではなかろうか。
明確な敵のいるバトルシーンで一進一退になるように。
明確な敵はこの場にはいないが、困難な状況そのものとの戦いみたいに書けたらいいのだと思う。
あとは葛藤させるなという意見もあるが、これはたぶん、リラックス型の作風について言われた話だと思う。
主人公が葛藤すると、葛藤するような状況があると、当然、多かれ少なかれ緊張感が生じるため、リラックス型のフィクションでは良くない。
それ以外にも、謎や矛盾がなく、全てが明快であるのはリラックスをもたらす。それはそれでフィクションのあり方である。
ところで緊張感型のフィクションにも、緊張感の度合いは様々ある。
緊張感高めに推移する場合、ラストでも解決し切れない問題を残して、ある程度は緊張感を維持する場合が多い。
例を挙げてみよう。
・主人公は次の事件や新たなる挑戦に挑む、でラスト。
・七割か八割は解決するが、解決し切れない要素を提示して余韻を残す。
・謎を残したまま終わる。
・主人公の言動や人柄に、矛盾や葛藤を示し、それが完全には解消されないでラスト。
他にもあるかな?
緊張感高めの物語が、ラストになって全解決ですっきり! だと、急にリラックスモードになって、落差が大き過ぎ、かえって快にならない場合もある。
それに、そもそも緊張感が好きだから、ことさらに緊張感が高めのフィクションを見たり読んだりしてるのですな。
ラストで緊張感低めにはなるが、完全にはリラックスさせないまま終わるやり方は、けっこう一般的である。
最初から緊張感低めでストーリー展開してきたなら、完全に解決して、リラックスでも良し。
『スラムダンク ザ・ファースト』でも、ラストまで緊張感を維持する手法が使われていた。
主人公サイドが勝ってめでたしで終わるのではなく、今度は負けた相手チームメンバーに焦点を当てて、余韻を残す。そんなラストになっていた。
ちなみに、莫大な興行収入を叩き出した映画は、何度もリピートして観る人が多いからそうなるらしい。
だからまあ、そういうことなのだろうなと。
さて、では今回はここまで。
読んでくださってありがとうございました。また次回の記事もよろしくお願いします。