復讐の女神ネフィアル 第2作目《子爵令嬢の図書館》 第2話
テルミナールは冷静な素振りで語り出した。アルトゥールにも、依頼人は内心でも冷静でいるように見えた。
魔族の血を引く青年は、このように語った。
──貴族である子爵令嬢クレアが、この都市に私設の図書館を建てた。すべて私費によるものだ。爵位は低く当主にも非(あら)ねど、彼女の家は大変裕福で、クレアにも相当な財産が分与されている。
その図書館は、『クレア令嬢の図書館』と呼ばれた。今見られるように大きな図書館として完成するまでには、五年の歳月を費やした。少女であった令嬢は、今や大人になっている。際立って美女とまでは言えない。気品と知性があり、将来有望な貴婦人だとはよく言われていた。そうした評判は、クレアが少女の頃から変わらないままだ。
所蔵は地下倉庫に多く保存されている。地上階にある書物は、全体の一割程度だ。地上階の建物は本を読むためだけでなく、平民たちの憩いの場として開放されているからである。二階に行くには、平民用の一階とは異なる入り口があり、そこは貴族しか入れない。所蔵されている本も、平民の目には触れないようにされていた。
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