『ラブクラフト全集1』から『死体安置所にて』の感想
創元推理文庫から出ている文庫本です。創元推理文庫からは推理小説だけでなく、ファンタジー、SF、ホラーと、多様なる小説が発売されています。
訳者による紹介では「ラブクラフトの知られざる一面を垣間見せる異色作、ブラックユーモア」だそうです。
確かに他の短編に比べると読み味があっさりしていて、軽妙さがありますね。
主人公バーチは墓守で、遺体を埋葬する仕事をしています。その仕事でいろいろ良からぬ事をしでかしているのも、それとなく暗示されます。
そんな行為の報いを受けるかのように、死体安置所の中に閉じ込められてしまい、何とかして脱出しようとするのですが……といったお話です。
悪人ではないけれど善人でもない、主人公の書き方にとても現実味を感じました。このようにリアリティを持たせたので、恐ろしさや不気味さも上手く伝わるわけですね。
本当にその場を見ているかのような臨場感、リアリティを感じさせるのは本当に上手いなと思います。
復讐心の強かった死者の埋葬、主人公バーチのいい加減な仕事ぶり、棺のすり替えなど、いくつかの伏線とその収束のさせ方も非常に上手くまとまっていて素晴らしいですね。
いわゆるクトゥルフ神話大系の中には入らない小品ですが、読みやすくて良き一品でした。
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