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手術直後

手術当日

朝7時半、荷物を整理し手術着に着替え、家族とお別れ

別れ際に半ば冗談で「先立つ不孝を・・・」と言ったら母親は冗談言ってないで!と突っ込みをしてきたが、妻はその後ろで非常に真っ青な顔をしていた。そんなにマジに受け取るとは思わなかったよ。ゴメン。


朝8時、全身麻酔。麻酔医に言われるままに酸素マスク越しに深呼吸。すると強制的に眠りに落とされる感覚を覚える。ラリホーって最強の魔法だと思いながら、そのまま闇に。その後は意識無いので不明。


夜9時、手術終了(らしい)家族と再会したらしいが私の意識は無いので何も覚えていない。妻いわく「死体の様な顔色していた」そうで、ここでも妻の心労が重なってしまう。

ここ、前振りで後々、大きな事件を巻き起こす。



夜中、たぶん11時頃、医者の呼びかけで意識が戻る。
まずは人口呼吸機を外し酸素ボンベに切り替えを行った。
この時の気持ちは、インフルエンザで倒れている目覚め最悪の時に、胃カメラの数倍サイズのでかい管を抜かれた感覚。

一言で表現すると「最悪」


熱が出ている事を自覚。看護師さんやお医者さんの会話は朧げながらに理解するが応答はほぼできない。意識はあるけど体は動かない。

生きて戻ってこれたんだな、という感慨も感想も何も考えられない。無我の境地ってこんな感じかなと今更ながらに考える。

一瞬の事ですが、どうやら私は悟りを開いてしまったらしい


手術後1日目

朝なんだか夜中のままなんだか?

一時期の悟りモードが途切れ、脳内に煩悩という名の思考能力が復活してくる。

まず、感じた欲求は「水が飲みたい」。

これね、酸素ボンベが延々フルパワーで乾いた空気をひたすら流してくれてる。+全身麻酔した前日から体内への水分補給などは点滴経由で行っているけれども、喉は水分を一切感じていないのです。

なので、とにかく喉が渇いて仕方ない。

「看護師さんを呼んで水を飲ませてもらう」ミッションが開始される。

まず声を出してみるが、とにかく息苦しくてかすれた小さな声しか出てこない。

次にナースコールを押そうとしたが、どうやら体がまだ全然動かせない。手首、足首位は動かせるが、手を上げる。首を振る。こんな事すら出来ない。

両手首を動かしてナースコールを探すものの、見つからない。

ミッション失敗かと思いきや、どうやら看護師さんの方が俺がモゾモゾと動いている事に気付いてくれて寄って来てくれた。ありがたい。

そして、水を脱脂綿に含ませて「末期の水」の様に飲ませてもらったけど、これがホントにオーバーな表現でなく、人生で一番おいしい水だった。

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その後、自分自身の状態を確認する。

身体が動かせる範囲は前述の通り手首・足首程度。両手首には点滴、特に左は2か所から管が出ている。

下半身は、ち〇ち〇に管が刺さっているのを感じる。こいつが常に残尿感を感じさせてくれる厄介な代物だった。

そして腹部からチューブが2本。お医者さんの説明によれば、余計な水などの排水らしい。また、心臓に細い針金のようなものが3か所付いており、その針金のようなモノが体外に伸びている。これは何かあった時に直ぐにペースメーカーに繋げられるように準備されているそうな。

次に首。ここからも点滴+カテーテルが刺さっていた。カテーテルは心臓の大動脈付近まで入ってきており血流を常に監視しているようだ。

これが自分で感覚として感じ取る事ができる。自分の血管内の血流を川の流れに例えると、川のど真ん中に大きな岩が設置されて左右に別れて流れていく感覚。常に微妙な違和感を感じ取れる。

後は心臓。今回、心臓出口の大動脈弁を機械弁に切り替えたワケだが、この機械弁「微妙に音が聞こえる」

例えると静かな部屋の中で、掛け時計の秒針が「カチッ、カチッ」とリズムよく音を鳴らす。これにそっくりです。

退院後の話になりますが、この音は自分だけに聞こえてるかと思いきや、隣で寝付く妻にも聞こえるそうです。

この音を聞いて自分がサイボーグ化された事を実感。

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後はこの時期、ひたすら熱っぽい。定期的に体温測定しますがだいたい39℃~40℃程度。なので常に意識朦朧とした感覚で過ごす事になります。


この日から早くもリハビリが開始されます。

まずは身体を起こして、食事をとる事から。

身体を起こすのはベットのリクライニング機能で何の力も入れずに起こされます。なのでここに関しては何も苦労しません。

ですが食事に関しては、お粥と云えども中々咀嚼する事が出来ない。

酸素を外してその隙に食べるのですが、息切れが本当にひどく会話すら片言でしか発話出来ない。酸素を外すと一気にエベレストの山頂に連れていかれたかと思うほど息苦しさが増す。

そんな環境で飯が喰えるか!って感じで一口二口程度食べて、食事終了しました。


つづく



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