外国人にワクワク楽しく働いてもらう為に (2) 受け入れ側の「郷に入れば郷に従うべし」は機能しない?
このnoteでは、外国人労働者の受け入れを検討されている中小企業の皆様が、外国人労働者に働きがいを感じてもらいながら生き生き働いてもらえるような環境を作る為のお手伝いをさせて頂いています。
前回は、外国人との比較において日本人の方が(社会が暗黙裡に共有するものが多いがゆえに)かなり特殊なんだというお話をしました。
今回は、昔海外に働きに出た頃のことを思い出して、絶対的マイノリティーになるってどういうことか、私は「郷に従えたのか」についてお話ししたいと思います。
中東での海外初体験で起こったこと
言葉も文化も全く異なり土地勘もない街に行って、何が起こったか?
私の最初の海外赴任は1988年社会人3年目25歳で行った中東の某国の首都でした。当国では「イスラム教に根差した法律・ルールが多く、それを取り締まる宗教警察があり違反した場合の罰則も非常に厳しい」と先輩から聞いていましたので、初めて赴任する私はイスラム教のルールなどを本でしっかり勉強したつもりでしたが、それでもひやりとすることがありました。
帯同した妻が巨大なスーパーマーケットの奥まった売り場で男性に抱き着かれそうになってしまうという事件が発生。私もそこにいたのですが、日本での買い物のようなつもりになってしまい、ちょっと目を離した隙の出来事でした。幸いにも気が付くのが早かったので、事前に防ぐことができました。
その後、現地でできた友人にその話をしたところ、そのことには同情してくれたものの「この国で女性を一人にしてはいけない。それは群れからはぐれた羊と同じで、何かあってもそれは羊飼いの責任なんだよ。」と言われました。「そんなおかしな理屈があるかい」と私は思いましたが、彼によると「それがここでの夫たる男性の責任なんだよ」と教えてくれました。
ちょっと極端な話になってしまいましたが、それくらい海外での生活では知らないことだらけですし、知っていたとしても「そこまで気を付けなければならないとは想像していなかった」というようなことが起こるものです。
じゃあ日本はどう?
では、目を転じて、御社にはるばる東南アジアから働きに来てくれる外国人労働者の皆さんにとって日本での生活はどうでしょうか?例えば、こんなことが起こるのではないでしょうか?
本国でやっていたように分別しないでゴミを出したら怒られた。分別って何のためにやるの?
8時に来てくださいって言われたから8時に行ったら、10分前に来るのが常識って怒られた。ならどうして10分前に来てくれって言わないの?
作業の指示をうけたので、きちんと指示通りにやっておいたのに、「終わったと報告がない」って怒られた。ならどうして終わったら声掛けてって言わないの?などなど
日本の人々が色々な面でルールに厳格だという認識はあったとしても、個々のケースで具体的にどうするべきかまで分かっていないと、実際に行動に移すことはできませんよね。日本人が日本人に対して思うような基準で、期待した通りにできなかったからと言って、「この外国人はだめだ」と無意識のうちに決めつけたりしていないでしょうか?
前回も申し上げましたが、日本人同士では言わなくても分かる暗黙知や行動規範が数多く共有されていますが、外国人労働者の皆さんは当然それを知りません。わざわざ遠く日本まで働きに来てくれた彼らに対して、我々はきちんとそうしたことを説明をしているでしょうか?
当然、本国での送り出し機関や監理団体(技能実習生の場合)、登録支援機関(特定技能の場合)の皆さんがオリエンテーション等で教えてくれていることも多くあるとは思いますが、実際に体験してみないと「ここまで厳格だとは思っていなかった」ということも起こるでしょう。
そこに来る側の人たちが「郷に入れば郷に従おう」と順応しようと努力することが基本だと思いますが、受け入れる側も「郷に入れば郷に従うべし」と突き放すのではなく、何が常識なのか、仕事はどのように進めるべきなのか、この会社では何を目指してどんなやり方でそれを実現しようとしているのか。日々何をすれば彼らの目指す将来の夢に近づけるのか、などなどを腹落ちするまで詳しく明確に説明してあげる、つまり双方が歩み寄りながらお互いがストレスなく過ごせる環境を作ることが重要なんじゃないかなと思っています。
じゃあその為にはどうすればいいのか、過去の海外での経験も踏まえつつ、次回からその具体的な方法について一緒に考えていきたいと思います。