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【散文】群れの内と外

土手の草地に、シロツメクサが咲いていました。たくさんの白い小さな花が、長い首をのばして、ゆらゆらと、風に吹かれていました。揺れている白い花にさそわれるように、花から花へと、幾匹ものミツバチが飛び交っています。ミツバチは、細い花びらの中に暫く潜りこんでは、また次の花へと、渡り歩いているようでした。
ふと、群生するシロツメクサのはずれに目をやると、そこにも、ぽつんぽつんと、まばらにシロツメクサが生えていて、小さな花を咲かせていました。土が硬いせいでしょうか、そうしたシロツメクサは背が低くて、花の咲き方も貧弱です。茎が短いせいでしょうか、花は、風に吹かれて淋しげに、震えているようでした。それでも、一見、みすぼらしく見える花にも、ときどき、ミツバチがやってきて、花びらの中に潜りこんでいるのでした。
たくさんの咲き乱れた花の群れには、たくさんのミツバチがやってきます。一方で、群れのはずれの花には、ときどきしかミツバチがやってきません。でも、集団の花にやってくるミツバチも、ひとつひとつの花に潜り込むのは、ときどきでしかないでしょう。群れの中で咲いていても、群れの外で咲いていても、ミツバチの訪れは、ときどきで、案外変わらないのかもしれません。


©2023  Hiroshi Kasumi

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加澄ひろし|走る詩人
お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。