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【詩】暮れ

川のむこうの、遥かな先に
山がならび、かさなっている
濃く薄く、深く淡く、シルエットが
薄暮に浮かんで、延々と連なっている
夕陽の茜に、染まっている
その上を、雲と雲が重なり合って
奥へ奥へと流してゆく

ひとときの、空の眺めは
きまぐれな、そのとき限りの幻だ
風と風がすれ違い、絡みあって
虚空に残した霞みの波を
やわらかな、形確かな姿に見せて
光で照らし、影で色どる

稜線が、静かに暮れてゆく
雲の景色は、暗い空に沈んでゆく
やがて、空も山も、雲も風も
もろともに、漆黒の闇に包まれ
眼差しを、ふさがれてゆく

©2023  Hiroshi Kasumi

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加澄ひろし|走る詩人
お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。