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【詩】土のにおい

ひしめく家なみの
歩くさきに垣間見る
黒い畑地のひろがり
雪解けの
やわらかな畝の寝床
静まりかえる
繰り返す起伏を
越えていく風は冷たく
日ざしはまだ低い

武蔵野の関東ローム
握りしめた土のにおいに
ぬくもりが宿る
ぬかるめば
無邪気に汚して
飽きもせず
泥のだんごをならべる

やがて黄色く乾いて
ひび割れる
ざらつく指と
はりつく皮膚の痛み
茫漠たる土ぼこりが
鼻腔を突く
涙をわななく

命の風が吹くだろう
そこにあるはずの
ナノハナのつらなり
舞いおどるモンシロチョウ
葉陰に息づくアオムシ
赤く透きとおるミミズ

褐色の揺りかごは
息をひそめて
めざめの予感に
うずいている


©2023  Hiroshi Kasumi

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加澄ひろし|走る詩人
お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。