![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/78833928/rectangle_large_type_2_84d1859a536b2c2822118d6a1ad1948c.jpeg?width=1200)
【詩】たまらん坂
たいらな町で育った
町はずれに、坂があった
そのむこうは、知らない人の住む
知ることのない道
たいらな町で育ったせいで
世の中は、たいらだと信じていた
坂は、町のはずれだった
そのむこうに、行くことのない
行こうともしない道だった
むかし、坂をのぼる荷車が
たまらん、たまらん、と
悲鳴をあげたという
細くて、暗い坂だった
そのむこうを、見ることのない
見せようとしない道だった
町のはずれの、坂のむこうは
たいらでない、罪深さへの入口だった
おとなになって
たまらん坂のむこうで、生きている
坂のむこうは、たいらでない
曲がりくねった道だった
たいらな町で育ったせいで
世の中は、たいらだと信じている
坂の下の、たいらな町を見おろすたび
起伏を知らず、生きていた頃の
まなざしを、みつめている
たいらに生きる罪深さが
たまらん、たまらん、と
こみあげてくる
©2022 Hiroshi Kasumi
![](https://assets.st-note.com/img/1652884150181-snQQleYDUZ.jpg?width=1200)
いいなと思ったら応援しよう!
![加澄ひろし|走る詩人](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/73406584/profile_542325a12e6f1a3c7bef5723d1b3cb98.jpg?width=600&crop=1:1,smart)