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【詩】たまらん坂

たいらな町で育った
町はずれに、坂があった
そのむこうは、知らない人の住む
知ることのない道
たいらな町で育ったせいで
世の中は、たいらだと信じていた
坂は、町のはずれだった
そのむこうに、行くことのない
行こうともしない道だった

むかし、坂をのぼる荷車が
たまらん、たまらん、と
悲鳴をあげたという
細くて、暗い坂だった
そのむこうを、見ることのない
見せようとしない道だった
町のはずれの、坂のむこうは
たいらでない、罪深さへの入口だった

おとなになって
たまらん坂のむこうで、生きている
坂のむこうは、たいらでない
曲がりくねった道だった
たいらな町で育ったせいで
世の中は、たいらだと信じている
坂の下の、たいらな町を見おろすたび
起伏を知らず、生きていた頃の
まなざしを、みつめている
たいらに生きる罪深さが
たまらん、たまらん、と
こみあげてくる

©2022 Hiroshi Kasumi



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加澄ひろし|走る詩人
お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。