【詩】ぬくもり
冬の川面は浅く、川床に張りついて
鎮んだ水鏡の中を、対岸の車が行き交う
気まぐれなさざ波が、水面を揺らして
水鳥の航跡が、風を追いかけてゆく
土手は、静まり返っている
河原の広場で、ボールを追う少年たちの
叫び声が、空に抜けていく
藪に遊ぶ鳥の声も、遠い街角の騒めきも
のみ込んで、蒸発してゆく
寒さは息をとめて、陽溜りに休む
翼をたたみ、弛緩して、うずくまる
遠い山なみが、靄にかすんで
眼差しは、行くあてもなく泳いでいる
この静かなひとときを、分けてあげたい
この何もない幸せを、届けてあげたい
襟元を開け、両手を伸ばして
届けてあげたい、あの日のわたしに
©2023 Hiroshi Kasumi
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お読みいただき有難うございます。
よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。