【詩】落涙
雨あがりの くだり坂を
風が 力まかせに駆け降りてくる
春をうながす 烈しい息吹きに
樹々は 容赦なくおそわれている
千切られて 枝をはなれた無数の葉が
煽られて 転がりながら
繰りかえす 殴打を浴びて
我もわれもと 斜面をすべる
背中にしょった おもいの丈を
渇いた声で 吐き出しながら
坂にまかせて 堕ちてくる
ちりぢりに ばらけて
渦巻く 奔流の行く手に
待ち伏せるのは 絶望だけだ
どのみち 吹きだまりに身を寄せて
萎びて 朽ちてゆくのだから
樹は くびを大きくよじらせて
風のしわざを やり過ごす
夥しい 墜落の坂道を
夕陽の赤みが 駆けあがっていく
©2024 Hiroshi Kasumi
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お読みいただき有難うございます。
よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。