【詩】尺蛾(キオビエダシャク)
黒い羽に黄色い帯の模様をまとい
小さいアゲハをよそおって
夏の真昼を舞っている
風にゆらめく羽ばたきは
舞姫を偽る毒虫なのだ
イヌマキの芽に
産みつけられたイモムシたち
夥しく よだれを垂れて
喰い荒らし 化身の跡には
枯れた骨格が剥き出しにされている
ひなたは湯気をあげている
南国の種は 星の加熱に乗じて
繁みにはびこり せわしなく
増殖の宴をくりかえし
手あたり次第 蹂躙してゆく
いずれ 通り過ぎる踊り子だ
風のすき間に身をくゆらせていく
©2024 Hiroshi Kasumi
お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。