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【詩】雨の予感

雨が降ってきそうな朝
今日は出かけない、と決めて
傘を、引き出しの奥にしまった
今日は家にいよう、と決めて
靴を、押し入れの奥から出した

泣き出しそうな空のむこうで
日ざしが手さぐりしている
分厚い雲のすき間から
いたずらな目で、舌を出す

雨が降ってきそうな朝
洗濯物をあきらめて
冷凍ケースに入れてみた
ノートを一冊取り出して
電子レンジで解凍した
珈琲豆をやすりで挽いて
弾けるソーダでドリップした
リーフをトマトでトーストして
チーズの海に放りこんだ

雨が降ってきそうなせいだ
今日は家から出ない、と決めて
本を額縁に飾っておいた
今日は外には出ない、と決めて
米を研ぐのをやめにした

蜘蛛の網が大地を覆う
蛇の抜け殻が通りぬける
色あせた眺めのあちこちで
明滅を繰り返す蛍たち
風のにおいは、きまぐれだ
飛ぶ鳥も、とまり木を見誤る
波を漂う小舟にのって
確かな行き先をさがしている


©2022 Hiroshi Kasumi

お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。