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【詩】空の向こう側

大地の果て、大空のたもとで
水平線が、口を閉じている
見下ろす岸辺の、遥かな先に
黒々と、影のように光っている
その上で、のんきに浮かんで
行儀よくならぶ、白い雲
青々とかがやく空に
眩しすぎる陽の光

晴れ渡る真昼の空は
作為のない奇跡の眺め
風が描く雲の模様は
気まぐれに吹く大気の軌跡
その場かぎりの気圧のまぼろし
日ざしに浮かぶ刹那の影絵だ

風は、どこからとなく訪れて
どこへとなく、消えてゆく
風と風のぶつかり合いが
その時かぎりに、すれ違う

見えない空のむこう側で
今日も、嵐が吹き荒れている
出会い頭の風と風が
すれ違い、ぶつかり合い
破れた空から、鉄の礫が降り注ぐ
謂れもなく脅かされて
農夫は鍬を、漁夫は網を奪われた

火を噴いて、暴れているのは
その場かぎりの、恐れと憎しみだ
怒り、哀しみ、恨み、諦らめ
懸命に、正義の鐘をたたき合う
腕に力を込めるほど、悲鳴をあげて
顔を歪め、やがて割れてしまう

なぜ、空はこんなに青いのだろう
どうして、こんなに眩しいのか
嵐は、なぜ起こるのだろう
何のために、起こすのか


©2023  Hiroshi Kasumi

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加澄ひろし|走る詩人
お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。