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散文詩

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2019年7月の記事一覧

亡き祖国の詩

美しき哉
愛ゆえに平原の草草は風に揺れ
遥かヒマラヤの雪深き山々に我々の詩を運び聞かせる

三つ束の矢よ
我ら家族の結束を星々に刻め
その愛に満ちた目鷹に似たりて
美しき哉

美しか哉
決意ゆえに氏族の旗は風に揺れ
遥かキエフの城にも我々の怒りを響かせる

三つ束の矢よ
我らの血を彼の大地に刻め
その高貴なる爪鷹に似たりて
美しき哉

美しき哉
希望ゆえに子は母の胸に揺れ
遥か星の降る時までこの歌

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神よ!

神よ!
どうしてあなたは
ガーベラの咲く花園に
彼女を一人残したのか

神よ!
おかげで私は
アスファルトを宛もなく
思い出を求めて歩かねばならない

「さようなら!」
溌剌とした声に振り向けば
花園の戸は閉ざされるその時であった

それが何を示すかも分からず私は
ぎこちなく笑顔を返すだけだった

神よ!
せめてあの戸を叩かせてくれ
叩かせてくれさえすればそれだけで
それだけで私は十分なんだ

対なるもの

対なるもの

河原のチガヤと自転車

補習ノートとガリガリ君

溶けた氷と背骨のくぼみ

サバの頭と転んだ箸

威勢のよいセミと夏のすべて

対なるもの

河原の鉄橋と自転車

サボったプールとガリガリ君

脂汗と背骨のくぼみ

甲子園ラジオと箸の一方

忘れた嫌悪と夏のすべて

対なるもの

河原の鉄橋と一万円

サボったプールと腕の痣

脂汗と喘ぐ息

甲子園ラジオと日常

忘れた嫌悪とカラス

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備忘録a、薄いピアス

 私は何者で、どこから来て、どこへゆくのか。
 待ちゆく人も同じである。どこから来て、どこへゆくのか、我々は徹底的に無知である。

 しかしながら、私達は出会う。出会うとそこには事実が生まれ、事件が起こり、その時初めて我々は感じる。

「生きているのだ、確かに、この時を。それだけは、疑いようのない…」

 今朝の夢で新たに知ったことが2つあった。唇にあけた薄いピアスに触れた時の危うい愛おしさ。そし

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