マガジンのカバー画像

雫水

13
運営しているクリエイター

#詩

電脳街案内板、まだ目の覚めている君へ

僕らはいつだって、ぼんやりとした硬さの石を頭に抱えながら、忘れたふりして生きている。偏頭痛の電流が、たしかにその不安が眠っている場所を教えてくれる。

∴∴∴電脳半身浴∴∴∴

いんたーねっと中毒者の君へ

この世界は全部酸素不足で

息苦しさに終わりはない

この海へおいで

どうせなら甘い煙の中で

溶けてしまおう

 むかしむかし、街には掲示板があった。電信柱があった。高架下に落書きがあった

もっとみる
僕だけの思い出

僕だけの思い出

昔住んでいた町の
自転車で少し行ったところに
大きな池のある公園があった
中学にあがって僕は引っ越したから
君と出会ったのはずいぶん後になるけれど
どうしてか、一緒に歩いた思い出がある

君の姿は高校生で
出会ったばかりの少女の君で
とびきりの笑顔で僕の横にいる
遠い、古い写真のような温かい思い出

本当の思い出も僕だけの思い出も
もうどちらも手が届かないのだから
そっと抱かせておくれ

あと少し

もっとみる

亡き祖国の詩

美しき哉
愛ゆえに平原の草草は風に揺れ
遥かヒマラヤの雪深き山々に我々の詩を運び聞かせる

三つ束の矢よ
我ら家族の結束を星々に刻め
その愛に満ちた目鷹に似たりて
美しき哉

美しか哉
決意ゆえに氏族の旗は風に揺れ
遥かキエフの城にも我々の怒りを響かせる

三つ束の矢よ
我らの血を彼の大地に刻め
その高貴なる爪鷹に似たりて
美しき哉

美しき哉
希望ゆえに子は母の胸に揺れ
遥か星の降る時までこの歌

もっとみる

備忘録a、薄いピアス

 私は何者で、どこから来て、どこへゆくのか。
 待ちゆく人も同じである。どこから来て、どこへゆくのか、我々は徹底的に無知である。

 しかしながら、私達は出会う。出会うとそこには事実が生まれ、事件が起こり、その時初めて我々は感じる。

「生きているのだ、確かに、この時を。それだけは、疑いようのない…」

 今朝の夢で新たに知ったことが2つあった。唇にあけた薄いピアスに触れた時の危うい愛おしさ。そし

もっとみる

それに気づかぬ亡者である君に

恋は幻想であることは自明である。

すべてのものが恋を経験し。その後に2つの解釈を得る。即ち、「幻想などいらない」「幻想でも構わない」だ。

話はさらに愛へと飛ぶ。論点を先に言えば、ここで述べるのは恋と愛の違いである。それは、恋は幻想そのものであり、愛は幻想の“産物”であるという点だ。
君は幻想を抱かされる。誰に?“誰かに”だ。親、兄弟、友人、クラスメイト、教師、同僚、価値のない創作物たちに。一人

もっとみる

礼拝

我が主人よ
三帰三礼をもってその御名に応えます
三界への招福と光なき者共への許しを
ここに願います

我らが主人よ
固き誓いと日々の礼節をもってその祝福に応えます
御名の下にある王国に招かれることを
ここに願います

我らが主人よ
この身この心は主人の為に
心ばかりの安寧と慈悲をここに願います

淵をなぞる

私たちは言葉を使う。言葉で歓喜を発露し、言葉で嘆きを吐露する。
言葉は唯一の神への道筋である。
だが、言葉こそ私たちに打ち付けられた楔である。
言葉は深い断絶を残して世界を切り取る。
その断絶は言葉の中には二度として帰ってこない。
私は言葉でないと君に何も伝えられない。でも、言葉のどこにも私はいない。
追い求めるものいつもいつも淵へと転がってゆき、いつまで経っても拾い上げることができない。
永遠に

もっとみる