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富山県は本当に「『寿司』と言えば富山」になれるか? vol.22(号外! 年末のすごい発表)

 前回までの連載で私は、富山県の新田八朗知事が2023年夏に「『寿司』と言えば富山になるぞ!」と宣言したことに感化され、私もいろいろ考えを巡らせ、富山県内の寿司屋を回っていると記した(これまでの記事は下記サムネイルからどうぞ)。

 これまでの21回の連載で、富山すべての都市をまわったわけではないが、氷見市、高岡市から朝日町までの寿司屋を周遊したので、今回はちょっと毛色を変えてみた。
「寿司と言えば富山」プロジェクトが発表されて1年半ほど経つが、それからの富山県内の動きはとても早いと思う。なかでも私が驚いたのは年末に発表されたふたつの事業。これはすごいと心から思った。
 実は、地元紙がこのすごい話をなんで報道しないのかわからず、いろいろと裏を取っていたのですが、ここまでなら書けるということで元旦に発表することにしました。
 まずは、東京にある寿司職人養成学校「東京すしアカデミー」の富山校誘致プロジェクトが本格化してきたこと。東京すしアカデミーは2002年の開校から5,300名以上の卒業生を輩出する業界のトップ校で、卒業生は日本の有名寿司店に数多く就職しており、実際、私の知り合いが何人も通っている。
 友人といってもみな、すでに社会に出て成功している人々で、全員がすしアカデミーの一番短い2ヵ月の江戸前寿司集中特訓コースに参加した。わずか2ヵ月で本当に寿司が学べるかについては賛否両論あるが、聞いてみると本格的で、まずは包丁研ぎから始まり、1日5時間の講義と自主練習もできる。実際、これを卒業してから寿司にはまり、自分で寿司イベントを始めた友人もおり、かなりしっかりとした講義だったという。

「東京すしアカデミー」のサイト。

 実は東京すしアカデミーの代表取締役・福江 誠さんは富山県小矢部市出身で、7月に公開された、富山県知事政策局のサイト「寿司といえば、富山」のインタビューで、
「(東京すしアカデミーでの)学びを通して、「寿司といえば、富山」と協業できればと考えています。県や市、地元の人々とも連携を図り、育成のノウハウを開示し、富山の寿司職人の増加を目指したいです」
 と話している。

 そしてついに2024年12月11日、水産物販売などのジェイズコーポレーションと共同で富山市の岩瀬漁港にキッチンカーイベントを開催した。握るのはすしアカデミー卒業生の小林さんのご夫婦。当日朝に岩瀬漁港から寒ブリやサワラ、カマス、エビなどを仕入れ、東京から持ち込んだネタと合わせて10貫のにぎりずしを振る舞ったのだ。

 そして、これをきっかけにして有志たちは「東京すしアカデミー富山校」開校を目指したいと話しており、私もその構想を一晩うかがった。
 一連の話を聞いている中で私が「なるほど」と思った話は、関係者の語ったこの話。
「富山校が出来たら、日本だけでなく世界の寿司職人希望者を呼びたい。彼らが富山の魚と米で寿司を学べば、自国に帰ったら『富山湾の魚は素晴らしい。寿司と言えば富山だよね』と言ってくれるに違いない。そうすれば、世界が富山を寿司県と認めてくれることになる」
 たしかにそうなれば素敵だし、外圧に弱い日本だけに、日本より世界から認められれば、富山は寿司県として一気に認知されるに違いない。これはすごい構想だ。
 もうひとつすごいと思ったのは、2024年11月23、24日に内川エリアで行われた富山県成長戦略カンファレンス「しあわせる。富山」のセッション「寿司で世界と戦っていくために、必要なこと」に東京・青山の超人気寿司店「鮨しゅんじ」の女将さんが登場し、2025年以降に射水市新湊地区に寿司オーベルジュを作ると宣言したということ。

富山県成長戦略カンファレンス「しあわせる。富山」のプログラムより。

 近年、寿司オーベルジュは日本各地に出来始めているが、鮨しゅんじの橋場俊治さんは日本の寿司職人の中でもサラブレッド中のサラブレッド。東京の服部栄養専門学校を首席で卒業し、ミシュランの3つ星を獲得した「鮨さいとう」で齋藤孝司さんに認められ、独立するまでは、個室を任されて握っていたという経歴である。
 奥様の彩子さんが富山出身という出会いからオーベルジュ建築を決心、すでに場所も決めていると聞く。しかも弟子を派遣するのではなく、しゅんじさん自らが握ることも考えているという。
 これが本当ならすしアカデミーと並んで、富山県の寿司プロジェクトに与える影響は大きい。なにしろ、東京・元麻布の鮨しゅんじは予約がほとんど取れないほどの人気で、誰もが憧れる寿司の名店。これが富山に出来たら、日本中の寿司フーディーはしゅんじ詣でをするに違いないし、「寿司と言えば富山」の名声は一気に上がることは間違いない。
 しかも、せっかく富山に来るならほかの寿司屋も食べてやろうと思うだろう。そうなれば、これまで埋もれていた富山の名店がどんどん発掘されるだろうし、富山全体の寿司のレベルが上がることも予想される。富山の料理業界全般に与える影響も大きいだけでなく、新湊・内川エリアの発展にも寄与するだろう。

「日本のベニス」といわれる新湊・内川エリア。

 この2つのニュースを聞いて、私は「これが実現すれば、『寿司と言えば、富山』プロジェクトは絶対に成功する」と思った。2025年に出来上がらないとしても、今年中に現実的になるだけでも、富山には計り知れないインパクトを与えると思う。
 しかも、こうした外からのきっかけだけでなく、最近、富山県内からも寿司を盛り立てようという動きが出てきているのもうれしい話だ。
 その注目のひとつは富山駅前のホテル「ヴィスキオ富山」の朝ご飯の「寿司食べ放題」。ヴィスキオ富山の宿泊客は朝から寿司が食べ放題になるという、これまた夢のような話で、実際これがまた素晴らしい。
 だが、その話はいろいろ書きたいことがあるので、次回にゆっくりさせていただきたい。 

★東京すしアカデミー

★鮨しゅんじ


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