ACL完全断裂から復帰までの3ヶ月(2)ー身体と道具のチューニングー
昨年9月13日に左膝前十字靭帯を完全断裂。そこからちょうど3ヶ月後、12月13日にチームトレーニングの全メニューに復帰。受傷から復帰までの3ヶ月間を振り返る。今回は身体と道具のチューニングにフォーカスしたリハビリ期間について。
リハビリ初期と膝の位置感覚
受傷から2回目の診察。
階段の上り下りができるようになったらジョギングをしていいと言われたので、リハビリ計画を考え始める。
ドクターに言われた、復帰までのざっくりとした流れが以下の通り。
階段 → ジョグ → 加速走/ボールタッチ → フィールドワーク → 部分合流 → 全合流
一つ一つを細かいところまで噛み砕きながら、まずやってみるなかで柔軟にリハビリを進めていくことを意識した。
特にリハビリ初期は慎重に、様々な視点からのフィードバックをもらいながら進めた。
ジョグ初日は理学療法士の友人に付き合ってもらいながら、走り出しの前に膝の感覚的なところをエクササイズでやり込んだ。(気になる方はPerturabation Trainingで調べればでてきます。)
以下の画像のように、板がフラットな状態の時は筋肉をリラックスさせ、傾いた瞬間に筋発火させる。
最初はゆっくりと丁寧に、適切なタイミングで筋発火を行えているか、直に触ってもらいながら確認しながら。
慣れてきたら目を閉じて、自分の中の感覚とじっくり向き合いながら行った。
右膝が動く時は膝の中で糸のようなものがピンと突っ張る感覚があったのに対して、左は明らかにそれがなかったので、ちゃんと靱帯は切れてるんだなという実感を得た。
右膝は突っ張りのおかげで位置感覚もなんとなく掴めるのに対し、左はずっとブレ続けてしまっていたので、そのあたりの感覚を覚えるためにエクササイズは継続している。
全身の繋がりで膝のサポート強化
療養期間中、特に力を入れて調べていたテーマが「なくなってしまった靱帯の機能をいかに補うか」ということ。
関節が不安定な分を全身の連動性で膝に負担がかからないようにしようと、その方法を探した。
筋膜、Fasciaのようなキーワードからアナトミーラインに辿り着き、そこで紹介されている全身の繋がりの中に膝関節と十字靱帯をカバーするものをみつけた。
左の浅層バックラインは膝十字靱帯をサポートし、脛骨と大腿骨間のポジションを維持するとある。
そして右の深層フロントラインは頭からつま先までの繋がりで、そこには膝の関節包も含まれている。
靱帯が切れたまま復帰を目指すという目標に向かって、この繋がりをイメージしながら身体をケアしてきたものの、問題はどうやって動きの中でも意識するかということ。
ここにドンピシャでハマったのが下駄トレーニングだった。
踵を踏んで後ろを伸ばす動作であったり、みぞおちからを脚として動かすイメージづくりなど、原理原則を聞きながらトレーニングしていると、まさにイメージしていたそのものであった。
ここで培った感覚のおかげで、もう少し段階が進んだ先でも、自身の感覚を信じて、かなり駆け足に確認作業を進めていけた。
テープか、サポーターか
動きの強度が上がってくるタイミングで悩んだのが、膝のサポートをどうするか。
いづれはサポートなしで、自分の身体だけでプレーできるようになることを目指したいのだが、いまは絶対的になにかが必要。
普通ならテーピングで対応すると思うが、私の場合は感覚を磨きすぎてしまった分、テープの圧にかなり敏感で、パフォーマンスにも大きく影響してしまう。
そのほか、毎度のテーピングの再現性や、試合前に時間が押した際の緊急時など、様々な点を考慮し、サポーターを探すことにした。
その中で紹介してもらったのがバウアーファインド社の製品。
締め上げるのではなく、適度に圧をかけることによって適切に筋発火を促してくれるコンセプトで、メディカルラインは少し動きづらさが勝ってしまうものの、コンプレッションは逆に動きやすくなるほどの優れもの。
復帰直後はメディカルラインのしっかりしたサポーターでプレーしていたが、いまではコンプレッションのみでプレーの幅広げていく段階までこれている。
左右でサイズの違うスパイク
サポーターに続いて、今回のリハビリで見直したかったのがスパイク。
前十字をやる1ヶ月前ごろから、中ズレが原因でつま先がぶつかってしまうのを繰り返し、左親指の爪が内出血を起こしてしまっていた。
当時は身体をうまく使えないのが嫌だなくらいの気持ちだったのが、前十字が切れてしまった以上はちゃんと考え直そうとやる気を出していた。
そこで出会ったのが、シューズの片足・左右別購買サービスを行なっている株式会社DIFF.さんだった。
ちょうどサッカースパイクの展開を検討されていたタイミングで、すぐに代表の清水さんとお話させていただき、その場でサポートの約束をしていただけた。
ちょうどモレリアを試してみようと考えていたのが、左右それぞれでサイズの合うものを履けることになり、実際に試してみると違いは明らかだった。
サイズが合うことで受傷前に抱えていた不快感は一切なくなり、切り返しの時の体幹のブレもかなり抑えられるようになった。
今回の受傷シーンのイメージとしてトレーニングピッチの人工芝とスパイクが引っかかるイメージが残っているが、それでも不安なくプレーできているのは、このスパイクのおかげでもあり、なによりは清水さんのお人柄。
事業としてなので、もちろん事業性もきちんと考えられているが、そこに囚われず、本当の意味での「良いもの」を追求できる。
リハビリ期間中のやり取りを通して、彼の言動を通して伝わってきたことが、信頼という形でプレーを可能にしてくれていると感じている。
身体に導いてもらう
道具は揃った、身体もかなり調子をあげてきた。
ここからは確認作業と、必要に応じて学び、そこから再確認の繰り返し。
日々単位で「できないこと」に絶望し、次の日までに対策を考え、克服するの繰り返しでもあった。
上半身と下半身の連動を掴むために、バスケのコートで左右を入れ替えながらシュートしてみたり、いつメンのたけくんと骨盤トレーニングをしたり。
関わる人も、確認する動きも、とにかく少しでも多くの視点から取り入れながら、動きの感覚の再構築を行なった。
この段階でおもしろかったのが、ほんとに突然、身体が楽に動ける姿勢を教えてくれる瞬間が何度も訪れたこと。
スプリントや切り返し、キックやドリブル。
幼少期から何度も繰り返してきたフォームとはまた違う。
イメージからではなく、今回のリハビリや、もっと言えば、帰国からずっと身体と向き合う中で磨き続けてきた感覚に導かれたフォームだった。
「靱帯が切れたままでも復帰をしたい」だったのが、「切れたままでもいけるな」に変わってきたのがこの頃。
自分で行うリハビリの段階で動きに関してはかなりやりこんできた自信があったので、部分合流からは単なる確認作業という感覚だった。
ただ、このあたりに関しては、かなりリハビリを自分ありきで進めていてしまったことから、トレーナーとの認識に差が出てしまっていた。
このあたりのコミュニケーションをしっかりしていれば、部分合流から復帰までの期間、お互いのストレスをもっと減らせたように思う。
そんなこんなで、9月13日の受傷からちょうど3ヶ月後の12月13日、トレーニングの全メニューに合流した。
細かーいことはまだまだあるけど、これがリハビリ期間の大体のハイライト。
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