小説を書いたことのなかった僕がライトノベル新人賞の三次選考に進むまでにやった8のこと
初めに
先日(もうかなり前ですが)発表された第29回電撃大賞の結果は、皆様いかがだったでしょうか?
僕は、三次選考で落選という結果に終わりました。
「今ならもっと良いものが書けるのに!」という悔しさが半分、「ここまで通過できるなんて信じられない!」という嬉しさが心に同居して不思議な感慨です。
小説を書いたこともなかった僕が、執筆を始めて1年半で国内最大級の新人賞である電撃大賞で3次選考まで進むことできた--。
自分で言うのもアレですが、もしかしたら、これは凄いことではないのか!?だって256/4,128って、上位6.2%だよ!?
……と、冷静になってみると思います。もはや、受賞者の方がおかしいのだとさえ思えてきます(冗談です。)
まあ、冗談はさておき、実際にこの結果は、
「小説を書いてみたいけれど……」
と、迷う人達に勇気を与えられるのではないか、とも思う訳です。
大賞を取ったわけでもないし、決して誇れるような実績ではないかもしれない。
しかし、どこかの誰かが、新たな一歩を踏み出す「きっかけ」くらいにはなれるのではないか……。
一年間、一作品も一次を通過しなかった僕が、コンスタントに選考を通過できるようになるまでの過程を共有することは、これから小説を書こうと思う人たちに対して、きっと意味のある行為ではないか……。
だから今回、こうして記事を書いてみようと思った次第です。
言葉を重ねてきましたが、「小説を書く」というのはとても楽しい事なのだと多くの人に知ってもらうきっかけになったら良いと思います。
筆者スペック
私立Fラン大学卒、20代後半の現役会社員(金融関係)
2021年1月より執筆活動をスタート
2021年の応募は全3作品で全て一次落選
読書量(月)
小説(ラノベ・一般) 3〜5冊
自己啓発系・専門書 3〜5冊
漫画 週刊・月刊を約150タイトル
ジャンプ、ジャンプラ、マガジン、マガポケ、サンデー、うぇぶり、マンガワンなど
筆者実績
第18回MF文庫Jライトノベル新人賞3期
一次通過/二次落選
第29回電撃大賞
二次通過/三次落選
第15回GA文庫大賞(前期)
二次通過/三次落選(A評価)
なお、MF文庫新人賞とGA大賞への応募は同一作品です。(原型をとどめていないくらい改稿しましたが)
全く結果が出なかった2021年から考えれば歴然の差です。
「これではいけない!!」
そう思ってから、行動や習慣、執筆方法を徹底的に見直しました。
そして、以下で掲げたことを実践してから、尻上がりに結果が付いて来るようになりました。
電撃大賞2次通過のほか、第15回GA文庫大賞では3次選考で「A」評価を頂きました。
1.まずは書いてみて、そして完成させてみよう
一番大切なことは「踏み出すこと」だと思います。
プロット? そんなものはどうでも良いんです。
ライティング・ソフト? WordでもEvernoteでも何でも良いんです。
とにかく、今この瞬間から書き始めてみてください。走り出す主人公たちを、描きたい風景を、心の葛藤を――ありのまま、まずは書き殴るのです。
そして、書き切ってください。
どれほど不格好なストーリーラインでも構いません。書き進めてください。一々、戻らないでください。それをやっていたら一生完成しません。手直しなど後でいくらでもできます。
自分の物語が「完成した」「エンディングを迎えた」という達成感が次へのモチベーションに繋がります。小説の執筆は孤独です。デビューすら決まっていない僕たちが高いモチベーションを維持するのは本当に難しいことです。
2.先人たちに学ぼう
一度、完成を迎えると自分の反省点や弱点が見えてくるはずです。表現力なのか、構成力なのか、キャラクターなのか。応募する賞によって、評価シートをいただける事もあるでしょう。
弱点が見えたら、ひたすら修正です。そんな時に手っ取り早いのは、先人たちのち絵を借りることです。
先駆者の存在する分野で独学は余りにも非効率。僕たちの抱える大抵の悩みは、先人たちが経験しています。
僕が参考にした書籍をいくつか貼っておきます。
3.プロットは必ず書こう
――何でも良いから書きなさい。
とは言ったものの、それは一歩を踏み出せない人に対するものです。
一つの物語を完成させることが出来たなら、次は良いものを作れるように目指していく段階です。
僕は、尊敬する西尾維新先生の「プロットを作らない」を真に受けて、プロットなしで一年間を戦いましたが、それは天才だけに成し得るものだと気がつきました。僕たちのような凡人に、「プロットなし」での執筆は現実的ではありません。その事に気が付くまで一年も費やしてしまいました。
以下ではプロット作成のメリットを挙げていきます。
プロット作成のメリット
執筆時間の短縮化
書いている途中で迷うことがなくなります。
正確には、迷った時に戻るべき場所を作る事ができます。筆が止まった時にそれを見たら良いという道標のようなものを用意しておくと、執筆スピードは格段に向上します。設定の矛盾に気が付く
全体的な辻褄を合わせやすくなります。プロットは、作品の全体像を俯瞰して見ることのできるツールでもあるからです。
「あれ……?これだと、冒頭の場面と矛盾してる……?」
なんて事が後から判明して、修復に修復を重ねる羽目に……なんて経験はありませんか?
そして、その修正が新たな歪を……という負のスパイラルは、プロットを用意することで防ぐことができるものと思われます。
どこまで細かく書くか
これは判断の分かれるところだと思いますが僕は、
何章の何話で、この時間のこの場所で、誰と誰がこんな会話をする
まで、細かく書くようにしてから、格段に賞の通過率が向上しました。
プロットの段階でそこまでイメージの湧いているシーンがあるのなら、やはりそれは形として残しておくべきです。きっと、それは、その作品を通じて描きたいものであるはずだから、です。
キーとなるイベント以外は「こんな感じにしたい」という抽象的なイメージでも良いと思います。
必ずしもプロットに従う必要はない
あくまでもプロットなので、後から面白い発想に出会う事も当然あるでしょう。そんな場合は、そちらを優先してもいいと思います。あくまでも、「今」時点で最高のものを考えましょう。
格好を付けて言えば「キャラクターが動き出す」事は当然起こり得ることですから。
4.締め切りを設けよう
当初の僕は、いきなり作品を書き始めて、完成してから一番期近の新人賞を探すということをしていました。どうしても書きたいシーンが浮かんで、後先を考えずに突っ走っていました。猪突猛進。
当然、応募要項も賞によってそれぞれ違いますから、修正を強いられるわけです。何と無駄な作業でしょう。まあ、200枚を超えるような大作を創った訳ではないので、ある程度の汎用性はありますが……。
締め切りを設けないことの最大のデメリット
締め切りがない事の最大のデメリット。
それは、作品が完成しないことです。だらだらと引っ張ってしまい、
「終わらないから来月のこっちの賞にしよう」
と先延ばしてしまうことがあります。締め切りはゴムのように伸びると、かつて言った偉大な作家がいましたが、我々はど素人です。誰も待ってはくれませんし、伸ばしてもくれません。メリハリを付けて追い込みましょう。
5.応募する賞は、選り好みしよう
自分の作風とマッチするところを選ぶ
これは、完全に個人的な見解ですが、やはり、自分の作風とマッチする賞を選ぶ方が選考の通過率は高いように感じます。
例えば、青春純愛ものを書いたのに、異世界ものばかりラインナップされている新人賞に応募しても勝ち目は薄いような気がします。
応募者が少ない、または、通過率の高い賞に応募する
やはり、成功体験を積むことが大事です。
小説の執筆は、孤独な作業です。どうしても、心が折れそうになる瞬間があります。
そのような中で、如何にモチベーションを保っていくか。
やはり、一番のモチベーションは、選考の通過だと僕は思います。選考の通過者として、インターネット上に自分のペンネームと作品名が掲載される事は、筆舌に尽くしがたい喜びです。
それが例え小さな新人賞であったり、大多数の作品数が通過していたとしても、です。
殆どの新人賞で応募総数が公表されていはずです。一次選考はかなりの数が通過しているような賞も見受けられます。色々な賞を研究してみましょう。
6.少しだけでも良いから毎日書こう
モチベーションを補完する 「習慣化」のメリット
書くことを、習慣化しましょう。
誰にも求められず書いている僕たちは、やり遂げること、即ちモチベーションの維持が一つの課題です。だからこそ、モチベーションに頼らないことが、継続して執筆を続けられる秘訣です。
結局のところ「質の向上」は、どれほど時間を投下したか?という、「量を極める」事でしかないのです。
私は毎朝出社前にカフェで30分を執筆に充当しています。月〜金の合計で150分。それが多いか少ないかはともかく、やはり、手を動かした分しか物語は前へ進みません。
やらないよりは、絶対にやったほうが良いと思います。
おすすめは出社前
最初は5分でも構わないので、日常の中に「執筆の時間」を組み込みましょう。「毎日同じ時間に決まった時間だけ」でも良いでしょう。執筆をルーティン化するのです。
中でも、個人的なおすすめは出社前です。
これから出社しなければならないという緊張感のお陰でメリハリが付くほか、残業や急な会食など予想外の事象で「今日は執筆できなかった!」という事態を回避できるからです。
また、「毎日同じ時間に同じ時間だけ」執筆することで、進んだ文字数の差によって、自分の得手不得手を把握できるようになります。進む日と進まない日でこんなにも差があるのか……!と驚いたものです。僕はこの習慣のお陰で、戦闘シーンが苦手(遅筆)である一方、風景描写は早いということに気がつきました。
更に、出社前に時間を設けることで、生活リズムが整う点も副産物として挙げられます。早く起きるために早く寝る事になるので、無駄な飲み会に参加しなくなったり、お酒の量も減っていきます。
深夜アニメのリアタイができないのは残念ですが。
7.インプットを続けよう
文字通りです。
ガソリンを補給しなければ車は走りませんし、食事からエネルギーを摂取しなければ身体は動きません。小説家を志すということは、媒体はともかく、物語やクリエイティブなコンテンツがお好きな方が多いでしょう。そこまで深くは触れません。
小説はもちろん、アニメ、漫画、映画……とにかく作品に触れまくって感性を養います。新たな着想を得らえるきっかけにもなります。
そして、感想を文章にする「言語化」と併せることで、よりインプットの質は向上していくものと思われます。
特にツイッターは言語化のトレーニングに適しているように思います。友人にメッセージを送るのはさすがに憚られるものの、とはいえ自分のメモ程度では緊張感は担保されません。「世界に向けての発信にはなるものの、特段誰からのリアクションもない」くらいの丁度よい距離感がツイッターにはあります。
8.何度も推敲しよう
最後になりますが、何度も推敲する事はとても重要なことだと思います。料理で言えば、盛り付けの作業でしょうか。錆びた金属をヤスリで削るようなものでしょうか。
僕は最低でも3回は読み返すようにしています。初稿を書き上げるよりも時間を使っているかもしれません。時間が許されるのであれば、通して読んだ際に、直したい箇所がなくなるまで繰り返したいところです。
個人的なおすすめは、初稿を書き終えたら一度「紙」に印刷して読み返すことです。不思議なものでスクリーンの上を目で追うよりも、遥かに誤字脱字が見つかります。
ただ難しいもので繰り返し読んでいくうちに、どんどん視野が狭窄していきます。分かりやすく言うと、執筆者が物語に入り込み過ぎて、客観的な視点が失われてしまいます(そもそも自分の作品を客観視なんて出来ませんが、程度問題です)。
最後に
いかがだったでしょうか。
「たかが電撃の二次通過ぐらいで偉そうに!」と思った方もいらっしゃるでしょう。内容も初歩的で、きっと受賞者さんたちの多くは当たり前にやっていることばかりかもしれません。
それでも、僕のような素人だからこそ、伝えられることがあるのではないかとも思っています。プロよりも等身大に感じられることで、より親近感を覚えられる側面もあるはずです。
「こんな馬鹿っぽいことを言っているやつが三次まで行けるなら自分だって!」
と、奮い立つきっかけになればそれはそれで構いませんし、ポジティブな意味で、
「自分も小説を書いてみよう」
と思って貰えたなら、これ以上はない望外の喜びです。執筆という作業は孤独です。しかし、そんな孤独を上回るほどの楽しい世界が待っています。
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