エッセイ:ウサギとカメと向精神薬
『ウサギとカメ』
日本昔ばなしかと思っていたが、調べてみるとイソップ寓話らしい。
説明するまでもないだろうけど「余裕ぶってサボっているとマジメなカメに抜かされちゃうよ」とか「マジメに頑張っていればウサギにも勝てるよ」とかそういう類の教え。
しかし、はたしてそうかな、と斜に構えてしまう。
この競争社会の現代に見渡すと、頑張っていない人を見つける方が難しい。
どちらかと言えば「頑張れなくなった人」の方が多い気もする。
(田舎の高齢者などに目を向けると「今まで通り生きてたら気付かぬうちに搾取されている」なんて別の寓話になりそうなので割愛)
さて、『頑張れなくなった亀』はどうすべきだろうか。
僕はこちらに感情移入してしまう。
ウサギとカメの話を聞くといつも水戸黄門の主題歌を思い出してしまう。
なかなか辛口のアドバイス。
流石昭和。ムチを打ってくる。
余談だが、僕はメンタルを壊してくじけた亀のうえに抗うつ剤が飲めない。
一時期服用していたが副作用が重くて投薬治療は断念した。
今できることと言えば生活習慣の改善だとか認知行動療法。
平たく言えば「科学的に証明された気の持ちよう」ということ。
健康な人に伝えたところでどういう感想を抱かれるかは想像に難くない。
堅実に治療をするのが「マジメな亀」だとしたら、僕はいったいなんなんだろう。
僕の立ち位置はなんだ。
──閑話休題──
そもそも基本スペックで圧倒的に劣る亀がくじけたら勝負にならない。ウサギだって流石に寝る。
三日天下の明智光秀はウサギだったのだろうか。
それとも満身創痍の亀だったのだろうか。
堅実な亀とは秀吉のことなのだろうか。
いやでも彼もサル、もといホントのアダ名はハゲネズミだったらしいし、どうかな。
などと世迷言を打っている内に夜が明けた。
ご覧あれ、これが自転の速度に負ける亀の歩みというものだ。
今日一日、成果と呼べるほどのモノは積み上げていない。
何もしていなかったわけではないが、リストにチェックを付けられるような代物でもない。
あるいは世迷言のこの記事も「着実な一歩」にカウントしてしまうか。
微力ながら「進んでいる」と思いたい。
願わくばアキレスの方の亀で在れますように。