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バディものだと欲しくなる相棒奪還イベント〜ドラマ「あぶない刑事」〜
ドラマ「あぶない刑事」で100回観ているシーンといえば、タカ奪還シーンです。
銀星会に捕えられたタカをユージがひとりで迎えに行く、あの場面。
タカ奪還シーン 概要
大下は、廃墟となった工場で荒っぽく車を止めた。窓越しに彷徨わせる視線、その先に、銀星会組員たちの姿が見える。古びた建物を背に、ずらりと待ち構えているのは総勢30人といったところ。
中央にいる男は会長で、その隣に相棒がいた。ひどく汚れている。まるで捕えられた獲物のようだ。
知らず、口から息が漏れる。
「タカ」
大下は車を降り、じっと相棒を見据えた。
「待たせたな タカ」
弾かれたように顔をあげる鷹山。大下を視界に入れた顔に、疲れたような、でもどこかほっとしたような笑みが浮かぶ。両手首には手錠がかけられ、かなり傷めつけられたのだろう、いくつかある顔のアザがこの位置からでも見てとれる。もっと早く助けてやれていたら。罪悪感が大下を襲う。
大下の心情を知ってか知らずか、ニヤリと会長が笑みを浮かべた。
「本当に待ちくたびれましたよ」
ねぇ、と同意を求めるように鷹山に話しかける。勝ち誇ったような馴れ馴れしさが癪に障る。早く相棒を取り戻したい。けれど、いまは見守ることしかできない。まだ、まだだ。
焦燥感を抑えながら大下は、麻薬が詰め込まれたトランクを車の屋根に置いた。駆け引きが始まった。
「シャブだ 早く取りに来い」
もう一方の手に隠し持ったマシンガンを握りなおす。
冷静な態度は崩さない。鷹山奪還のチャンスは一度きりだ。失敗すれば相棒の命も麻薬も奴らの手に渡ってしまう。
銀星会面々の、そして鷹山の、訝しむような視線が一斉に大下向けられる。
大下の頬が微かに表引き締まる。それは大抵の人間には分からない小さな変化だけれど、鷹山は何かに気づいたような素振りを見せた。
大丈夫だ。相棒は、俺の意図を理解している。
大下は小分けされた麻薬をわし掴みし、銀星会の連中に見せつけた。
「シャブだ ほら」
一帯が静寂に包まれる。ヤクザに麻薬を渡し、その代わり相棒を返してもらう。警察の人間としてあるまじき取引をしようとしている、コイツは本気でイカれた刑事なのか、あるいは何かの罠にはめるつもりなのか。大下の真意を見極めようとしている敵が、結論を出すまでの一瞬をつき、大下は空へと麻薬を舞あげ、マシンガンをぶっ放した。
すぐさま開始される敵からの反撃と、鷹山が敵陣から飛び出すのは、ほとんど同時だった。
容赦なく降り注ぐ弾丸、その合間を縫いこちらに全速力で走ってくる相棒をガードすべく、大下は一心の援護射撃をする。
鷹山がバリケード代りの車にたどり着いた。ぜいぜいと荒い呼吸を繰り返す、ぼろぼろの相棒に拳銃を渡す大下の顔が曇る。タカ。
「大丈夫か」
「ああ。サンキュ」
激しさを増す一斉掃射。
応戦する、互いの相棒の隣にようやく立つことを許された2人。
銃撃戦の最中、鷹山がふと横に視線を移し、ユージと呼びかけた。そちらを見ると、すぐそばに小さな廃屋がある。大下は目線で、鷹山の意見に賛成する。まずはここ乗り切らなければ話にならない。
銃弾を避けながら、2人は素早く建物の中へと逃げ込んだ。そこが死への入り口であることは、もちろん理解してのことだ。
「追え!」
敵が一斉に2人を追いかける。
脚本:成田裕介 監督:大川俊道
相棒を迎えに行く「バディ組んでるもう1人」というのは熱くて、危うくて、ドキッとします。
多分、迎えに行く相手が「相棒」だというところがポイントなんだろうな、と思うのです。私のドキッの。
仲間じゃない、
恋人でもない、
同僚でもない、
相棒。
それはある意味、自分の体の一部。
それなしでは自分が成立しないもの。
命とか、なんなら魂に限りなく近い存在。
自分の大事なものを奪還しに行くバディの片割れがいるこのシーン、やはり相当にかっこいいと思うのです。
以下、紙バージョンです。
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