【小説講座】校正について詳しく教えて!
今回は「校正」について細かく語りますネ!
■相談
ハワワ!とっても嬉しい感想までありがとうございます!!
新しい行動ができた!という報告、ハチャメチャに朗報ですワ~!!はじめての本、宝物ですね!!
んんっ、う~~~~~ん……。
メッセジお嬢様から求めたアドバイスでしたか?好意は感じましたか?
その指摘、言われて「ありがたい!」と思いましたか?それとも困ったり悲しかったりしました…?
後半が丸ごとないとかコピペミスとかキャラ名間違いとかのレベルなら指摘があるのはまあ分かるけど、“改行のタイミングやダッシュの位置”は、頑張りたい人が頑張るプラスアルファで、他人に強制するものではありません。
自分から求めてなかったとしたら、ちょっと難しいですね。善意でも。
指摘の際、うれしい感想やねぎらいはいただきましたか?ともすれば相手の現状を否定することになるので、指摘ってすご~く気を使わなくてはいけないんです。どうにか傷つけないように、爆褒め95%指摘5%くらいじゃなきゃ結構つり合いません。
もし誉め言葉やねぎらいはそこそこに、ただただ非合意アドバイスを上から目線で投げかけられたのであれば、それは相手が勝手に気持ちよくなってるだけなので、「勝手に気持ちよくなってるな」という目線はあっていいと思いますワ。これもまた求められてないアドバイスなので、無視でOKですヨ!
お嬢様から「アドバイスください」と求めたのでなければ、善意の気持ちは受け取りつつ、内容は気にしなくていいと思います♡
その方を好きな気持ち、尊重する気持ちと、「アドバイス(のやり方)が適切かどうか、それに従えば作品がよくなるかどうか」は全く別軸です。
仮に「商業クオリティのものを書きたいぜ!」という場合でも、適切な指導ができる、ちゃんとした知識のある方は一握り。アドバイス通りに直したら、本当に自分の目標に近づくかどうかはきちんと考えましょう。
もっともらしく聞こえても、まったく不要なアドバイスというのが世の中にはあります。(魔法ファンタジーに対して「リアリティがない」とか)
第一に、趣味のパズルもゲームも登山も編み物も、みんなみんなプロや世界一を目指しているわけではないので、楽しいご趣味だったら、楽しいだけでいいのヨ。
あれ?”改行のタイミングやダッシュの位置”って、校正の分野カナ……?
これについては実際の本文とアドバイス内容を見ないと分かりません!
とりあえず今回は、校正について訊かれたので手広く校正ガイドを書いてみますネ!
■一般的な「校正」ガイド
こちら、プロは何をチェックしているかのお記事です。素人お嬢様はここまでやらなくてもいいけど、「校正とは」「校閲とは」が細分化されててとってもわかりやすかったです!
アマチュア同人お嬢様がよく言う「校正」は、セルフ素読みの「校正」「校閲」を併せていう場合がほとんどです。
わたくしも「誤字脱字と内容チェックをしながら推敲してブラッシュアップすること」を雑に校正と言いますが、正しい意味は↑の記事をご参照くださいネ!
>ペチカ様が普段行われている校正の方法
「校正」としては、う~~~ん、読みなおして、誤字チェックをして、推敲して、頭の中で読んだときに分かりやすい/気持ちいいリズムや言葉の並びにして……という感じですネ。THEふつう。
過去記事(有料)で、校正とツールについて少しだけ書いたのがこちら。
レトリックも使い「読みやすく豊かな表現」の文を目指すのはこちら。
校正にも使える「正しい日本語表現を学ぶ本」はこちらでいろいろ紹介しています。全部勉強になるのですっごくおすすめです!
よく言われている「ちゃんと校正する方法」は、「プリントアウトして赤ペンで書きこみながら読む」ですネ。ディスプレイよりも紙のほうが効果があるという実験結果もあります。
それを知りながらも、わたくしはプリント代節約のため、アイパッドとPDFでやっています。
①日本語チェック(校正)
チェックもざっくり2通りあって、「誤字脱字、文法ミス」の検出であれば、①字面だけ見る日本語チェックをします。
内容を頭に入れずに日本語の正しさだけ追ってく感じ。
これ、逆に「内容を想像」「文脈あり」だと、脳みそが文脈を補完して読んでしまうので、誤字脱字に気づけないんです。
「読書はつい目が滑ってしまう」という方向けの商品「リーディングトラッカー」で他の箇所を隠しながら読む方法も、使えるカモしれません。
日本語チェックの例や参考になる、いい感じのリストがこちらのサイトにありました。
かなり高い水準のチェックなので、「これが全部できなきゃダメ」ではないですヨ!ハイレベルでやりたい人だけ!
また、①についてはある程度文法上の正解・ルールがあるのでツールが使えます。
一太郎の校正ツールは表記ゆれも細かく見てくれるので、気にする方にはオススメです!
ただ、「正しい文の書き方が分からない」(主語述語、能動受動などの対応が取れずばらばらになる)とか、「意味を間違って覚えている」(浮足立つをうれしい意味で使う)とか、そういう場合はセルフチェックじゃ気付けません。
答えを知らない人にテストの採点を任せるようなものですからネ。
国語が苦手だったり、読書経験が少なかったりする自覚のある方は、答えが分かる人に教えてもらいましょう!
少しだったらお友達同士でもいけるだろうけど、大量指導だったら対価が発生するレベルの労働になるので、スキマやココナラで有料依頼するのがおすすめです。
②内容チェック(校閲)
②内容・文脈を読み込むチェックでは、「内容の論理チェック」「矛盾の確認」をしていきます。こちらは、読者の読み方に近いですネ。
見つけるミスは「パンツを二回脱いだ」「ジャケットを着ていたはずがいつの間にかタンクトップになってる」「説明通りに素直に想像すると腕が四本ある」みたいな感じ。
注意点としては、必須なのが「読者目線」です。
作者の頭の中にはすべての情報があるけど、読者は今まで読んできた文字の情報しか知りません。なので、いったん脳内映像とかをすべてリセットして、読者になったつもりで、与えられた情報だけで想像していきます。
書かれた文字だけ読む。書かれたことだけ、忘れずに積み上げる。
こうすることで、「不足している情報」に気づけます。
よくあるミスは説明不足。作者の頭の中だけにある情報を、読者に伝え忘れているケースですね。「書かれたこと」と「脳内映像」のギャップが離れすぎてると、「エスパーじゃないと読解できないよ!」となってしまいます。
例が難しいのだけど、たとえば「青で有名な画家」という説明で、読者はフェルメールだと思ったけど、作者がイメージしてたのは東山魁夷だった……みたいな。
誤解を防ぐためには、「特定できるよう伝える」がダイジですね。(名前を出さず)東山魁夷だと伝えるためには、日本の画家であること、馬の絵も有名なことも説明すれば、ひとまずフェルメールとは間違えられません。
今の例は簡単だけど、実際のケースではもちろん!相当難しいです。
「脳内のことを全部伝える」は不可能なので、「ここまでは誤解なく伝える/ここからは自由に想像してもらう」のバランス感覚が必要になってきます。
主観を手放し客観に寄らせるための方策としては、「一週間寝かせてから校正」とよく言われます。人を頼るのもオススメです。
※もちろん、書かれていないことを読者が自由に想像することもアリだけど、それは楽しみ方の一つであり、正しい読解のための正しいライティングとはまた別トピックですネ。
こちらはプロの校閲さんによる、ハイレベルな内容チェックが拝見できます。
というわけで、完成度の高い小説を目指すなら、わたくしは①日本語チェックと②内容チェックで最低二回「校正しながら読み返し、推敲&修正」をします。時間があればもっと。
③印刷(PDF化)チェック
オフ本の場合はこれがあります!PDF化したときに文字化けしてないか、数字が横に倒れてないかとかですね。①②のついでに確認します。
記号への注意。たとえばダッシュについては、「一」と「一」のあいだに改行をはさまないようにする配慮はあります。絶対必要ではないですが。
対処としては文字の手動調整、一文字の「一」を引き延ばす方法と、禁則処理を使う方法があります。
よくない例としては、電子書籍の個人出版で「♡」が全部「?」、半角数字や伸ばし棒が全部横に倒れた縦書き小説を買ったときは、売り物なのでさすがにびっくりしました。それくらいはやったほうがいいけど、あとは好みと美意識ですね。
■推敲
間違いを正すニュアンスの「校正」だけではなく、間違ってない文をさらによくする(よくしようとして練りなおす)ブラッシュアップ的な「推敲」もやりたいですネ!
といっても…………思いつく限り、「地の文講座」で語りつくしちゃった。
いちばんは、脳内でOR声に出して音読することですネ。
文の内容を変えずに、ちょっとだけ表現を変えて、よりよいリズム、伝わりやすい表現を模索します。
以下は、同じ内容について、一文の長さや順番を少し変えた例です。
この場合、どっちでもOKです。好みの違いだけ。(実際の決定稿は、1と2をミックスしました。わたくしの好みは、長い文をあまり続けず適度に短い文を挟むこと)
こういう微妙~~~~~な違いについて、絶えず自分が気持ちいいリズムを探っていくことで、その積み重ねで全体の読みやすさに貢献できます。……そのはず。きっと。そうだったらいいナ。
あと推敲時に気にすることは……情報の伝え方ですネ。
◎情報の伝え方
さっきは説明不足に言及しました。もちろん説明は書きすぎてもダメなので、情報のさじ加減は永遠の悩みどころ!過剰な初心者さんも、過小な初心者さんもいます。
セリフはもちろん、感情や行動について「伝達のための必要最低限」を確保しつつ、想像しやすい比喩、レトリックを使う。また、情報を伝える順番にも配慮する。基本は想像しやすい順番で。
恩田先生お嬢様のご本からきれいなお手本を引用。
場面転換のあと、遠景→近景→経緯の説明と、想像しやすい順番で情報が徐々に提供されます。
特に「情報を出す順番」がダイジになるのは、場面転換時の情景描写、長い経緯の説明ですネ。また、キャラの感情についてもうまく書けば共感力を増やせます。
芸術分野に突っ込むので「どうすればいいか」は一概には語れませんが、質の高いプロお嬢様の作品をたくさん読んで、センスや肌感覚を身に着けるのがいいと思います!
「読みやすい」「気付けば読み終わってた」は最大の賛辞!(逆:「読むのが苦痛」)
本当に会話(の聞き手)が上手い人は、あまりにも聞く能力が高いので相手に「自分の話って面白いんじゃないか?」「自分の話術って実はいいんじゃないか」と思わせることができる……根拠はないけどわたくし常々そう思っています。
文章にもいろいろなタイプがあるけど、読みやすさキングはきっと、あまりにも読みやすいので読者に「こんなに読めちゃった!」と思わせられるんでしょうね。それだけ、見えない配慮と計算に裏打ちされたバランス感覚、情報量のコントロールができているということで。
■質問回答
◎ダッシュと改行について
誤字ではないけどダッシュの位置を校正で直されるパターンは、多くないと思うんですけどね。
「あ――、待って」「――あ、待って」の違いとか……?
え~~~~~、ごめんなさい、それなら気にしなくて大丈夫です。
小説でよくあるダッシュの効果と使い方については、地の文講座で解説しています。真似するとダッシュの数が多すぎて一発で分かるのだけど、「肌感覚」を知るには京極夏彦先生の本を読むのがオススメ!ハチャメチャに面白いですヨ!
改行についてはおそらく「演出」なので、好みです。Web小説ならセリフの前後に改行をはさむスタイルもありますネ。見やすさへの配慮として。
わたくしは紙の本に親しんで育ったので、Webでも「見やすさ改行」はいれません。好みです。
改行を入れる主なタイミングとしては、場面転換が主ですネ!場所や時間など、シーンが変わるときに空白を一行。
演出のために入れることもあります。劇的なシーン、たとえば告白だったり、キャラが刺されるシーンだったり、あるいはとっておきの決め台詞や殺し文句の前後とか。
こちらの演出改行は、少し軟派なラノベ的なので、古風な「文学」が好きな方がけしからんと言うこともありますが、ただの好みです。使うかどうか、あるいはどう使うかは、好きな作家か売れてる作家の作品を調べれば、判断材料が増えますヨ!
校正や演出についてはどうしても「肌感覚」を使うところなので(正解はなく好み&芸術分野)、好きなプロ作家の本をた~くさん読むのがいいと思います。一人に絞ると影響を受けたときに「真似」になるリスクがあるので、複数人分で。書き写しながら勉強するやり方もありますネ!
メッセジお嬢様の疑問解決にもっとも手っ取り早いのは、知識が確かな人に見せること。校正・日本語アドバイスサービスで、自分の目標を伝えてアドバイスをお願いしましょう。「プロになりたい」か「趣味で楽しく」でおゴールが違ってきますからね。
で、ついでに「ひとからこういう指摘を受けたのですが、どう思いますか?私の目標へのアプローチとして適していますか?」とセカンドオピニオンを聞くのもアリアリ!これでわだかまりは大方解消するでしょう。
いい感じの方を探してみてネ!
……さんざん語りましたが、何故こんなに詳しいかというと、わたくしが凝り性のオタクだから。
楽しいご趣味ならクオリティよりも正しさよりも、LOVE&ENJOYがいちばんダイジ!
あくまで校正も「やりたいからやる」であって、「やらなかったら怒られる」とかではないので、どうか各自楽しい範囲で無理なくやってくださいネ!
みなさまの楽しいご趣味を、応援してますワ~~!!!!
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