地の文の書き方……全部教えます!
約10万字の実践的地の文テクニック講座、完成しました!
年末年始期間に限り、追加質問を読後アンケートで受付中です!
本編はこちら
■採用質問&サンプル
地の文講座の執筆にあたり、事前におツイッターなどで「地の文についての質問・お悩み」を募集していました。ご協力ありがとうございました!
おかげさまで実用性のある講座ができました!
似ている内容は統合するなどして、ほぼほぼ採用できたかと思いますが、一応「質問の回答を期待して購読したら、非採用だった」というガッカリを防ぐために、質問一覧を掲載しますネ!
【サンプル公開】がついている4つは、質問だけでなく回答も一緒に載せています。
※言葉に正誤はなく、「違和感が弱い」か「違和感が強い」か、「公募で足切りされるかどうか」など、そういう視点の判断基準になっています。
あくまでも「わたくし個人の主観・好み」に染まった内容なので、アレ?と思ったらご自分でも調べてみたりセカンドオピニオンをゲットしたりしてくださいネ!
◎隣の比喩は青い
◎行動説明より情緒的な文を書きたい
◎一人称冷静やろがい問題
◎視点人物の知らないこと問題【サンプル公開】
【原則】
>「カメラが潜り込んだ人物が見聞きしていないことは描写できない」
三人称限定(一元)視点の書き方としては、おおむねそうですネ!
これを守ると初心者でも迷うことなく安心安全に書けるし、サスペンス的にも物語が面白くなるので、よく推奨されています。
一般的には「別室や別の国のこと、視点人物が知りようがないことを書くのはナシ」ですネ❣ ここまでは一人称と同じルール。
ただ三人称は、もうちょっとカメラマンが自由に動けます。
よくある書き方として、「カメラがその場で引いて、視点人物の背中や周辺を写す(客観/全知に寄る)のはアリ」。ごんぎつねなど、色々な小説で「カメラが数メートル引く」描写は散見されます。(【特級】で後述)
これは同じシーンでもOK度が高い。
また、「キャラが知らない(かもしれない)一般的な知識も書ける」ことがあります。
川端康成の「雪国」では「あんた二月の十四日はどうしたの」と言われたシーンで「二月の十四日には鳥追い祭りがある。雪国らしい年中行事で……」と祭りの説明がさしこまれます。
主人公たちが新しい街に来たとき、街の特徴がさらっと地の文で書かれる描写も結構見ますよネ。
これは……違和感が出るどうかは書き方次第カナ。
極めて一人称に近い主観寄りの書き方だったら違和感が出るけど、客観寄りの書き方なら大丈夫。「その情報を読者に知らせることで読書体験がよくなるかどうか」も判断材料になるでしょう。
「雪国」だと「祭りの頃に来るっていったのに来なかった! うそつき!」と責められているシーンなので、そんなときに当事者たちがセリフで「鳥追い祭りとは……」と説明しだすのは極めて不自然なので、地の文で説明するのはOK判定です。
さらに「神」に寄って、「一方その頃ブラジルでは…」と大胆にTHE神の視点(全知視点)をまじえるのは、シーンを変えるならOK寄り。(温度差が大きいので、同じシーンでやるのは難しい)(映画を素直にノベライズしたらこうなりそう)
ただ、やるからには効果的な意味を持たせるなど、違和感ないように書く必要があります。
視点人物の変更とも似てて、たとえばA視点9割B視点1割の小説で、そのB視点が読書体験の向上に寄与していないのであれば、「じゃあずっとA視点でよくない?」となるからです。
映像と違い、特に小説は「主観が強い」媒体なので、なんでもアリの神の視点を書くときはウソっぽくなる、没入度が低くなるリスクをはらむので、繊細な注意が必要です。
基本的には「幽霊カメラマンが視点人物にとりついていて、心の中に入ったり、数メートル引いたりする」という感じでOK!
その場にいる幽霊なので、過去や未来にタイムスリップすることもありません。実況中継スタイルです。
これは「多くの場合そうだよ」「多くの読者には違和感ないよ」という書き方で、実際「正誤」はありません。
小説の視点の取り方は、文学畑では実際ものすごく自由です。
視点変更は、指導者によっては「初心者が下手にやるとNG率が高まるから、あえて厳しめの基準でやめろと断言している(安全策をとっている)」場合があります。(子供に交通ルールを教えるときと一緒)
ここらへんの感覚は文の書き方✕人の感じ方の数だけ変わってきますね。
結局違和感があればダメだし、違和感がなければOK!という風にわたくしは思っています。
逆のビギナー質問として、「主人公は知っているが、読者が知らないことをわざわざ説明するのはヘンでは?」もあります。とくに一人称だと違和感が出ますよね。
お約束だけど「俺は高校生探偵・工藤新一!」「この世界には人間の他にエルフやゴブリンなど多様な異種族が存在する!!」みたいに「明らかに読者を意識して説明してるよね!?」というのは、お話のジャンル(と視点)によっては違和感カモ。
とはいえ読者向けの説明は必須ですよネ。
非「お約束」の小説では、「説明のみを目的としたTHE説明の文でなく、『ついで』のようにさらっと描写する」とGOOD!
たとえば「仙台の名産はずんだで人口は百万人ちょっとである」とストレートに書くのではなく、「里帰りした主人公が、東京に比べてコンパクトな街並みにほっとしつつ、ずんだ餅の店にできている行列を見て『土産はあれにしようかな』と思う」など。
(エンタメ長編講座の「退屈でない説明を」でも語っています)
◎表現ワンパタ問題
◎言う系のワンパタ問題【サンプル公開】
永遠の悩みですわね……。
助けて!会話シーンが単調になりがちなの!というのはどのジャンルにも共通していて、映画や漫画でも「単調にしない工夫」のおTipsが語られています。映像ジャンルだと「カメラワークを工夫する」のも定番ですが、小説ではなかなか難しいですわよネ。
好きなプロ作家お嬢様の真似をするのが安牌だと思いますが、一緒に考えていきましょう。
まず「くどい表現になってしまいますか?」の質問ですが、どの程度「毎回」かしらん?「すべてのセリフの後に必ずつける」はちょっと……日本語ならくどいカモ;;
おそらくそうしているであろう、「数行に一回」なら全然OKでしてヨ!
大丈夫、「言った」は「言った」だから、正しく意味が伝わればOKです。あくまでも「表現の多彩さ」は加点にはなるだろうけど、逆の場合減点条件にはなりづらいです。
・類語を活用
加点を目指す方向けに、多彩にする手立てとして「言う」の類語を引いてみましょうか。
いっぺえある!
「告げる」「囁く」「語る」「吐き捨てる」とかは、全然違うニュアンスよね。
「頷く」など他の動詞と違って「言う系」は表現が多彩なんです。きっと、昔からそれだけ需要が大きかったんですね。細かなニュアンスを使い分けたいから、ここまでの語彙が生まれた。必要は発明の母。
他の動詞は頑張って類語を引かなくてもいいけれど、ここまで言い換えが多い動詞は、先人の知恵として、ありがたく類語を活用してもいいと思うワ!
まずは、キャラの感情や文脈や行動に合わせて使い分けましょう。
・話者を特定させる方法
言う系で迷ったとき、参考になるのは翻訳小説です。(※自論)
日本語は聞こえた音をそのまま書けるので、同じセリフでも全然違う感じに書き分けられるし(例「オーケイ」「おっけー!」「おーけぇ」)、一人称や語尾が人によって違いますよネ。だから、「Aは言った」を抜いてもかなり「話者の推測」が成立するんです。
対照的に、一人称やセリフの言い方でバリエーションをつけづらい言語だと、都度「Aが言った」「Bが言った」と主語を明示しないと厳しい……のカナ~?と思います。「主語は省略しない」という大前提のせいかもしれませんが。お国柄とかもあるので全然一概に言えませんが!
翻訳次第ではありますが、ためしにアメリカの小説を見てみましょう。
ミステリの名手ジェフリー・ディーヴァー先生お嬢様の短編「ロカールの原理」から、「言う系」の動詞を引っ張ってくるわネ。
三人の会話シーンからポンポンと抜き出してきた文ですが、どうでしょう。「言う系」動詞が多彩ですよネ!
実際にはこれらの間に、言う系じゃない動詞の文や説明なども入っています。(抜き出した箇所が連続しているわけではない)
誰がどう言ったか誤解させない書き方としては、お手本ではないでしょうか。抜き出してない箇所ですが、セリフの中で他者に呼びかける表現があるときは、誰が誰に話しかけて応答したかが明白なので、話者特定を助ける地の文が省かれてるな~とか、見てて勉強になります。
(主語が省略されている場合は、オッ!翻訳者が和訳にあたって不自然にならないように翻訳したのカナ!?なんて思ったりします)
ただやはり、わたくし個人の感覚からすると、なんか話者特定のための地の文が多いなあ……と感じることもあります。
日本の小説として、大好きな恩田先生お嬢様の、同じく三人会話シーンを見てみます。
院生のジュン、年配の教授、女子高教師のマリコの会話です。
最後の二つのセリフは発話者が明示されていません。でも年配の教授と女性(マリコ)の発言だと分かりましたよネ。文脈や口調で推測可能なときは、「誰が言った」という補足がなくてもいいんです。
ちなみにAI翻訳で英語にするとこう。
"Is that so? It seemed to me that he came out from the flowerbed."
"Oh, didn't he come from the other side of the road?"
教授かマリコの発言だと文脈からは分かるけど、どちらか特定まではできないでしょう。セリフ内で名前を呼ばせるとか地の文で情報を補うとかの工夫が必要になります。(英訳するときどうしてるんでしょうネ……)
非常に恣意的な見せ方だし、たった一人の作家に一つの言語の代表を背負わせるつもりはありませんが、興味深い例の紹介でした。
また、上記例にも多く登場しますが、話者を明示可能なのは「言う系」の動詞とは限りません。
手っ取り早いのは、何かさせること。行動と一緒にセリフを書けば、「言った」と書かずに「こいつが言ったんだな」と分かります。
下は、三人以上の会話シーンで、話者特定可能な動詞について色づけした例です。赤色が「言う系」、青色が「言う系じゃない動詞」になっています。
……青の、「言う系」じゃない動詞の方がなんとなく多いですネ!
恩田先生の例もあり、日本語の小説は「言う系」が少ないのかもしれません。(恣意的サンプル個人の感想)
(日本人作家でも伊坂幸太郎先生お嬢様は、海外小説に寄せてる?ような書き方で、セリフの間に地の文があったり、「言った」も多かったりの印象があります)
・「言う」は省略されがち
特に「言う」が少ない理由の一つとして、「かぎかっこがあれば言ったのは明白だから」があります。以下の3通りの例文、どう思いますか?
①はプレーン。②③は「頷いた」という情報が増えた。
そして、②は「頷いた」という動詞さえあれば文が成立する&わざわざ書かなくても言ったことは分かるので、「言って」を省略した文が③になってます。有川先生お嬢様の例は③です。
言い換えでも書きましたが、「言う」が無色透明すぎて、他のニュアンスを含んだ「尋ねる」「答える」などの動詞や、別の行動の動詞の方が使われやすいのカモしれませんね。
情報量を増やす&分かることは省略する、という原則に従うと、「言う」は省略されやすくなります。(それを推奨している作家もいます)
もちろん使っちゃダメというわけではありません。結局「言う」は「言う」だし、リズムや修飾詞の関係でぜひ「言う」を使いたい!というときもあるので。(もちろんプロも普通に使います)
もし「言う」が続いて、「ああ~表現を豊かにしたいんじゃあ~」と思ったら、言い換えを検討してみてネ!
◎地の文セリフ意味被り問題
◎書く情報ない問題
◎セリフと地の文の順番問題
◎「過去話」の時制問題【サンプル公開】
過去話って……どんな感じ……かしらん!?
「数行の回想」のように、短いなら全部タ形でも大丈夫!
そうでない、ある程度長い想定で書きますネ。
多分「独立した話」カナと思うのだけど、せっかくなので「回想の書き方」について、色々なパターンを書いてみますネ。
・独立した話の場合
たとえば1~4話で2024年4月の話を書いて、5話は2019年のお話、6話から2024年4月の続きに戻る、という捉え方でよろしいかしら!?
だったら5話だけは、地の文を実況中継している語り手も一緒に2019年にタイムスリップして、基本ル形(終止形)で書いちゃってもいいと思うワ……!
冒頭に「2019年、冬」とか書いてればOK。これが一番書きやすい!
・現在から思い出した「回想」の場合
独立させるほどの長さでない回想は、徐々にル形を増やせば違和感は減るんじゃないかしら?
キーは、「時制の影響を受けない表現」と「主観がどこにあるか」です。
「わたくしならこう書く」というやり方を解説しますわネ!
(解説画像がメインなので、テキストは読み飛ばしてOK)
マリアビートルとプロジェクト・ヘイル・メアリーをささっと読み返し、ル形の出し方を観察し、回想の書き方はこれでいけるんじゃないかな~と思いました。
語り手の主観(意識)がいる場所は、移動してもいい!
この例の場合は、はじめは「現在から十年前を思い出している書き方」だけど、回想が本格的になるにつれて、徐々に語り手の主観が過去に戻っていきます。
映像化するなら、バーで大人が黄昏ているシーンから始まるけど、徐々に子供時代の映像がフェードインして、濃くなって、ついには画面を占領するイメージ。
さらに調査のため書籍や論文を複数あたった感じ、「過去回想のはじめはタ形が多い」というのはポピュラーな事象のようでした。
それから徐々に、「視点人物の知覚を示す」「臨場感を出す」(「文末表現を豊かにしたい」)ときにル形がまじってくる感じ(詳細は【特級】で後述)。
例文に戻って、「何かが変わる気配がした」のあと一行開けて、次のシーンからは、あまり時制を気にせず書いてもいいと思いますワ。
完全に意識が子供時代に戻るのか(主観が完全にタイムスリップ)、それとも大人目線のモノローグを入れたい(あくまで主観がいるのは現在)かは、お好みで。
時制については視点の問題と似ていて、短いスパンであっちゃこっちゃいくと不自然で、徐々に書くなら違和感は少ないです。(たぶん)
視点と同じく、ビギナーさんが失敗なく書きたいなら、同じシーンに混在させず、章区切りなどを挟んで完全に分けて書くと安全です!
・体験談を話す場合
キャラが体験談を話す「過去話」「過去語り」の場合。
これもある程度長いエピソードだと想定しています。
回想とバリエーションをつけるため、話すのはサブキャラ、聞くのは主人公=メインの視点人物、三人称限定視点とします。
「すべてをセリフとして、説明臭くならないように書く」のは結構大変なので、長ければ長いほど、①全部会話形式はおすすめしません。
伝えたい情報量やどのくらいの臨場感が必要かによって、使い分けてみてネ!
◎情景描写の書き方問題
◎情景描写の必要最低ライン問題
◎音の書き方問題
※大人向けの話題です(直接的な描写はないのでRはつきません)。
◎一文の長さ問題【サンプル公開】
わかりゃいいです!!!!OKOK!!
基本的には短文、というのは確かに気持ちいいけど、無理に従う義務はありませんわ。
例文もちゃんと分かるので、このままでOKですヨ!
「短く切れ」というのは、初心者が長すぎる複文を書きがちだから生まれた教えだと思います。
(複文……主語と動詞の組が複数ある文)
これは……文を分割したほうが読みやすいわネ!
主語が違うのに……明示……しない……!? こんな……感じ……!?
どれも「塩梅」だけど、「ふつうの文の書き方」レベルなら、「主語と動詞の組が分かりやすい(誤解なく伝わる)」でOK!
ただ、特にシーンのはじまりなどは、「小説っぽく」するなら短く切るとなんとなくいい感じになります。
よって、「短文だとなんかキャッチーでいい感じ」というだけなので、「短文にしなければいけない」わけではなくってヨ!
名文と言われる文豪の小説も、スーパーベリーデラックスゴージャスソーロングだったりするので。。。気になるなら青空文庫へGO!
・主語と動詞の組を明白に
上記を踏まえたうえで、短文を作る練習をしていきましょう。
以下の文を、分かりやすい短文に分割してみてください。
視点や前後の内容などケースバイケースですが、スムーズに読める◎の書き方がオススメです。
特に三人称限定(一元)視点だと、カメラ位置は視点人物に寄せて書いていくのがやりやすい。最後の文の連体修飾「素早く受ける西峰」は、効果的な小技です。
視点人物以外の行動を連体修飾で表すことで、主語が変わらない
→カメラ位置がおのずと視点人物側で固定される
→そのままスムーズに心理描写もできる。
という嬉しい効果があるそうです。(byリリ先生)
連体修飾については、ぜひリリ先生の激熱コラムもご覧ください♡
※もちろん「主語を変えてはいけない」とは言っていません。
必要なだけ適切に変えていきましょう。
・「説明」は長い。「描写」は短い。
THE説明をすると、一文が長くなる印象があります。(自論)
……「説明」を「描写」にすると、短文になりましたネ!(自論)
さらりと流すシーンなら、案1くらいあっさりでもOKです。
映像化したとき数秒で終わらせるシーンなのか、それともズームインしてじっくり尺を使うのに値するシーンなのかで、心情の「あっさり」と「こってり」を使い分けましょう。
このシーンは、おそらく主人公の成長の要となる大事な場面なので、登場人物に共感させよう派のわたくしなら案2でいきます。
いろいろ小技はあるけれど、基本は「伝わればヨシ!」なので安心してくださいネ!
◎成長のタイミング問題(プロットへの質問)
質問募集でいただいたお便りです。
地の文ではなくプロットの質問ですが、一緒に回答しました。
一応プロット編ともいうべきエンタメ長編講座のお記事にも、同じ内容を追記します。
☆0131追記 追加質問への回答
◎言い回しのこだわり問題
◎文の繋がり問題
◎クール系人外一人描写問題
◎効果的な視点選択は
追加質問がなかったら語ろうかなと思っていた話題です。
■山内リリ先生にご協力いただきました
本記事執筆の際、日本語アドバイザーの山内リリ先生に、ハチャメチャにお世話になりました!
サンプルの中に出てきた「チキンタツタ変奏曲」は、短い小説を「ビギナーがやりがちな例」や「純文学風の例」などさまざまかたちに書き直してくださった試みで、ものすごく勉強になる「教材」です!
ぜひご覧ください♡
■ほかの目次
サンプルとして、目次も全部掲載しますネ!
本編はこちら
☆0131本編に追記しました
本編に「いただいた追加質問への回答(10000字)」「小説向けAI活用講座(5000字)」を追記しました!