椰子の実 / 完全なQ体

ピアノの肋骨をなぞる青白い指。透明な。
魚を分解して作った最新の音です。が星を暖め、それを遠くから見ていた。
ガラス越し。人工の星。
落ちていく夢を見た

またどこかで――




芽の吹かぬ椰子の実ひとつ北の海 旅路も里の浜も知られじ




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8月2日 母船からの通信なし
8月3日 母船からの通信なし
8月4日 母船からの通信なし
8月5日 母船からの通信なし

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眠って起きて眠って起きて眠って――起きた、繰り返した朝。
誰とも出会わず
誰も知らない浜辺に、幾度となく波は押し寄せ、
播種船は朽ちていく。

僕らの命は影だった。

熱のなくなった星で
砂は地を這い、水は海を泳ぎ
空気は空を飛んでいる。
自由を謳うように。


躍っt  躍 躍 躍


――――

8月6日 本船はこれより休眠状態に移行する

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こちらはもうずっと夜だ。不定形な、
少しずつ冷えていく指。が、触 れ 、 管を震わす、言葉。
倒れていく尖塔の先、深い深い宇宙の底へ。
たくさんの夢を見た。

それから――

加速していく身体。
星屑と摩擦して光る、10億年ぶりの朝。が船を暖め、
無垢な電気と熱に還り、輝いて、たくさんの新しい音が生まれる。
最後の歌を。

またどこかで  またどこかで――