それは永遠じゃないよ / 二枚貝

意味、という言葉を聞くと
すべてがまっしろになって
そのとき、胸の中から一匹の蝶が生まれる

「でも、その蝶は昔、芋虫だったことがあるんでしょ?」
ときみが言って、すべての瞬間は過去になっていく

だって、時間が流れているから
音楽が鳴りやむ時なんて、永遠に来ないから

えいえん、という言葉を口に出してみると
少し、こわくなる

頭の中にまばゆい光が一筋浮かんで
そのあとにどうしようもない真っ暗な空洞が見えてくる

ぼくは、これを知っている
これは、宇宙が終わってしまったあとの、なにもない空洞だ

やがて、何百年もの時間が流れて
海の向こうの遠い国に生まれた少年が

あの空洞に
「かみさま」という名前を付けた

ある少女は
猫のお腹を切り開いて
その中に「かみさま」を見つけたし

ある外科医は
末期がんの患者の身体を切り開いて
心臓の少し下のところに、小さな天使を発見した

それから、大きくなったきみは子どもを作って
きみの子孫は何万年にもわたって続いていった

だけど
数億年くらいが経った頃に
宇宙はシャボン玉みたいに弾けてしまって

きみの子孫たちも滅びてしまった

そして、また途方もない時間が過ぎ去っていって
再び宇宙は始まって
繰り返されていく

意味、という言葉が再び産み落とされて
きみの頭の中をジムノペディが通り過ぎていく

マリリン・モンローは
1962年に、急性バルビツール中毒で死んでしまったけれど

おとぎ話の中のお姫さまは
永遠に幸せなままだ

夜、眠ってしまう前に

「ぶらふまんって何?」と
きみが尋ねて

意味、という虚構の裂け目から生まれた蝶が
まんまるの子宮の中で眠り始める

もし次に
きみが再び目を覚ますことがあったのなら

そのとき、きみは
まっしろな空洞そのものだから

大丈夫だよ(あなたは何も思い出せない)
大丈夫だよ(あなたは何も思い出せない)