街 / 白神つや
猫といっしょに
それぞれのすてきな死を
待つ日々
人間にあたるところの
まつげに触るような街は
白内障だった
白い塔が
今朝も連なっているだろう
いくつもの予知は
皿に乗ることはなく
どれだけのことが
ぼくになるのかを知らない
いずれ燃やされる
日のことを期待して、
陽射しに期待されていて
トーストを食べ終わると
失透された遺体袋があって
ひきずっていって
ぼくらしさだけほうわする
ほうわする
言葉だけでは
死んでゆくことができないから、
しゃべりつづけている街。
の方角をふいに忘れる
押し並べて虚無であって
ここは上りの階段がない
踊り場
なにしているんだろうって
たまに呼ばれる
風船になりたかった少年の希望を
想い出している
(おもいだそうとした扉の
あいまいに塗れた
太陽を爪先まで反射する
砂糖の砂場)
どこまでぼくらは愚かになれるのだろう
なれたの、 だろう
日々が死んでゆく、
や季節が錆びついてゆくフィクションを
とても愛していた
骨の手に
やさしく破棄されて
ここは知っているけれど
知らない凍土
晴れ渡っていることの
晴れ渡る以外を知らない街の
無害を知った