鳥籠の鳥籠 / 早乙女まぶた

歯車の街は陽にさらされて
うさぎの着ぐるみを着たまま
手錠をかけられている
知らない罪に罰されて
大切なものをぜんぶ忘れてしまった
ぼくは眠らずに夢を見ていた

朱い硝子の姉妹は光を集めながら
お互いを自分自身だと思い込んで
それぞれの身体に傷をつけ
こぼれた血液を舐める
気持ちのいい絶滅に向かって
二人の静かな平和を味わっていた

死を交換しましょう、
それが最後の花言葉だった
そして二人は美しい柘榴の午後になった
逃げるためでなく、完成するために

その夜、
空に生まれた空白が
ひとつのありふれた星に見えた
そこからじわじわと外側にめくれていき
ぼくは知らない場所に放り出された

途方もない暗闇の中にぼくは座って
映像になった姉妹を見ていた
隣り合う二人にもう境界はなかった

夜は壊れてしまった
もはや空気さえも揮発して
どうしても音楽にはなり得ない音が
原初の言葉たちを遠ざけていく

輪郭はもう去った
安らかな陽射しも、
拘束する手錠も、
同じひとつの影、
一羽の空色の鳥だった

いつから目覚めていたというのだろう
触れようと手を伸ばしても
鳥は逃げていくばかりで、
これはだれの夢だった?
そこにはぼくだけがいなかったんだ

目を開けた
ぼくはまだ生きていた
鳥籠にはまた春が来ていた