水の中と水の外で / 牧山凱都

すくわれるときに感じるのだろうか金魚らは錯覚の自由を


幾千の目が目が目がこっちを見てるしらすのパックに許しを乞うた


マグカップにメダカを入れて上から見る ゆっくりホットコーヒーを注ぐ


どうしても水の外でしか生きられない、そう泣きじゃくる君を笑った


骨だけで泳ぐ魚の水槽にネオンテトラを入れる(やさしい)


讃美歌もたまに溺れる湖で朝のくらげもちょっと溺れる


手術痕を緋鯉のように泳がせて君は生きてる水を湛えて


湖の底で咲く花、それを食む冷たい魚、その光る鰓


水はただ開かれていく 水槽になんにもいないことが正しい


お前には読まずに捨てた小説の名前をやるよ おいで、白鯨