私の部屋 / だんご
今晩は画期的なアイデアを実行する
いつもと反対の方向に頭を向けて眠るのだ
ほらね
見慣れた部屋が知らない場所になる
普段一緒に寝るテディベアは足元にいる
「今日は君とは眠れないんだ」
私はテディベアのおしりを蹴った
私がいつもと違うことを家族は知らない
背徳感に頬がゆるむ
いつにもまして外が騒がしく
目を閉じてもなかなか眠れなかった
(知らない場所で眠るとき私は音に敏感になる)
道路を走る車の音
恋人同士の話し声
風が木を揺らす音
トイレに行く姉の足音
飼い猫の媚びた鳴き声
時計の針が動く音
自分の身体に血が巡る音
頭の中に響く友達の話し声
心の中で止まらない雑音
携帯電話の着信音
虫の羽音
知らない音楽
月が傾く音
人工衛星の歌声
ロケットが浮遊する音
闇夜を飛ぶ鳥の羽ばたき
誰かが星座を結んだ音
ガスが放出された音
天の川で水遊びをする音
宇宙にこだまする愛の言葉
星と星の衝突音
ピアノの鍵盤が動く音
雲が場所を変える音
転がり落ちる忘れ物の音
宇宙飛行士のくしゃみ
星が発する叫び声
地球の裏側でまばたきをした音
大河が流れ出した音
音が消える瞬間の騒音
音が消える瞬間の騒音
音が消える瞬間の騒音
気が付くとテディベアは私の腕の中にいた
「ごめんね 君はひとりぼっちじゃないよ」
音はもう聞こえない
私の部屋は私の部屋だった