詩を読む夜 / 岩倉文也

隣室のいびきを聞きながら
詩を読む夜がある

引っ越してきて一年経って
部屋はもう狭くなった

手垢のついた悩みや
白く新しいエアコンの風

たしかに詩は必要だった
でもぼくは 見境なしの浮気者

画面の中のヒロインに
雨や夢 ながれる時を恋い慕い

あたまはいつも空っぽ
埃っぽい足裏を床につけて

耐えがたい日々よいまは遠く
耐えがたい日々よいまは遠く

ぼくがぼくから離れるたびに
いびきが聞こえる

詩を読む夜の
隣室にやすらかな眠りを